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14:囚われて※

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 一番近くにいる相手を、振り返って睨みつけた。

 「まずは、自分の魂魄こんぱくを取り戻せ・・・・・・ペルセフォネ」

 アトラスだった者がスッと。仮面に手をあてた。

 「ハデスの名において命ずる。オレの右目よ、戻ってこい!!」

 ガッと金属が顔から取り外されると同時に、カッと閃光が走り、

 ゴォォオォオォォーーーッ・・・・・・

 と凄まじいアルケーが竜巻のように巻き起こる。

 「ッ!!」

 仮面の下に隠されていた赤黒く渦巻く眼窩がんかの中に。役目を終えた赤紫色の炎が、びゅおんっと吸いこまれるや否や。

 今度は、棺の中で宙に浮かぶようにして封じられていた、黄金の髪に黄緑色の瞳をしたモノが。解放されて、カッと強い光を発した。

 「あぁああぁぁーーっ!!」

 跪いている肉体へと、本来あるべき場所へと。無理矢理に引き離されていた魂が重なって、結合する。

 その凄まじい衝突と融合の力に、ブォォンッと全身が跳ね上がった。

 「うあぁあぁーーっ・・・ハァハァ・・・ハァハァ・・・ううぅっ・・・ハァハァ・・・」

 床に両手両膝を突いて、必死に激痛に耐える。

 「くうぅっ・・・ハァハァ・・・つっ・・・ハァハァ・・・」

 二度目だろうと慣れるはずがない。グラグラと視界がブレて。今にも息が止まりそうなほど、苦しくてたまらない。

 「ぅあぁっ・・・ハァハァ・・・ふっ・・・ハァハァ・・・」

 軋んで、悲鳴を上げる身体が。階段を静かに上がってきた者によって、ひょいと抱えられた。

 「大丈夫か?」

 「ハデス・・・ハァハァ・・・」

 「元に戻ったな」

 冥府の王が、取り戻した王妃を台座の上へと優しく降ろして。長く揺れる金髪に愛おしげに口づけ、宝石のように美しい黄緑色の瞳に魅入る。

 (あぁ・・・)

 その狂おしげに見つめてくる存在の、異色の左右の瞳ヘテロクロミアが。赤紫色の右目と青紫色の左目が。そして、黒く変わった髪が。涙でぼやける。

 「なぜ・・・なぜ・・・こんなことを・・・ハァハァ・・・したんだ・・・」

 自分の右目まで、呪符に使って。自分の魂魄すら半分、封じて。

 「なぜだ、なぜなんだ、ハデス・・・ハァハァ・・・オレから・・・記憶を奪って・・・からかっていたのか」

 意識を奪われる直前の。冥府のザクロを口移しで飲まされた、あの最後の光景が脳裏によぎる。

 「・・・・・・オレがそんな男に見えるのか?」

 「だったら、なぜ!? なぜ、こんなことをした!?」

 「まだ、わからないのかっ!!」

 大声で問い詰めた途端に、叫び返された。

 「オレが一体、どんな気持ちで・・・これに賭けたと思っている!!」

 勢いよく立ち上がって離れた相手が、バリンッと。荒ぶる心のまま、近くの鏡の柱を叩き割った。

 そのまま、ビシッ・・・と。大気が裂かれると同時に、辺り一面の鏡に。ヒビが縦横無尽に走って広がる。

 「オレの気持ちが・・・まだ・・・わからないのか・・・」

 叩きつけた拳から、割られた複数の鏡から。カシャン、カシャン、カシャン・・・と。幾重となって砕片が床に落ち、それらの音に、低い声が被った。

 (ハデス・・・)

 いまだかつて見たことのない相手の、その苦悩する姿に息をのんだ。

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