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8:牛頭ミノタウロスの迷宮と陵辱と※
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「ケール、様子を見てこい」
「ワフッ!!」
ふわふわと宙に浮かんで先導していたイーヌドーグが。スタンッと床に下りると、タッタ、タッタと軽快に駆けていく。
クレタ島の最北端。乗り越えることが不可能な高い壁の、複雑に入り組んだ迷路を終えて。二百段近い階段を上がった先に広がった空間、そこは――
ただの石壁に囲まれていた今までとは違って。一見、灯りの乏しい古い神殿にでも迷いこんだかのような印象を受ける。
左右に前後にと。無造作に立ち並ぶのは、子供の大きさから天井に付きそうなまでに大きい半人半獣の石像群だ。
一体、どれだけの数があるのか。だが、どれもが同じ、大きな牛の頭をした獣人の姿している。つまり、この迷宮に棲むミノタウロス自身の像なのだ。
様々な大きさでありながら。一様な彫像が並ぶ光景はどう見ても異様で、自画自賛の極みで。自身に酔いどれた悪趣味だとしか思えない。
ガッコンンッ!!
突如、ケールの走る床がそこだけ切り取ったかのように凹んだ。
途端に、まるでその一角をきっかけにしたかのように。床にシュパッ、シュパッ、シュパッと。無数の閃光が縦横に走り抜け、瞬時にして切り分けられる。
ゴゴゴゴゴゴォォォォーーッ・・・・・・
床全体が渦を巻いたように動き始めた。
ズドドドドドォォォォーーッ・・・・・・
その区分けされた床面が、各々が一つの太い石柱と化して。上下に激しく高さを変えては、前後左右、無秩序に入り乱れるようにして動き回る。
まるで柱自体が意思でも持っているかのように。行く手を阻み、見えない奈落の底へと振り落とそうとする、その様子に思わず息をのんだ。
「やはりな。ケール、戻ってこい」
「ワフッ!!」
ケールが再び浮かび上がると、宙を蹴って帰ってくる。すると、ピタッと全ての石柱が動きを止めて。スーーッと高さを合わせると、また一つの平面の床へと戻った。
「アトラス、今のは・・・」
「あぁ、そうだ」
繋いでいた手が放され、アトラスが返事をしながら身をかがめる。
「えっ・・・ちょっ・・・わ!!」
いきなり横向きに抱えられて。その腕の中で慌てふためいた。
「ちょっと・・・アトラス、な、なにを!!」
自らの唐突すぎる行動をつゆとも気にせずに、アトラスがスタスタと来た道を戻り始める。
「今までのは単なる子供だましの迷路だ。名工ダイダロスが手がけた迷宮とはここから始まる」
そのまま供物を捧げるための、祭壇のように高く大きな台の上へと静かにのせられた。
「だから、お前はここで待ってろ」
「えっ・・・」
「今、見た通り、ダイダロスの仕掛けは少し厄介だ。しかも、それだけじゃない。ミノタウロスの母親パシパエは力のある呪術師だが、息子への溺愛から何らかの呪法を仕こんであるに違いない。お前はここでケールと一緒にいろ」
「アトラス・・・だけど・・・」
「大丈夫だ。すぐに戻る」
自信に溢れた言葉と動じない表情と。だが、なぜ、そんなにも詳しいのか。その知識の量はただ者だとは到底、思えない。
現に、ここに来るまでの迷路だって。アリアドネーの糸玉という、光りながら自発的に出口へと転がっていく、不思議な呪術具を事前に手に入れていたのだ。
(アトラス、一体・・・何者なんだ・・・)
「ワフッ!!」
ふわふわと宙に浮かんで先導していたイーヌドーグが。スタンッと床に下りると、タッタ、タッタと軽快に駆けていく。
クレタ島の最北端。乗り越えることが不可能な高い壁の、複雑に入り組んだ迷路を終えて。二百段近い階段を上がった先に広がった空間、そこは――
ただの石壁に囲まれていた今までとは違って。一見、灯りの乏しい古い神殿にでも迷いこんだかのような印象を受ける。
左右に前後にと。無造作に立ち並ぶのは、子供の大きさから天井に付きそうなまでに大きい半人半獣の石像群だ。
一体、どれだけの数があるのか。だが、どれもが同じ、大きな牛の頭をした獣人の姿している。つまり、この迷宮に棲むミノタウロス自身の像なのだ。
様々な大きさでありながら。一様な彫像が並ぶ光景はどう見ても異様で、自画自賛の極みで。自身に酔いどれた悪趣味だとしか思えない。
ガッコンンッ!!
突如、ケールの走る床がそこだけ切り取ったかのように凹んだ。
途端に、まるでその一角をきっかけにしたかのように。床にシュパッ、シュパッ、シュパッと。無数の閃光が縦横に走り抜け、瞬時にして切り分けられる。
ゴゴゴゴゴゴォォォォーーッ・・・・・・
床全体が渦を巻いたように動き始めた。
ズドドドドドォォォォーーッ・・・・・・
その区分けされた床面が、各々が一つの太い石柱と化して。上下に激しく高さを変えては、前後左右、無秩序に入り乱れるようにして動き回る。
まるで柱自体が意思でも持っているかのように。行く手を阻み、見えない奈落の底へと振り落とそうとする、その様子に思わず息をのんだ。
「やはりな。ケール、戻ってこい」
「ワフッ!!」
ケールが再び浮かび上がると、宙を蹴って帰ってくる。すると、ピタッと全ての石柱が動きを止めて。スーーッと高さを合わせると、また一つの平面の床へと戻った。
「アトラス、今のは・・・」
「あぁ、そうだ」
繋いでいた手が放され、アトラスが返事をしながら身をかがめる。
「えっ・・・ちょっ・・・わ!!」
いきなり横向きに抱えられて。その腕の中で慌てふためいた。
「ちょっと・・・アトラス、な、なにを!!」
自らの唐突すぎる行動をつゆとも気にせずに、アトラスがスタスタと来た道を戻り始める。
「今までのは単なる子供だましの迷路だ。名工ダイダロスが手がけた迷宮とはここから始まる」
そのまま供物を捧げるための、祭壇のように高く大きな台の上へと静かにのせられた。
「だから、お前はここで待ってろ」
「えっ・・・」
「今、見た通り、ダイダロスの仕掛けは少し厄介だ。しかも、それだけじゃない。ミノタウロスの母親パシパエは力のある呪術師だが、息子への溺愛から何らかの呪法を仕こんであるに違いない。お前はここでケールと一緒にいろ」
「アトラス・・・だけど・・・」
「大丈夫だ。すぐに戻る」
自信に溢れた言葉と動じない表情と。だが、なぜ、そんなにも詳しいのか。その知識の量はただ者だとは到底、思えない。
現に、ここに来るまでの迷路だって。アリアドネーの糸玉という、光りながら自発的に出口へと転がっていく、不思議な呪術具を事前に手に入れていたのだ。
(アトラス、一体・・・何者なんだ・・・)
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