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3章:捕まっちゃいました~呪われたオメガの王さまmeetsカエルの王さま~
同棲生活が始まっちゃいました
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「とても美味しかった。
ヘケロの野菜スープは天下一品だな」
そう満足げに言葉にするとにっこりと目の前の美貌が微笑んだ。
けれども高貴な光を四方に放っていて直視なんてできやしない。
「あ、ありがとうございます…ケロ」
と下を向いたまま返事をした。
もちろん食事をしているのだから、あの物々しい口輪は着けていない。
その代わりに、こちらのお腹の小袋の中には手渡された銀色の懐中時計が入っている。
なにやら強力な呪術がこめられているらしい。
だから二度と倒れることはないとのことだが本当だろうか。
ドックン、ドックンと荒ぶる胸の鼓動はいつまでたっても収まる気配はない。
「食後に例の北限の茶を頂きたいのだが、いれてもいいだろうか?」
「あ、おいれします…ケロ」
「待って、ヘケロ。
我に…いや、オレにやらせて」
食卓と化した長い収納棚に手を付いて立とうとすると、いまだに我と口に出してしまいがちな相手に制された。
「で、でも、あの、あの……ケロ」
「大丈夫。
頼む、やらせてくれ。
やってみたいんだ」
今度は迂闊にもその満面の笑顔を真っ正面から見てしまった。
ボッと頬が熱くなって慌てて視線と腰を下げる。
腰は砕けているといった方が正しいかもしれない。
(た、大変なことになってる…)
土間へと降り立ち、樽の栓を捻って鍋に水を入れている、その黄金の長髪も美しい背中をそっと盗み見する。
(ほんとにうちに王さまがいる…)
とつい呆けてしまう。
それに加えて、いつの間に樽や足が付いた鉄製のつるし鍋なんて高級な物が置かれたのか。
いや、そもそもが本来は土間などなかったのだ。
ただの土をならしただけの居間は台所でもあり寝室でもあったというのに。
気が付けば、段差ができている。
チラチラと周りを見渡せば、誠にここは我が家なのだろうかと。
何度も確かめては目をシパシパさせてしまう。
朝までは確かに古びた漆喰の壁と藁ぶき屋根でしかなかった小さな家だったというのに。
けれども今は床には木の板が張り巡らされ、もともと部屋の中央にあった石を積み上げただけの簡易な炉は土間で大々的に再構築がなされた後に煙を逃すための誘導用の筒と穴までもが天井に設けられた。
食卓替わりにしていた木の箱も然りだ。
取り払われて装飾も鮮やかな収納棚に取って代わっている。
おまけに見事な刺繍がなされた上質な布までかけられていて。
『時期を見て部屋を広げてもいいが…我、いやオレとしてはしばらくはこの広さでもいいかなと思う』
そう謎のこだわりを見せた相手によって椅子とテーブルは置かれずに家の大きさそのものは維持されている。
だが隣接する納屋にはちゃんと用意はされている。
それだけではない。
ジセイカ王国最西端のブルガリリア州から運ばれた食料や資材、衣服などがビッシリと収められている。
けれどもそれこそ、本当に朝までは。
ほんのわずかな農具とカビの生えた収穫物だけが入っていただけの小屋だったというのに。
裕福な領主館のように納屋が頑丈に新調され、畜舎も兼ねるほどの大きさにまで拡張された。
だが、おそろしいのはこれらをわずか半日たらずで一人で作りあげたという異能ぶりだ。
その身一つで十人分の、いやそれ以上の処理能力を持っている。
(あぁ…信じられない…)
一体我が身に何が起き続けているのか。
あの後、そうしっかりと気を失ったあの衝撃の後に何があったのか――
「とても美味しかった。
ヘケロの野菜スープは天下一品だな」
そう満足げに言葉にするとにっこりと目の前の美貌が微笑んだ。
けれども高貴な光を四方に放っていて直視なんてできやしない。
「あ、ありがとうございます…ケロ」
と下を向いたまま返事をした。
もちろん食事をしているのだから、あの物々しい口輪は着けていない。
その代わりに、こちらのお腹の小袋の中には手渡された銀色の懐中時計が入っている。
なにやら強力な呪術がこめられているらしい。
だから二度と倒れることはないとのことだが本当だろうか。
ドックン、ドックンと荒ぶる胸の鼓動はいつまでたっても収まる気配はない。
「食後に例の北限の茶を頂きたいのだが、いれてもいいだろうか?」
「あ、おいれします…ケロ」
「待って、ヘケロ。
我に…いや、オレにやらせて」
食卓と化した長い収納棚に手を付いて立とうとすると、いまだに我と口に出してしまいがちな相手に制された。
「で、でも、あの、あの……ケロ」
「大丈夫。
頼む、やらせてくれ。
やってみたいんだ」
今度は迂闊にもその満面の笑顔を真っ正面から見てしまった。
ボッと頬が熱くなって慌てて視線と腰を下げる。
腰は砕けているといった方が正しいかもしれない。
(た、大変なことになってる…)
土間へと降り立ち、樽の栓を捻って鍋に水を入れている、その黄金の長髪も美しい背中をそっと盗み見する。
(ほんとにうちに王さまがいる…)
とつい呆けてしまう。
それに加えて、いつの間に樽や足が付いた鉄製のつるし鍋なんて高級な物が置かれたのか。
いや、そもそもが本来は土間などなかったのだ。
ただの土をならしただけの居間は台所でもあり寝室でもあったというのに。
気が付けば、段差ができている。
チラチラと周りを見渡せば、誠にここは我が家なのだろうかと。
何度も確かめては目をシパシパさせてしまう。
朝までは確かに古びた漆喰の壁と藁ぶき屋根でしかなかった小さな家だったというのに。
けれども今は床には木の板が張り巡らされ、もともと部屋の中央にあった石を積み上げただけの簡易な炉は土間で大々的に再構築がなされた後に煙を逃すための誘導用の筒と穴までもが天井に設けられた。
食卓替わりにしていた木の箱も然りだ。
取り払われて装飾も鮮やかな収納棚に取って代わっている。
おまけに見事な刺繍がなされた上質な布までかけられていて。
『時期を見て部屋を広げてもいいが…我、いやオレとしてはしばらくはこの広さでもいいかなと思う』
そう謎のこだわりを見せた相手によって椅子とテーブルは置かれずに家の大きさそのものは維持されている。
だが隣接する納屋にはちゃんと用意はされている。
それだけではない。
ジセイカ王国最西端のブルガリリア州から運ばれた食料や資材、衣服などがビッシリと収められている。
けれどもそれこそ、本当に朝までは。
ほんのわずかな農具とカビの生えた収穫物だけが入っていただけの小屋だったというのに。
裕福な領主館のように納屋が頑丈に新調され、畜舎も兼ねるほどの大きさにまで拡張された。
だが、おそろしいのはこれらをわずか半日たらずで一人で作りあげたという異能ぶりだ。
その身一つで十人分の、いやそれ以上の処理能力を持っている。
(あぁ…信じられない…)
一体我が身に何が起き続けているのか。
あの後、そうしっかりと気を失ったあの衝撃の後に何があったのか――
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