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2章:逃げちゃいました~呪われたカエルの王さまヘーゼル・ナッツイリアル・フォート・ブルルボン~
カエルの悲しい過去
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(あれはあれでよかったんだよなぁ…)
と戻らぬ過去をそんな風に前向きに思えるのも、カエルのぬいぐるみにされた後に知った真実があるからだ。
まず自分の身に起きた悲劇を信用していた宰相に告げると手のひらを返したように態度が豹変し、いきなり襲われたのだ。
あれほどまでに平身低頭でかしづいていたというのに、実のところはグツグツとした傀儡政権への野心が渦巻いていたのかと。
心の底から驚き、命からがら逃げ出して妹を頼れば、妹は妹で。
これで私が王になれると王位を奪い取られて『カエルのぬいぐるみがお兄様だなんて誰もわかりっこないわ』と城から追い出された。
こうなったら友人であった貴族の元へと行くしかないと。
なんとかして身を寄せれば、あろうことか『ヘーゼル、お前をこうやっていたぶれるとはな』と仲間を呼ばれて面白半分に慰み者にされそうになって。
王という地位も権力も剣豪で知られた武術の腕もアルファとしての魅力的な外見も何もかもがなくなった時に見えた、人間の裏の本当の姿。
自分は一体何を見ていたのかと。
自身のあまりの人の見る目のなさに、はたまた自分の人望がそれほどまでになかったのかと打ちのめされた。
まさか、まさかの連続で。
非力な醜いカエルもどきになって初めて世の中を知ったのだ。
(本当にあの時は危なかったんだよなぁ)
一番つらかったのは友と思っていた仲間に揶揄され、カエルのぬいぐるみもどきには性器は付いているのか、孔はあるのかひっくり返されたり、弄られたりと。
あわや掘られるとなった時に救ったのは――それは己の知恵だったのだ。
『これ以上したら同じように呪われてカエルになるぞ…ケロ』
と発した途端にピタリと連中の動きが止まった。
『ふん、嘘つけ』
『嘘じゃないからこうなった…ケロ』
そのはったりは予想以上に相手を動揺させた。
『ケッ、なんだよ、それ、使えねぇ奴だな』
『面白くねぇ』
『このままサーカスにでも売っちまうか』
そう言ってひるんだ隙にピョーンと跳んで逃げたのだ。
必死になって逃げた、それこそ泣きながら。
悲しかったのだ、とても。
非力になって心もひ弱になったのか。
いや、それ以上に身内の裏切りがひどかった。
信頼していたというのに。
確かに傲慢だったところはある。
何もかも満たされていたがために顧みなかった点も多々あった。
だが、それでもあんまりじゃないかと思い出した途端に目頭が熱くなった。
自分が未熟だったのだ。
そっと目を開ける。
朝焼けの空は言い様もなく美しくてカエルの瞳にはとても眩しい。
そう、空はどんな時もいつだって変わらずにきれいだった。
橋の下をそのまま流されて行けば、ドボドボと水門が近づいている気配がする。
(このまま…帰りたいなぁ)
思い起こすのは第二の故郷どころか、自分にとってはもはやなくてはらならない場所オラーガ村だ。
あてもない放浪が始まった身は気味悪がられたり、それこそ見世物にしようとされたりと散々だったけれども。
それでも畑を耕しますと手伝っては身銭を稼ぎ、移動していく内に国境を越え、たまたま出会ったのが巡礼帰りのマブール村長だ。
『これもなんかの縁だっぺぇ。
うちに来るっぺぇ、住民届けも出してやるっぺ。
うちの村民になるっぺぇ』
とカエルもどきになってから初めて触れたその温かさにどれほど救われたか。
だから役に立ちたかったのだ、少しでも。
(みんなに会いたいなぁ…)
と戻らぬ過去をそんな風に前向きに思えるのも、カエルのぬいぐるみにされた後に知った真実があるからだ。
まず自分の身に起きた悲劇を信用していた宰相に告げると手のひらを返したように態度が豹変し、いきなり襲われたのだ。
あれほどまでに平身低頭でかしづいていたというのに、実のところはグツグツとした傀儡政権への野心が渦巻いていたのかと。
心の底から驚き、命からがら逃げ出して妹を頼れば、妹は妹で。
これで私が王になれると王位を奪い取られて『カエルのぬいぐるみがお兄様だなんて誰もわかりっこないわ』と城から追い出された。
こうなったら友人であった貴族の元へと行くしかないと。
なんとかして身を寄せれば、あろうことか『ヘーゼル、お前をこうやっていたぶれるとはな』と仲間を呼ばれて面白半分に慰み者にされそうになって。
王という地位も権力も剣豪で知られた武術の腕もアルファとしての魅力的な外見も何もかもがなくなった時に見えた、人間の裏の本当の姿。
自分は一体何を見ていたのかと。
自身のあまりの人の見る目のなさに、はたまた自分の人望がそれほどまでになかったのかと打ちのめされた。
まさか、まさかの連続で。
非力な醜いカエルもどきになって初めて世の中を知ったのだ。
(本当にあの時は危なかったんだよなぁ)
一番つらかったのは友と思っていた仲間に揶揄され、カエルのぬいぐるみもどきには性器は付いているのか、孔はあるのかひっくり返されたり、弄られたりと。
あわや掘られるとなった時に救ったのは――それは己の知恵だったのだ。
『これ以上したら同じように呪われてカエルになるぞ…ケロ』
と発した途端にピタリと連中の動きが止まった。
『ふん、嘘つけ』
『嘘じゃないからこうなった…ケロ』
そのはったりは予想以上に相手を動揺させた。
『ケッ、なんだよ、それ、使えねぇ奴だな』
『面白くねぇ』
『このままサーカスにでも売っちまうか』
そう言ってひるんだ隙にピョーンと跳んで逃げたのだ。
必死になって逃げた、それこそ泣きながら。
悲しかったのだ、とても。
非力になって心もひ弱になったのか。
いや、それ以上に身内の裏切りがひどかった。
信頼していたというのに。
確かに傲慢だったところはある。
何もかも満たされていたがために顧みなかった点も多々あった。
だが、それでもあんまりじゃないかと思い出した途端に目頭が熱くなった。
自分が未熟だったのだ。
そっと目を開ける。
朝焼けの空は言い様もなく美しくてカエルの瞳にはとても眩しい。
そう、空はどんな時もいつだって変わらずにきれいだった。
橋の下をそのまま流されて行けば、ドボドボと水門が近づいている気配がする。
(このまま…帰りたいなぁ)
思い起こすのは第二の故郷どころか、自分にとってはもはやなくてはらならない場所オラーガ村だ。
あてもない放浪が始まった身は気味悪がられたり、それこそ見世物にしようとされたりと散々だったけれども。
それでも畑を耕しますと手伝っては身銭を稼ぎ、移動していく内に国境を越え、たまたま出会ったのが巡礼帰りのマブール村長だ。
『これもなんかの縁だっぺぇ。
うちに来るっぺぇ、住民届けも出してやるっぺ。
うちの村民になるっぺぇ』
とカエルもどきになってから初めて触れたその温かさにどれほど救われたか。
だから役に立ちたかったのだ、少しでも。
(みんなに会いたいなぁ…)
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