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12:ペガサスの懇願とツガイとしての求愛と※
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目で捉える限り、特に異常は感じられない。一体、何を感じ取ったというのか。だが、天馬がアトラスに応じた。
『クリュサオルですね。あの者は父親に仕えるべく、泳いで去って行ったようです』
「なにやら因縁めいたモノを感じる。いずれにせよ、毒の流れるこの場所もその不浄な身体も、このままにしてはおけない。よって、他の二体の死骸も含めて、この岩窟を全て聖火で焼き払う。今すぐ、行け」
『はい、かしこまりました。それから、パンドーラの棺のことですが・・・』
ペガサスが大きな白い翼を広げて、旅立つ体勢を取りながら告げた。
『どうやら、スフィンクスによって既に運ばれてしまったようです。この場所にはもう気配がありません』
「・・・・・・まぁ、それはいいだろう。それよりも上からやたらと働きかけを感じる・・・仕方ない。貸しにするか・・・特別に今、繋げてやろう。行け」
アトラスが、バチバチバチッと。その右手に、青紫色の稲妻を帯びた気をまとった。スゥーーッと地面に落ちていた聖槍を引き寄せると、グッと握りしめる。
「アテナの霊槍よ、主の元へと帰るがいい」
上空に向かって身構えるや否や、右手を勢いよく前へと繰り出して。
ブオォォンッ!!
放たれた槍が光る流星となって走り抜ける。その向かう先の天井が突如として、
スォンッ・・・・・・
と光の水紋へと変化した。待っていたとばかりに広がった、異質な次元の大きな輪の中へと槍が飲みこまれ、キラキラと白光を発する。
『なんと・・・過分なまでにご温情下さいまして、誠にありがとうございます』
口に包みを咥えた天馬が、バサッと勢いよく跳ね上がった。
『では、また、お目にかかる日まで・・・』
バサッ・・・バサッ・・・バサッ・・・・・・
と優雅な羽ばたきでもって、黄金の砕片を撒き散らしながら、光る波へと飛び立っていく。
スォンッ・・・・・・
光の渦が天馬を受け入れ、一切の現象が消えてなくなるまで。天界と下界を結びつけた者が顔を上げて見送る。空間が元の状態へと戻ると一度、視線を落とした。
(アトラス・・・)
その何かを思案しているかのような背中に我知らず、問いかける。一体、何者なのかと。そして、どうして、そんなにオリュンポスの事情に詳しいのかと。
(誰なんだろうか・・・)
ペガサスがあれほどまでに敬い、メデューサが恐れ、ポセイドンと同等のように立ち振る舞い、アテナの元へと次元を繋げ、ペガサスたちを送り届ける。
それほどまでの強大な力を持つ、それが意味することはつまり―――
(上位・・・それも最高位に近くないか・・・誰なんだ・・・)
顔を上げたアトラスが、腰にぶら下げていた革袋を手に取る。と、前方へと放り投げた。
ボワァァアァァーーッ
と突然、豪火が燃え上がった。
(あれは・・・)
「全てだ、全てを焼き払え。灰にしろ」
その命じる声にハッとする。グライアイの三姉妹の時と同じことが起きている。あの時の聖火だ。
ゴォォオォォーーッという轟音を立て、浄化を始めた猛火を背に。銀色の長い髪と甲冑に焔の輝きをまといながら。アトラスがゆったりと戻ってくる。その姿は神々しく、神威に満ちている。
(やはり、プロメテウス・・・なのか・・・)
先祖種であるのならば、その原初のティーターン十二神の血を引く者であるのならば。あの強さも、あの尊大さも全てが納得できる。
『クリュサオルですね。あの者は父親に仕えるべく、泳いで去って行ったようです』
「なにやら因縁めいたモノを感じる。いずれにせよ、毒の流れるこの場所もその不浄な身体も、このままにしてはおけない。よって、他の二体の死骸も含めて、この岩窟を全て聖火で焼き払う。今すぐ、行け」
『はい、かしこまりました。それから、パンドーラの棺のことですが・・・』
ペガサスが大きな白い翼を広げて、旅立つ体勢を取りながら告げた。
『どうやら、スフィンクスによって既に運ばれてしまったようです。この場所にはもう気配がありません』
「・・・・・・まぁ、それはいいだろう。それよりも上からやたらと働きかけを感じる・・・仕方ない。貸しにするか・・・特別に今、繋げてやろう。行け」
アトラスが、バチバチバチッと。その右手に、青紫色の稲妻を帯びた気をまとった。スゥーーッと地面に落ちていた聖槍を引き寄せると、グッと握りしめる。
「アテナの霊槍よ、主の元へと帰るがいい」
上空に向かって身構えるや否や、右手を勢いよく前へと繰り出して。
ブオォォンッ!!
放たれた槍が光る流星となって走り抜ける。その向かう先の天井が突如として、
スォンッ・・・・・・
と光の水紋へと変化した。待っていたとばかりに広がった、異質な次元の大きな輪の中へと槍が飲みこまれ、キラキラと白光を発する。
『なんと・・・過分なまでにご温情下さいまして、誠にありがとうございます』
口に包みを咥えた天馬が、バサッと勢いよく跳ね上がった。
『では、また、お目にかかる日まで・・・』
バサッ・・・バサッ・・・バサッ・・・・・・
と優雅な羽ばたきでもって、黄金の砕片を撒き散らしながら、光る波へと飛び立っていく。
スォンッ・・・・・・
光の渦が天馬を受け入れ、一切の現象が消えてなくなるまで。天界と下界を結びつけた者が顔を上げて見送る。空間が元の状態へと戻ると一度、視線を落とした。
(アトラス・・・)
その何かを思案しているかのような背中に我知らず、問いかける。一体、何者なのかと。そして、どうして、そんなにオリュンポスの事情に詳しいのかと。
(誰なんだろうか・・・)
ペガサスがあれほどまでに敬い、メデューサが恐れ、ポセイドンと同等のように立ち振る舞い、アテナの元へと次元を繋げ、ペガサスたちを送り届ける。
それほどまでの強大な力を持つ、それが意味することはつまり―――
(上位・・・それも最高位に近くないか・・・誰なんだ・・・)
顔を上げたアトラスが、腰にぶら下げていた革袋を手に取る。と、前方へと放り投げた。
ボワァァアァァーーッ
と突然、豪火が燃え上がった。
(あれは・・・)
「全てだ、全てを焼き払え。灰にしろ」
その命じる声にハッとする。グライアイの三姉妹の時と同じことが起きている。あの時の聖火だ。
ゴォォオォォーーッという轟音を立て、浄化を始めた猛火を背に。銀色の長い髪と甲冑に焔の輝きをまといながら。アトラスがゆったりと戻ってくる。その姿は神々しく、神威に満ちている。
(やはり、プロメテウス・・・なのか・・・)
先祖種であるのならば、その原初のティーターン十二神の血を引く者であるのならば。あの強さも、あの尊大さも全てが納得できる。
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