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13:スフィンクスの館と再生の泉と
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「アトラスッ!!」
慌てふためいた裸体の。隅から隅まで、舐めるように見つめられて。すぐさま下腹部を胸を手で覆い隠す。
「テセウス・・・お前はなんて、きれいなんだ・・・」
自らが征服し尽くした、その淫らな痕跡を通して。激しかった性交の余韻にでも浸っているかのような視線に、
(あぁ・・・そんな・・・)
と恥ずかしさがこみ上げる。
けれども、予想に反して。羞恥に耐える身体に、バサリと。毛布がかけられ、両腕ごと拘束するように全身に巻き付けられた。
「アトラス、な、なにを・・・」
「本来ならば、お前のそのあまりにも美しい姿を誰にも見せたくはない。が、手順を踏む必要がある」
アトラスがバッと自らの気に満ちた外套を脱ぎ、上からさらに被せてくる。フードで頭がしっかりと覆われて、顔をより隠すように、前髪が長い指先で整えられた。
「お前は声を出す必要はない。顔も上げるな。全て、オレが対応する。いいな?」
「えっ・・・それは、どういう・・・意味だ?」
「オレに任せていればいい」
とそのまま膝裏に手を入れられて、軽々と抱え上げられた。
「ア、アトラス・・・」
「ケール、乗れ」
「ワフッ!!」
主人に命じられて、小型の魔獣がピョンと腹の上に飛び上がった。
「これから、館に入る」
立て膝の状態で進んだ相手が分厚い幌の間をくぐり抜けて、ギシッと踏み台の上に一歩を乗り出す。
パチパチと音を立てながら火が焼べられている、松明の灯りとともに目に入ってきたのは―――
(あっ・・・)
星々が煌びやかに輝く夜空の下、薄茶色の砂地と同じ色合いの荘厳で巨大な建物がそびえ立っている。
まっすぐに長く続く石畳の左右には。来訪者を迎えるようにして、いかめしいライオンの大きな石像がズラリと並び、その間を。一枚の大きさが、身長よりも長いヤシの葉が扇のように広がっている。
入り口の左右に高く立つ、串のように徐々に上が狭くなっていく、その角張った石柱といい、その四角錐の先端といい。
そして、水色、黄色、赤、青、桃色と、色彩豊かな絵具で花や葉の紋様が描かれた床や壁面といい。
この地が異なる文化との交易路であることを強く感じずにはいられない。
(テーバイか・・・)
まさか、スフィンクスの館に着いていたとは。だが、おそらくは敷地内に踏み入れただけなのだろう。そう感じた途端に、横から声がした。
「獣車はこちらでお預かりいたします。どうぞ、お入り下さい」
「ルーベ、来い」
アトラスが装着具の外れた魔獣を呼びつけ、桃色の美しい絨毯の上をゆったりと歩き始める。
その腕の中、極力、頭を上げないようにチラリと視線だけで、周囲の様子を伺えば。子供ほどの体格の、召使いと思しき存在が皆一様に跪いている。
その頭は色合いは様々でも全員が猫だ。左右にずらっと。小柄な獣人たちに傅かれる中を。
アトラスが王者の貫禄とともに平然と通り過ぎ、壮麗な石門の下の幅広い階段を上がって進む。
いくつかの広間を横切ると、ぼわんっと。金色に光る入り口が見えてきた。前に立つと、見上げるほど高い扉の上から声がした。
「私の館にようこそ、いらっしゃいました」
慌てふためいた裸体の。隅から隅まで、舐めるように見つめられて。すぐさま下腹部を胸を手で覆い隠す。
「テセウス・・・お前はなんて、きれいなんだ・・・」
自らが征服し尽くした、その淫らな痕跡を通して。激しかった性交の余韻にでも浸っているかのような視線に、
(あぁ・・・そんな・・・)
と恥ずかしさがこみ上げる。
けれども、予想に反して。羞恥に耐える身体に、バサリと。毛布がかけられ、両腕ごと拘束するように全身に巻き付けられた。
「アトラス、な、なにを・・・」
「本来ならば、お前のそのあまりにも美しい姿を誰にも見せたくはない。が、手順を踏む必要がある」
アトラスがバッと自らの気に満ちた外套を脱ぎ、上からさらに被せてくる。フードで頭がしっかりと覆われて、顔をより隠すように、前髪が長い指先で整えられた。
「お前は声を出す必要はない。顔も上げるな。全て、オレが対応する。いいな?」
「えっ・・・それは、どういう・・・意味だ?」
「オレに任せていればいい」
とそのまま膝裏に手を入れられて、軽々と抱え上げられた。
「ア、アトラス・・・」
「ケール、乗れ」
「ワフッ!!」
主人に命じられて、小型の魔獣がピョンと腹の上に飛び上がった。
「これから、館に入る」
立て膝の状態で進んだ相手が分厚い幌の間をくぐり抜けて、ギシッと踏み台の上に一歩を乗り出す。
パチパチと音を立てながら火が焼べられている、松明の灯りとともに目に入ってきたのは―――
(あっ・・・)
星々が煌びやかに輝く夜空の下、薄茶色の砂地と同じ色合いの荘厳で巨大な建物がそびえ立っている。
まっすぐに長く続く石畳の左右には。来訪者を迎えるようにして、いかめしいライオンの大きな石像がズラリと並び、その間を。一枚の大きさが、身長よりも長いヤシの葉が扇のように広がっている。
入り口の左右に高く立つ、串のように徐々に上が狭くなっていく、その角張った石柱といい、その四角錐の先端といい。
そして、水色、黄色、赤、青、桃色と、色彩豊かな絵具で花や葉の紋様が描かれた床や壁面といい。
この地が異なる文化との交易路であることを強く感じずにはいられない。
(テーバイか・・・)
まさか、スフィンクスの館に着いていたとは。だが、おそらくは敷地内に踏み入れただけなのだろう。そう感じた途端に、横から声がした。
「獣車はこちらでお預かりいたします。どうぞ、お入り下さい」
「ルーベ、来い」
アトラスが装着具の外れた魔獣を呼びつけ、桃色の美しい絨毯の上をゆったりと歩き始める。
その腕の中、極力、頭を上げないようにチラリと視線だけで、周囲の様子を伺えば。子供ほどの体格の、召使いと思しき存在が皆一様に跪いている。
その頭は色合いは様々でも全員が猫だ。左右にずらっと。小柄な獣人たちに傅かれる中を。
アトラスが王者の貫禄とともに平然と通り過ぎ、壮麗な石門の下の幅広い階段を上がって進む。
いくつかの広間を横切ると、ぼわんっと。金色に光る入り口が見えてきた。前に立つと、見上げるほど高い扉の上から声がした。
「私の館にようこそ、いらっしゃいました」
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