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陰謀 出現 そして・・・

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 「一体、なにがあった? どうして、そうなった?」

 「ズバリ、だまし討ちで~す!! 教区長の留守を狙って、信徒を装った兵士がルーカさんに、ゆるしの秘跡を授けて欲しいと、嘘をついて近寄ったので~す!!」

 (そう来たか・・・)

 疑うことのないルーカの、生真面目な使命感がつけこまれたのだ。あの男がルーカをあきらめるなど決してないとは思っていたが。

 ロー帝国副帝、セクストゥス・ウァリアウス・サニキニウス。鬱屈した男の異常なる執着。

 それには、もう一人の副帝ルーキウス・ウァリアウス・シュタインティヌスへの愛憎が絡む。

 常に比較される相手側の、帝国の頂上に立つ王者としての申し分のない資質。外征や政務で振るう見事なる采配に、軍人として華麗なる戦歴。
 
 さらには、国内の経済を加速度的に発展させた手腕に、民衆への慈悲の心も持ち合わせる、非の打ち所のない高潔なる人間性。おまけに見目も麗しい。

 抱かざるを得ない、妬ましさとうらやましさと敗北感と。向き合いたくない、内なる劣等感をとことん引きずり出してくれる憎らしさと。

 だが、同時に惹かれずにはいられないのだ。対極にいる存在の美しさに。

 近づきたい。認めさせたい。モノにしたい。そんな卑屈な感情ゆえに、敬愛の域では片付けられない、ルーカの控えめな恋慕の情にも気がついたのだ。

 同類相哀れむというよりは、同じような心境で悶々としている相手であるのならば、引きずりこんでやるといった陰湿な我欲。

 シュタインティヌスもまたルーカを好んでいる気配を漂わせることが、その歪んだ感情に拍車をかけた。

 自分のモノには決してならない存在。だったら、せめて、あいつのお気に入りのルーカだけでも堕としてやる―――その三者関係を目にして理解した時の感情を、なんと形容すればいいのか。

 憐憫と共感と。どこか似ているとも思える、ルーカ・デザートローズ・シモーニという存在への情が、紛れもなく沸き上がった瞬間だったとも言える。
 
 (ルーカを助けなくては・・・)

 ラシュレスタが馬車を止め、地に降り立った。親指の爪で中指をピッと弾く。体液が溢れ出た。

 「それで、今どこにいるんだ、ルーカは?」

 「はい、それが公爵さま・・・厄介な感じなんで~す。聖地の西の端、サニキニウスの別荘に連れて行かれたのですが、その邸宅の様子が・・・変なんで~す」

 「変?」

 フギンギンが答える前に、ムニンムニが言わずにはいられないといった早口で割りこんだ。

 「魔物である自分らがいうのもなんですが、これまで偵察してきた時よりもなんか・・・あいつ、前々から、どっかのへんてこりんな儀式に凝ってはいたけど・・・ここまでは・・・聖地なのになぁ?」

 ムニンムニが相方に同意を求めた後、上空を飛び回る烏の視線から見た光景が小さな魔鏡に映し出される。

 「これは・・・」

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