18 / 40

さぁ鬼の登場です

しおりを挟む
 いひひひと下卑た笑いを室内で浮かべる輩の影には頭に角が生えていました。
 そう、オニーズ整形外科は実は人に化けた鬼が営む病院だったのです。

「入ってきたらよぉ、馬は先に食っちまおうぜ」
「あぁ、で、男はみんなでヤっちまおう」
「今日は他に誰もいねぇから目撃者もいねぇはずだ」
「それにしても、なかなか入ってこねぇなぁ」
「おい、うまいこと言って誘いこめ」

 へいっと一番下っ端の鬼が応じて扉を開けようとしたその時です。
 ガラッと向こうから開けられると同時にパァアッと眩い光が飛びこんできました。

「ま、まぶしーーっ!!」

 あまりの光彩に手を顔の前にかざして鬼たちが悲鳴を上げます。
 何が起こったのでしょうか。
 果たして、どんな光源が外にあるというのでしょうか。
 太陽光ですら届きにくい薄暗い森の中にあるはずなのにおかしな現象です。

「な、なんだ…一体なにが…」

 鬼たちが動揺しながらも、徐々に徐々にと光に慣れてきた目で指の間から一生懸命に探りを入れます。
 そしてハッと全員で息をのみました。

「すみません、今日は休診日でしたか」

(う、うつくしーーっ!!)

 その時、オニーズ整形外科関係者の驚きの声が一致しました。

 なんということでしょう。
 なんという展開になってしまったのでしょう。
 見たいかと聞かれれば、もちのろんで見たいです。
 たとえ邪気に満ちた自分たちの目が潰れようとも。
 見させて下さい、あともう少し。
 まぶたは閉じない、閉じたくない。
 誰が閉じるというの、この美貌で。
 そうよ、誰も閉じないわ今では。
 そんな風に思わず演歌にでもしたくなるほどの美しい存在が来てしまったのです。
 食欲も性欲も戦意も傲慢さも鬼としての矜持も何もかもを。
 一瞬にして滅する美がこの世に存在することをオニーズ整形外科スタッフたちは知ったのです。

「申し訳ない、休診日とは知らずに。失礼します」
「いえ、やっています!!」

 全員が叫んでおじいさんを引き止めました。
 お近づきになりたいのです、少しでも。

「ああああの、ここここの、ももも問診票に、ごごごご記入を、おおお願いします!!」

 まるでサインを願い出るようにして。
 勇気を持って紙と筆を出した下っ端の働きに、誰もが奴はこの後、格上げだなと感じ入りました。
 この世のものとは思えないほどの優美な手が紙と筆を優雅に受け取りました。

「どどどどうぞ、おおおお掛けになって、くくく下さい!!」

 兄貴ポジの鬼もまた果敢に声をかけました。
 オレもがんばらなくてはという想いからではありません。
 ただただ、ちょっとでもいいから仲良くしたいという欲望からでした。

「ありがとうございます…あ、でも…」

 おじいさんが待合室のソファーに座りながら首を傾げました。

「もしかして…こちらは保険がきかない美容整形ですか?」
「いえ、保険適用内です!!」

 症状すら確認していないのに全員が声をそろえて答えました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

星降る夜に ~これは大人の純愛なのか。臆病者の足踏みか。~

大波小波
BL
 鳴滝 和正(なるたき かずまさ)は、イベント会社に勤めるサラリーマンだ。  彼はある日、打ち合わせ先の空き時間を過ごしたプラネタリウムで、寝入ってしまう。  和正を優しく起こしてくれたのは、そこのナレーターを務める青年・清水 祐也(しみず ゆうや)だった。  祐也を気に入った和正は、頻繁にプラネタリウムに通うようになる。  夕食も共にするほど、親しくなった二人。  しかし祐也は夜のバイトが忙しく、なかなかデートの時間が取れなかった。  それでも彼と過ごした後は、心が晴れる和正だ。  浮かれ気分のまま、彼はボーイズ・バーに立ち寄った。  そしてスタッフメニューの中に、祐也の姿を見つけてしまう。  彼の夜の顔は、風俗店で働く男娼だったのだ……。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

寡黙なオオカミαにストーカー気質のネコΩが嫁いだ話

かとらり。
BL
 誰もがケモミミとバース性を持つ世界。  澪は猫種のΩだった。  引っ込み思案の澪は半ばストーカーのように密かに追いかけている憧れの人がいる。  狼種のαの慶斗だ。  そんな慶斗にいきなり嫁ぐことが決定した澪。話しかけるのも無理なのに結婚なんてできるの?  しかも慶斗は事情があるらしくー…

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...