きみの隣にいるだけで幸せだったと気づいたのは

haregon

文字の大きさ
9 / 13

#9 驚きと嬉しさと

しおりを挟む

心臓は、周りに聞こえてしまうのではないかというぐらいにバクバクと波打っている。手をぎゅっと握って力を入れていないと、前に進むことを止めてしまいそうだ。

大丈夫、ちゃんと考えてきた。

ふーっと一呼吸置いてから、さらに自分の席へ近づいた。そして、リュックを背中からおろし、有季さんの側の机の横に置いた。その音に反応して、有季さんがこちらを見る。僕は、有季さんの方を見ておく。目が合う。

今だ!

迷いを捨てて、僕は口を無理やり動かした。

「お、おはよう」

ちょっと噛んだが、なんとか言えた。
有季さんは、虚をつかれたように目を見開いた。そして、そのまま固まった。

......やっぱり引かれたか。

悠也は、半分投げやりな気持ちでガタっと椅子を引き、腰をおろした。椅子の少し冷たい感触が伝わってくる。やっぱり挨拶なんてしなければよかった。すぐに、自信を無くした自分が顔を出す。せっかく、今回は頑張ろうと決めていたのに。

しかし次の瞬間、有季さんの目がすっと細くなったかと思うと、表情がにへっと崩れた。

「おはよう、悠也くん」

今度は、悠也が驚く番だった。

「え」

自分から挨拶しておいて、「え」って何だ。冷静に自分に突っ込みを入れながらも、悠也は状況が飲み込めていなかった。

今、挨拶を返してくれた?しかも名前呼びで?

急に、体温が上がっていくのを感じる。座っている椅子が暖かい。そして嬉しい。とにかく嬉しい。というかやばい。ここからどうしたらいいんだろう。

軽く会釈して、にやけそうな顔と恥ずかしさを乗り切ろうとしたが、有季さんはまだニッコニコでこっちを見ている。直視できない。でも、このタイミングで目をそらしたら、素っ気ない感じがするのではないか。それも嫌だ。

窮地に追い込まれた悠也を救ったのは、いつもは敵である始業のチャイムだった。

キーンコーンカーンコーン......

「起立ー!」

先生の合図で、みんなが椅子を引いて立ち上がる。僕も有季さんも、そうせざるをえない。助かった。
先生に向かって礼をしながら、悠也の頭の中は驚きと嬉しさ、期待と不安が入り混じっていた。

僕の挨拶に、ちゃんと返してくれた。しかも、なんかめちゃくちゃ笑顔じゃなかったか!?それってどういう笑顔なんだろう......

今日の授業も、集中できそうにない。

________
続く……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

君に恋していいですか?

櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。 仕事の出来すぎる女。 大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。 女としての自信、全くなし。 過去の社内恋愛の苦い経験から、 もう二度と恋愛はしないと決めている。 そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。 志信に惹かれて行く気持ちを否定して 『同期以上の事は期待しないで』と 志信を突き放す薫の前に、 かつての恋人・浩樹が現れて……。 こんな社内恋愛は、アリですか?

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

処理中です...