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行くセッ○ス、来るセッ○ス

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 毎度毎度のことですからと。
 心の中でおばあさんが告げました。
 一度たりとも買ってきたことはありません。
 いや買えないのです。
 生まれてからおじいさんの年齢になるまで自分で買い物をした回数が両手の指に収まるというのですから、究極の美とはおそろしいものです。
 そういう宿命に生まれている人もいるんだなぁと出会った当初からわかっています。
 おばあさんがふふっと笑うとおじいさんはホッとしたような顔を見せました。

「あ、おじいさん…マフラーはどうされたんですか?」

 出かける前に巻いていたダンディこの上ない紺の襟巻きがないことに気がついて、おばあさんが尋ねました。

「あぁ…実はね…」

 おじいさんは雪を頭に被っていたお地蔵さまの話をおばあさんにして聞かせました。

「そう、それはいいことをしましたね」

 おばあさんは心から安堵しました。
 加減を知らない、理屈が分からない、常識が振り切れちゃった熱狂者にまた奪い取られたかと思ったからです。
 今回は変質者ストーカー絡みでなくて本当によかったです。

「寒かったでしょう、お風呂を入れてあります。先に温まって下さい」

 おじいさんの冷えきった身体に手を置くとおばあさんが入浴を勧めました。
 その手をおじいさんがギュッと握りしめて耳元で甘く囁きます。

「一緒に入りたい」
「えっ…」
「一緒に入ろう」
「だ、だめですよ…」

 頬を赤く染めておばあさんが拒みました。

「どうして?」
「どうしてって…」

 そんなことは言うまでもありません。
 いまだ天井知らずな絶倫のおじいさんと一緒にお風呂に入ったらどうなることでしょう。
 一年の最後はまったりと行く年来る年で楽しみたいというのに、もれなく行くセックス来るセックスで年を越えることになってしまいます。

「もしかして…嫌われちゃった?」

 天性の人たらしの、その悩ましげな視線にズクンッとおばあさんの前も後ろも疼きます。
 ですが、今すぐに欲しいと思った気持ちをグッと堪えて上目遣いで見つめ返しました。

「だって…せっかく…年越しイノシシ鍋を作って待っていたのに…」

 浴室エッチに一度でも突入してしまったら風呂場だけでなく場所を変えての一晩中オールナイトになることは間違いないのです。
 ご飯を食べる時間など到底与えてもらえません。

「おばあさん、かわいい」

 少し尖らせた唇にチュッと自分のそれを重ねて、おじいさんが受け入れました。

「そうだね、せっかく作ってくれたのだから、ちゃんと食べないとね。じゃ今日は別々にお風呂に入って…ご飯を食べたら…その後に…ね?」
「ん…」

 劣情を孕んだ誘いにおばあさんが恥じらいながら応じました。
 結局今年もまた懲りずにエッチ納めからのまんま新春初エッチですが、食事ができるのならいいでしょう。

(もう、おじいさんったら…)

 浴室へと向かう逞しい背中を熱視線で見送り、そしてその後におばあさんもまた入浴を済ませました。
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