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1章:恋に落ちちゃいました~呪われたオメガの王カール・オージー・サンデス・メイ・ジセイカ~

キグリーコ王国パピコ王女に始まり…

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 すかさず立とうとした動きも垂れ布を上げさせようとした動きも阻止した。
 強力な呪符を身に着けて毎週参加しているようだが、こちらは今までとは強さの訳が違う。
 初っ端から客を雪崩のように倒して記録を樹立し、救急でざわめく中、本命とのご対面を決めるつもりも一切ない。
 穏便にいきたいのだ。

「そんな…わたくしが座ったままでなんて。
 でも、カールさま、お身体は大丈夫ですの?」

「ありがとう、ご心配には及びません。
 少し用心をしているだけですから」

 これまた嘘も嘘、大嘘だ。
 風邪なんか引くわけがない。
 一体いくつの魅了チャームがかけられていると思っているんだ。

 108の精鋭呪術師にありとあらゆる祝いの魔法を注がれた身だ。
 いや厳密に言うと108どころではない。

 その後『オレもオレも、実はオレも遠隔でお祝いを送りました』と名乗り出る自称呪術師こと、つまりどこまで本当かわからないさんたちによって膨らむこと801人。
 そこまで行くと祝いでもなんでもない、もはや真の呪いだ。

「お父さまはお元気ですか?」

「はい、父は陛下にぜひ遊びにいらして欲しいと…ジセイカ王国と我がキグリーコ王国に良い話を持ってきてくれる日が待ち遠しいといつも言っております」

 父とはカプリコ・エザー・キグリーコ77世、したたかな国王だ。
 良い話とは言うまでもなく娘パピコとの婚姻を示している。
 互いに長い歴史の深い付き合いゆえ、毎度毎度懲りずに出される園遊会参加 希望を無下にもできずに受け入れてきたが、それも今日までだ。

「そうですね、カプリコ殿には両国の発展のために一度じっくりと膝を突き合わせて頂きたいとかねがね思っております」

 聞き慣れた言葉に言い慣れた台詞で笑みを浮かべながら応じる。
 一晩限りの情事アバンチュールにも誘われない時点で察して欲しいところだが、年上なのに嫁にも行かず、健気だったなと。
 感じ入りながら「本日の記念にこちらを」とトレーから薔薇を取り上げ、中にいる王女の召使いへと差し入れた。

「まぁ、きれい…ありがとうございます」
「では、どうぞ、ごゆっくり」

「あ、陛下…今日はこの後は…」
「申し訳ない。風邪を引いているのです」

「そ、そうでした。ご、ごめんなさい」
「いえ。私は参加できませんが、この後はどうぞ自由に移動され、他国の方々との交流を楽しまれて下さい」

 波風立てずに王族スマイルで会釈し、名残惜しむ気配をヒシヒシと背中に感じつつ歩き始める。
 時間などかけていられない。
 さっさと済ませたいのだ。

(次はモリーナ・ガ王国か…)

 女性のアルファであるパピコをたててキグリーコ王国を一番最初にもってきたが、交易規模は小さくても地上最長の伝統ある王朝だ。
 こちらも律儀に毎回誰かしら使節を送ってくる。

 その次はサーク・マセイカ王国ハッカド・ロップス王子に。
 さらにその先はマエカブロッテ王国と。
 長い長い、とにかく先が長い。

(あと軽く30はあるか…)

 当たり障りのない会話を交わしながらも心の中は愛くるしいカエル姿で一色だ。
 だいたい、この国は少しおかしいのだ。
 人のためのルールかルールのための人かと聞かれたら、当然人のためのルールであるべきだろう。
 我が国でもその概念が幼少教育から徹底されて浸透している。
 そう、たった一人を抜かして。
 それが王だ。

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