オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

文字の大きさ
133 / 169
12:ペガサスの懇願とツガイとしての求愛と※

7

しおりを挟む
 「ルーベ、テーバイの地はピキオン山、スフィンクスの館を目指せ」

 「ワフッ!!」

 アトラスが歩みを止めることなく、そして御者台から視線をそらすことなく、魔獣に命令を下した。

 (アトラス・・・)

 銀色の長い髪をなびかせて。視線を交わしながら荷台の横を通り過ぎた者が、幌を上げて、ギシッと膝をついて中に入ってくる。バサッと背後で分厚い布が落ちた。

 「テセウス、幕を下ろせ」

 密な空間にしろと命じられて。ゴクリと嚥下し、おずおずと御者台から身を戻す。震えの走る指先で、小窓を閉ざした。

 アトラスの全身から漂っている、そのむせ返るようなアルファのアルケーに、そのオスの求愛の熱情に。酩酊しそうになる。ハァ・・・と息を吐いた。

 ドックン、ドックンと。気が乱れ、呼吸が苦しい。触れられてもいないというのに、邪淫で燻っていた全身が。一気に発火したかのように熱を帯びて。

 (あぁ・・・)

 と視界が潤む。

 出入り口で動きを止めたアトラスが、カチャッ、カチャッ、カチャッと。

 両腕の、両肩の、胸の重厚な防具を見せつけるように外しては、ドサッ、ドサッ、ドサッと。段差が設けられた床下へと放り投げる――情欲に濡れた、その青紫色の瞳を向けたまま。

 (アトラス・・・)

 今までとは打って変わって、ゆっくりと。胴周りも脚も、下半身を護る全ての甲冑を、それこそサンダルすらも。目の前で丁寧に脱いで取り去った男が。傍らにある酒瓶に手を伸ばした。

 片膝を立てて、座した姿勢で。ポンッとフタを開けて、ゴクリと喉を動かして酒を飲む。滴で濡れた唇を舌で舐め取る、その間もずっと。獲物に狙いをつけたように片時も目を離さない。

 (なぜ・・・)

 今にも飛びかかってきそうな、飢えた肉食獣のように。ギラギラとどうしようもなく孕んでいるというのに。どうして、酒なんか飲んで見せるのか。

 そのまま酒瓶に口をつけながら見つめているだけで、一向に近づいて来ない相手の。その露骨で扇情的な態度と濃密な空気に耐えきれずに下を向いた。全身が勝手に震えて、止まらない。

 「テセウス、さっき、オレをツガイとして欲したな?」

 「!!」

 ようやく、口を開いたと思えば。困惑を覚えるような内容で。

 (そんな・・・)

 と視線を泳がさずにはいられない。あの口づけの最中に心の中で求めたことを察したというのか。だとしても、なぜ、そんな風にあえて聞いてくるのか。

 これまでのように荒々しく、抱きに来ればいいじゃないかと。そうは思っても、声に出せずに、小窓の前で動けなくなってしまう。知らず知らず、ギュッと衣服の裾を握ったその時――

 「テセウス、来い」

 と言いつけられて、思わず目を見開いた。

 その発言が意味することは、お前からオレを求めに来いと。薄着になった雄々しい体躯で、欲情に濡れた瞳で指図されて。

 「ア、アトラス・・・」

 「こっちに来い、テセウス」

 少し進めば、手が届く距離だというのに。動かずに呼びつける男の声に、身体がカァッと一層熱くなった。

 (な、なんで・・・)

 どうして、そちらからは動いてくれないのか。ハァハァと乱れる息の、つらい身体の状態は何も変わっていない。来て欲しい。早く触って、抱いて欲しい。

 「アトラス・・・た、頼むから・・・」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

流れる星は海に還る

藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。 組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。 <登場人物> 辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。 若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。 中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。 ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。 表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

処理中です...