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バレた
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「えっ…そうですか、いやぁ毎日納豆と高麗人参とニンニクとしじみとショウガと卵と玄米とクルミと青魚とシソとゴマと多めの野菜と豆腐を食べて、適度な運動と良質な睡眠を取っている程度なんですけど」
「じゃ、問題ないですねぇ。その生活を続けて下さい」
内心ヒヤリとさせられましたが、副院長の全く気にしていない様子にワルオがホッと安心しました。
ですが、このまま診察が終了してしまうと写真が撮れません。
「あのぅ…実は…」
身を起こして台の上に座り直すと院内に入ってからずっと付けたままの黒い布をおずおずと取りました。
「予約を取った時にはなかったのですが、数日前から頬にこぶみたいなのができてしまって…」
状況を見て出そうと仕こんでいたネタを今ここで使うことにしたのです。
「どれどれ、ちょっと横を向いて下さい」
膨らんだ部位を見た途端にスッと若頭の目がわずかに閉ざされました。
それが人工的に作られたこぶだとわかったからです。
おそらくは吸引した脂肪を注射針か何かで注入したにちげぇねぇと。
若頭は察しました。
こぶの除去も添加も鬼の専門分野です。
他の奴らをだませても、このオレはだませねぇぞと。
診察する振りをしながら心の中で吐き捨てました。
けれども意味がわかりません。
おじいさんの写真をなんとかしてこの目で見ようと。
それこそ肩こり、腰痛、膝痛、頭痛、手足のしびれを自称する以外にも、打撲やら擦り傷やら捻挫やらなんやらをわざわざ自力でこしらえて来院してくる患者も少なくありませんでした。
ですが、外科的な施術までしてこぶを作ってきたのは初めてです。
(おじいさんのファンだから…?)
熱狂的ゆえにこぶを真似したのかと思い、いや違うとすぐさま否定します。
対外的にはおじいさんの個人情報保護の観点もあり、小さなできものを取ったとしかバラしていません。
こぶだと知っているはずがないのです。
「ちょっと器具を取ってきますね」
いずれにせよ、要親父確認案件だなと。
若頭が診察椅子から立ち上がりました。
おじいさんを愛する心を持つならば人類も鬼も皆兄弟、どんな患者でももはや同担に変わりありません。
従って、やらせのケガだろうとなんだろうと基本的には保険適用内で治療を施してきましたが、今回の自作自演のこぶはさすがにどうなんだろうと。
融通の利かない若頭には判断がつかなかったのです。
(今だ!!)
がっしりとした後ろ姿が戸の向こうに消えるや否や、ワルオが跳ね上がります。
急いで荷物置き場に置いていた鞄からカメラ機能が搭載された端末を取り出しました。
まだまだ画素数が少ない粗い画像の時代ではありましたが、どうしてもマイお宝として残したいのです。
まずは全体像に、次におじいさんのアップもと。
手が震えるのを堪えながら一生懸命に撮ります。
せっかくだからおじいさんと一緒に写したいと欲が出てしまったその時です。
「てめぇ、このヤロー、なにしてやがんだっ!!」
怒号が室内に響き渡りました。
文字通り鬼のような形相で若頭が立っていました。
先ほどまでの穏やかな整形外科医はどこにもいません。
ワルオの目には角ですら見えました。
でも実際にも本当に角が生えていました。
「うさんくせぇ奴だと思っていたが、ただじゃおかねぇ」
「じゃ、問題ないですねぇ。その生活を続けて下さい」
内心ヒヤリとさせられましたが、副院長の全く気にしていない様子にワルオがホッと安心しました。
ですが、このまま診察が終了してしまうと写真が撮れません。
「あのぅ…実は…」
身を起こして台の上に座り直すと院内に入ってからずっと付けたままの黒い布をおずおずと取りました。
「予約を取った時にはなかったのですが、数日前から頬にこぶみたいなのができてしまって…」
状況を見て出そうと仕こんでいたネタを今ここで使うことにしたのです。
「どれどれ、ちょっと横を向いて下さい」
膨らんだ部位を見た途端にスッと若頭の目がわずかに閉ざされました。
それが人工的に作られたこぶだとわかったからです。
おそらくは吸引した脂肪を注射針か何かで注入したにちげぇねぇと。
若頭は察しました。
こぶの除去も添加も鬼の専門分野です。
他の奴らをだませても、このオレはだませねぇぞと。
診察する振りをしながら心の中で吐き捨てました。
けれども意味がわかりません。
おじいさんの写真をなんとかしてこの目で見ようと。
それこそ肩こり、腰痛、膝痛、頭痛、手足のしびれを自称する以外にも、打撲やら擦り傷やら捻挫やらなんやらをわざわざ自力でこしらえて来院してくる患者も少なくありませんでした。
ですが、外科的な施術までしてこぶを作ってきたのは初めてです。
(おじいさんのファンだから…?)
熱狂的ゆえにこぶを真似したのかと思い、いや違うとすぐさま否定します。
対外的にはおじいさんの個人情報保護の観点もあり、小さなできものを取ったとしかバラしていません。
こぶだと知っているはずがないのです。
「ちょっと器具を取ってきますね」
いずれにせよ、要親父確認案件だなと。
若頭が診察椅子から立ち上がりました。
おじいさんを愛する心を持つならば人類も鬼も皆兄弟、どんな患者でももはや同担に変わりありません。
従って、やらせのケガだろうとなんだろうと基本的には保険適用内で治療を施してきましたが、今回の自作自演のこぶはさすがにどうなんだろうと。
融通の利かない若頭には判断がつかなかったのです。
(今だ!!)
がっしりとした後ろ姿が戸の向こうに消えるや否や、ワルオが跳ね上がります。
急いで荷物置き場に置いていた鞄からカメラ機能が搭載された端末を取り出しました。
まだまだ画素数が少ない粗い画像の時代ではありましたが、どうしてもマイお宝として残したいのです。
まずは全体像に、次におじいさんのアップもと。
手が震えるのを堪えながら一生懸命に撮ります。
せっかくだからおじいさんと一緒に写したいと欲が出てしまったその時です。
「てめぇ、このヤロー、なにしてやがんだっ!!」
怒号が室内に響き渡りました。
文字通り鬼のような形相で若頭が立っていました。
先ほどまでの穏やかな整形外科医はどこにもいません。
ワルオの目には角ですら見えました。
でも実際にも本当に角が生えていました。
「うさんくせぇ奴だと思っていたが、ただじゃおかねぇ」
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