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7:続く謎の夢と情交後の避妊行為と
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「急がないと?」
「アトラス・・・そうだ・・・急がないと・・・王妃が・・・」
こうしている間もスフィンクスの魔の手が近づいている。とするならば、説明する時間さえ惜しいような気がしてくる。すぐにでも出発した方がいいのではないかと視線を彷徨わせた。
「王妃がなんだ?」
「ん・・・けど・・・長くなるから・・・移動しながら、話した方がいいかなって」
「移動?」
「そうだ。まずは食事を荷物袋に詰めて、獣車に運んで・・・で、中で食べるか」
「テセウス」
「とにかく、オレの着替えはどこなんだ? 着替えないと」
長椅子に置いてあるのかと見に行く。が、見当たらない。
「テセウス、落ち着け」
「時間がないんだ、アトラス」
ここか、それともこっちかと。ウロウロと室内を探し回る。
「食事は移動しながらにしよう。着替えは一体どこにあるんだ?」
「テセウス」
「一刻の猶予も許されない事態なんだ」
「テセウス、お前が望むなら出発しよう。だが、移動とはどこにだ?」
尋ねられて、ハッとした。冷静沈着な声の主を振り返った。
「どこにだって・・・メデューサの岩窟だ」
「メデューサ? メデューサって、あのメデューサか?」
「ん、多分。で、そこに・・・王妃が棺に閉じこめられて・・・いる・・・らしい」
「・・・グライアイがそう言ったのか?」
「ん・・・確か、ヘパイストスの作った・・・パンドーラの棺の中にいて、それがそこにあると」
アトラスが首を傾げて「なぜ・・・メデューサの所なんかに・・・」と考えこむような気配を見せた。
「オレもそう思うんだけど・・・とにかく、メデューサの所で棺を取り戻さないとスフィンクスの手に渡って・・・」
と口にして、そこで黙った。その後のことが言いづらい。
「スフィンクス・・・の手に渡って?」
「いや・・・だから、その・・・」
アトラスとあんなことがあった後に、性的な話はしたくない。けれども、言わないと伝わらないだろう。じっと見つめてくる気配を感じながら、視線を床に下ろした。
「スフィンクスの手に渡るとどうなるんだ?」
促されて、しばらく躊躇った後に答えた。
「だから・・・それがその・・・王妃が・・・その・・・スフィンクスに・・・その・・・要するに・・・つまり・・・望まない妊娠を・・・してしまうことになる・・・らしい」
ハッと息をのむような気配とともに、室内が静まりかえった。
(つ、伝わったよな・・・)
ドクンドクンと鼓動が速まり、頬が熱くなる。自分たちの昨晩の時間を考えれば。言及したくない内容だったが、仕方ないのだ。自身の鼓動の音に気を取られながらも、相手の出方を待つ。
「望まない妊娠・・・と言ってたのか?」
思っていた以上に長かった沈黙を破って。尋ねてきた声はあまりにも低く、小さくて。
(アトラス?)
そのらしからぬ声音に。思わず、顔を上げて見つめた。
「アトラス・・・そうだ・・・急がないと・・・王妃が・・・」
こうしている間もスフィンクスの魔の手が近づいている。とするならば、説明する時間さえ惜しいような気がしてくる。すぐにでも出発した方がいいのではないかと視線を彷徨わせた。
「王妃がなんだ?」
「ん・・・けど・・・長くなるから・・・移動しながら、話した方がいいかなって」
「移動?」
「そうだ。まずは食事を荷物袋に詰めて、獣車に運んで・・・で、中で食べるか」
「テセウス」
「とにかく、オレの着替えはどこなんだ? 着替えないと」
長椅子に置いてあるのかと見に行く。が、見当たらない。
「テセウス、落ち着け」
「時間がないんだ、アトラス」
ここか、それともこっちかと。ウロウロと室内を探し回る。
「食事は移動しながらにしよう。着替えは一体どこにあるんだ?」
「テセウス」
「一刻の猶予も許されない事態なんだ」
「テセウス、お前が望むなら出発しよう。だが、移動とはどこにだ?」
尋ねられて、ハッとした。冷静沈着な声の主を振り返った。
「どこにだって・・・メデューサの岩窟だ」
「メデューサ? メデューサって、あのメデューサか?」
「ん、多分。で、そこに・・・王妃が棺に閉じこめられて・・・いる・・・らしい」
「・・・グライアイがそう言ったのか?」
「ん・・・確か、ヘパイストスの作った・・・パンドーラの棺の中にいて、それがそこにあると」
アトラスが首を傾げて「なぜ・・・メデューサの所なんかに・・・」と考えこむような気配を見せた。
「オレもそう思うんだけど・・・とにかく、メデューサの所で棺を取り戻さないとスフィンクスの手に渡って・・・」
と口にして、そこで黙った。その後のことが言いづらい。
「スフィンクス・・・の手に渡って?」
「いや・・・だから、その・・・」
アトラスとあんなことがあった後に、性的な話はしたくない。けれども、言わないと伝わらないだろう。じっと見つめてくる気配を感じながら、視線を床に下ろした。
「スフィンクスの手に渡るとどうなるんだ?」
促されて、しばらく躊躇った後に答えた。
「だから・・・それがその・・・王妃が・・・その・・・スフィンクスに・・・その・・・要するに・・・つまり・・・望まない妊娠を・・・してしまうことになる・・・らしい」
ハッと息をのむような気配とともに、室内が静まりかえった。
(つ、伝わったよな・・・)
ドクンドクンと鼓動が速まり、頬が熱くなる。自分たちの昨晩の時間を考えれば。言及したくない内容だったが、仕方ないのだ。自身の鼓動の音に気を取られながらも、相手の出方を待つ。
「望まない妊娠・・・と言ってたのか?」
思っていた以上に長かった沈黙を破って。尋ねてきた声はあまりにも低く、小さくて。
(アトラス?)
そのらしからぬ声音に。思わず、顔を上げて見つめた。
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