167 / 169
15:エピローグ
3
しおりを挟む
「やはり、ハデスの子・・・あぁ、嬉しい。それなのに、私のせいで・・・」
「ちがっ・・・それは・・・ちがう・・・」
母は何も悪くないのだ。悪いのは、クロノスだ。親でありながら子を性具にしようとした、あの外道のせいなのだ。
『ゼウスとポセイドンには好きにさせておいて、なんだ、その態度は。たかだが、オメガの分際で。身の程知らずのお前に、呪いをかけてやる』
原初の神、天空神ウラノスの子でありながら。オリュンポスの神々の父でありながら。先祖種の長である父親を罠にはめ、その座を奪い、邪気を好んで取り込み、邪神とかした時の王。
魔族を生み出し、交配を続け、淫欲に耽ることで自らの身体を、他のティターン神たちをも。醜悪な容貌へと変えていった災いの元凶だ。
だから、オリュンポスは決別したのだ。それなのにあの日、突然現れて―――
「私がクロノスを拒まなければ・・・今からでも、呪いを解いてもらいに行きます」
「ダメだ!! 母さん、そんなことしたら、ダメだ!!」
「けれど、クロノスは言ってたでしょ? 私に謝罪の機会を与えると・・・」
そうだ。不浄の邪神などに、誰がと。全身全霊で拒んだ母親を閉じ込めて。異変を感じて、駆けつけた自分の前で。せせら笑うように言ったのだ。
『抱かれなければ、生きていけない淫乱の身で。お前なんか、緩やかに流れる無限の時の監獄の中で、誰にも相手にされず、男が欲しいと飢え続ければいい・・・あぁ、でも、オレは優しいからな。
お前に特別に謝罪の機会を与えてやろう。そうだ・・・そこにいる、ゼウスの血を引き、ハデスに噛まれた・・・お前の子。その子が孕んだ時、この時の監獄のお前の身代わりになる。
お前は子供の犠牲で自由になれるんだ。そして、お前の子が解放されるのは、その子が孕んだ時だ。フフ・・・どうだ、楽しいだろう?』
その時に謝れば、許してやってもいいと。告げていた卑劣な邪神なんかに屈したくない。力をつけて、隙を突いてでも。倒したかった。
「謝罪する必要なんて、どこにもない!!」
「いいえ。クロノスに・・・時の監獄の呪いを解いてもらいます」
「ダメだ!! そんなことはダメだ!! 母さん、あいつが約束を守ると思う? あいつは母さんを噛んで、隷属化したら、それこそ好き勝手して・・・約束なんて、もともと守るような奴じゃないんだ!! 絶対に、そんなことをしてはダメだ!! そんなこと、しないで!!」
狡智に長けた相手なのだ。
宮殿全体にも強力な結界を張り、呪いを口にする者にも、聞いて解こうとする者にも。必ずや神の鋼でできた死の鎌を振り落とすとまで、宣告したのだ。
「でも・・・お前をこのままにはしておけない・・・あぁ、こんなことに巻きこんでしまって・・・ごめんなさい」
「母さん・・・」
「どうしたらいい・・・どうしたら・・・」
泣き崩れそうになる小柄の身体を、両腕で支える。その誰もが守りたくなるような、か細くて花のように美しい存在に。
「ね、母さん・・・母さんの好きな相手って、誰?」
と静かに尋ねる。
「えっ・・・どうして、そんなことを突然、聞くの?」
「教えて・・・母さん・・・」
黄緑色のきれいな瞳が怪訝そうに見つめ、そして、フッと笑みを浮かべた。
「この子は全く・・・もしかして、ハデスだと思ってる? フフ・・・」
心の底をあっさりと読まれて。ドギマギとしてしまう。
「ちがっ・・・それは・・・ちがう・・・」
母は何も悪くないのだ。悪いのは、クロノスだ。親でありながら子を性具にしようとした、あの外道のせいなのだ。
『ゼウスとポセイドンには好きにさせておいて、なんだ、その態度は。たかだが、オメガの分際で。身の程知らずのお前に、呪いをかけてやる』
原初の神、天空神ウラノスの子でありながら。オリュンポスの神々の父でありながら。先祖種の長である父親を罠にはめ、その座を奪い、邪気を好んで取り込み、邪神とかした時の王。
魔族を生み出し、交配を続け、淫欲に耽ることで自らの身体を、他のティターン神たちをも。醜悪な容貌へと変えていった災いの元凶だ。
だから、オリュンポスは決別したのだ。それなのにあの日、突然現れて―――
「私がクロノスを拒まなければ・・・今からでも、呪いを解いてもらいに行きます」
「ダメだ!! 母さん、そんなことしたら、ダメだ!!」
「けれど、クロノスは言ってたでしょ? 私に謝罪の機会を与えると・・・」
そうだ。不浄の邪神などに、誰がと。全身全霊で拒んだ母親を閉じ込めて。異変を感じて、駆けつけた自分の前で。せせら笑うように言ったのだ。
『抱かれなければ、生きていけない淫乱の身で。お前なんか、緩やかに流れる無限の時の監獄の中で、誰にも相手にされず、男が欲しいと飢え続ければいい・・・あぁ、でも、オレは優しいからな。
お前に特別に謝罪の機会を与えてやろう。そうだ・・・そこにいる、ゼウスの血を引き、ハデスに噛まれた・・・お前の子。その子が孕んだ時、この時の監獄のお前の身代わりになる。
お前は子供の犠牲で自由になれるんだ。そして、お前の子が解放されるのは、その子が孕んだ時だ。フフ・・・どうだ、楽しいだろう?』
その時に謝れば、許してやってもいいと。告げていた卑劣な邪神なんかに屈したくない。力をつけて、隙を突いてでも。倒したかった。
「謝罪する必要なんて、どこにもない!!」
「いいえ。クロノスに・・・時の監獄の呪いを解いてもらいます」
「ダメだ!! そんなことはダメだ!! 母さん、あいつが約束を守ると思う? あいつは母さんを噛んで、隷属化したら、それこそ好き勝手して・・・約束なんて、もともと守るような奴じゃないんだ!! 絶対に、そんなことをしてはダメだ!! そんなこと、しないで!!」
狡智に長けた相手なのだ。
宮殿全体にも強力な結界を張り、呪いを口にする者にも、聞いて解こうとする者にも。必ずや神の鋼でできた死の鎌を振り落とすとまで、宣告したのだ。
「でも・・・お前をこのままにはしておけない・・・あぁ、こんなことに巻きこんでしまって・・・ごめんなさい」
「母さん・・・」
「どうしたらいい・・・どうしたら・・・」
泣き崩れそうになる小柄の身体を、両腕で支える。その誰もが守りたくなるような、か細くて花のように美しい存在に。
「ね、母さん・・・母さんの好きな相手って、誰?」
と静かに尋ねる。
「えっ・・・どうして、そんなことを突然、聞くの?」
「教えて・・・母さん・・・」
黄緑色のきれいな瞳が怪訝そうに見つめ、そして、フッと笑みを浮かべた。
「この子は全く・・・もしかして、ハデスだと思ってる? フフ・・・」
心の底をあっさりと読まれて。ドギマギとしてしまう。
1
あなたにおすすめの小説
流れる星は海に還る
藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。
組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。
<登場人物>
辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。
若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。
中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。
ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。
表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる