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魔王VS断罪の勇者 2

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「ムダに抵抗しやがって…」
俺は勇者を運ぼうとするが、肩に触れた瞬間、黒い靄が勇者から放たれる。
「なんだこれ?」
ゆらりと生気を失ったかの様に立ち、
「オートモード」
と勇者が唱える。勇者は全身を黒い靄で多い、自身の剣はどず黒く、鈍い光を放っていた。
瞬きの瞬間に、勇者は右に現れる。
「おいおい?さっきと全く剣筋が違うじゃねえか。」
怒涛の速さでカンカンと俺の鱗に攻撃してくる。ダメージはないが、鱗の隙間や膝裏など弱点を正確に捉えてくる。
そして、削りに削られた俺の左腕がバチンと太い輪ゴムが千切れた様な音をたてた。
見ると、俺の左腕は無くなっていた。傷口からポタリと血が流れる。
勇者は千切れた俺の左腕を貪っている。どうやらあのオートモードはかなりの魔力を使うらしい。極魔の左腕を食べた勇者は解放率2%の俺でも手に余る。
「本当はしたくはないんだがな…まずは、創造魔法ー宝石牢獄ー」
と、煌びやかな宝石で作られた柵が俺たちを囲う。
「誰も来るなよ…もう俺にも止められない…」
ゆっくりと意識を落とす。身は手放しても、心は手放さずに…

魔王は巨大な繭に包まれる。そこから出てきたのは…

魔王は全身を真っ黒な羽毛で、足には大きな鉤爪、手は真っ黒な鱗に、そして顔はギョロリとした目、大きな嘴、羽は相変わらず鋼鉄の様な羽で浮遊している。

「あ、ああ、ああああああああ、かかかかが、ガアアアアァァァァ‼︎¡¡」
勇者はオートモードを起動してもまだ、理性は微かに残っていた。勇者は察知する。この生物は生かしてはならないと。
すぐさま勇者は剣を振りかざす。魔王は避けもせずに受ける。
「なっ⁈」
魔王には全くダメージが入っていなかったのだ。魔王はそのまま勇者の腹を貫こうとする。しかし、勇者は驚異の瞬発力でガードした。ガードは成功したかの様に思えたが、背後から勇者の腹は貫かれていた。
「時空を…ねじ曲げたとでも…言うのか…」
魔王は貫いた手を乱雑に引き抜き、それと同時にムーンサルトを喰らわせる。さらに意味不明な言語で呪文を唱える。
すると上では魔方陣が形成され、ゆっくりと回転し始めた。
その間にも魔王の連撃は終わらない。勇者の頭を乱雑に掴み、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も口からレーサーを吐き、体全体に当て続けた。
そして、魔方陣がピタリと回転を止めると、勇者に創造魔法サテライトの雨が降り注ぐ。轟音を何回も撒き散らし、鼓膜が破れるくらいに。
魔王は薄ら笑う。その笑いが本能か理性か分からずに。

目が覚めた。どうやら終わった様だ。保険として魔力をある程度使用したら強制的に始祖の御霊を解除する様にしていたのだが、保険がうまく働いてくれてよかった。
「5%はヤバイな…油断したら意識さえも持ってかれそうになる」
勇者はというと…

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