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4 騎士と破壊のお姫さま編
2-8 三番目は笑う
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今とは違う時間、違う世界のお話です。
その世界には、一匹の竜が住んでいました。
竜は腕力が強く、自然を操る不思議な力を持っていましたが、他の生き物や人間からは怖がられ、嫌われていました。
竜はとても乱暴で、欲深く、自分勝手な振る舞いばかりしていたからです。
他の生き物も人間も、そんな竜を怖がって近寄らなくなり、とうとう竜はひとりぼっちになってしまいました。
「ひとりの方が気楽で自由だ」
竜はそう強がって、自分勝手な振る舞いをやめませんでした。
そうして、みんなから怖がられ逃げられて、誰とも話をすることがない日々が続きました。
終わることのない年月の中で、竜は、誰とも話をすることのない毎日に、だんだんと飽きてきました。
ひとり暮らしに飽きた竜が最初に向かったのは大きな街です。
たくさんの人間が楽しそうに暮らしていましたが、竜を見ると、みんな悲鳴を上げ、街を捨てて逃げていきました。
次に向かったのは緑豊かな森と湖のある場所です。そこにはたくさんの動物が住んでいました。
ところが、竜を見ると、みんな一目散に逃げ惑い隠れてしまいました。
竜は誰とも会えなかったのです。
「待て」
行った先々で声をかけても、みんな、怯えて逃げてしまいました。
そんなことを繰り返しているうちに、竜はひとりでいることが、どんどん寂しくなってきました。
でも、竜に近づく生き物や人間は誰ひとりいません。
ある時、竜は、山の合間にある寂れた森にやってきました。
生き物の姿もなく、死んだような場所に何か不思議な気配を感じた竜は、首を捻ります。
「いったい何があるんだろう」
その森の奥へ奥へと進んでみると、そこにいたのは、紅の瞳を持つかわいらしいお姫さまでした。
「あなたが私の『死』なの?」
お姫さまは竜に向かって、恐がりもせずに問いかけます。
「俺は竜だ」
竜はつい、いつもの調子で答えてしまいました。大きな乱暴な声で。
しまった、怖がられる。
でも、お姫さまは怖がることも逃げることもせずに、紅の瞳で、じっと竜を眺めていました。
「私は『破壊』」
破壊の力を持つお姫さまは、人間たちから恐れられ嫌われて、誰も寄りつかない寂れた森に捨てられたのです。
「生きてても迷惑なんですって。だから、ここで『死』を待ってるの」
破壊のお姫さまは、悲しそうに笑いました。
お姫さまには守ってくれる騎士も、幸せにしてくれる王子さまも、誰もいなかったのです。
「お前は死にたいのか?」
「死にたくない」
竜の問いかけに、お姫さまは首をふるふると横に振り、はっきりと答えました。
「でも、生きる場所も生きる理由も、私には何もないんだもの」
そう言って、悲しそうに下を向くお姫さま。
そんなお姫さまを見て、竜は思いました。そして思ったことが口をついて出てきました。
「俺はお前を探してた」
「私は破壊よ? 破壊を探してたの?」
お姫さまは顔をあげ、不思議そうな表情で竜を見ました。
破壊なんて探して、何になるんだろう。
破壊なんて、嫌われて怖がられるだけなのに。
「いいや。俺は、俺を怖がらず、俺といっしょにいてくれるやつを探してたんだ」
竜は、自分が自分といっしょに生きてくれる人を探していたことに、気がついたのです。
「俺といっしょに行こう」
竜は、お姫さまのキレイな紅の瞳を見つめながら、呼びかけました。
「俺がお前の生きる場所と生きる理由になる。お前は俺といっしょに生きてくれ」
「私は死ななくていいの?」
お姫さまは竜に怖々と尋ねます。
「大丈夫だ。心配するな」
「本当に?」
「あぁ」
「良かった。ひとりは怖かった。ひとりで死ぬのはもっと怖かった」
お姫さまの紅の瞳から、涙がポロポロこぼれました。
「ならば、契約完了だ」
そう言うと、竜は魔法でお姫さまの首に契約の首輪をはめました。
お姫さまがずっとずっと、竜といっしょに生きていられるように。
さらに、魔力の鎖で自分と首輪を結び、お姫さまと二度と離れないようにしてしまったのです。
こうして、破壊のお姫さまといっしょになった竜は、お姫さまを遠くの世界に連れ去りました。
お姫さまを捨てた世界に別れを告げ、竜はお姫さまと仲良く幸せに暮らしたそうです。いつまでも、いつまでも。
「ネー、チビッコ。コノ話って実話、ソレとも作り話?」
けたたましい声をあげて、大女が一番目に話しかけているのが、窓越しに見えた。
オレは窓の隙間からスルリと中に入り、二人の様子を窺う。
「お話はお話だろ。たいていのお話は嘘話なんだよな」
「チビッコのくせに夢がないわねー」
「けっ」
二人は最近流行っている演劇の元ネタについて話をしているようだ。
劇の題名は『荒竜と破壊のお姫さま』。
名前の付け方からして、ありふれ過ぎて、つまらない。
「アタシはテッキリ…………」
「てっきり、なんだよ」
「カンタンに言えば。名もなき混乱と感情の神を破壊して、役目を終えて存在意義を失った赤種の四番目が、荒くれ者の竜に見初められ竜の伴侶となって、竜とともに別の世界に去っていった実話を基にした話かと思ったわー」
まったく。けたたましい。よく喋る大女だ。
「おい、どこが簡単だよ」
「で、ドーなのよ?」
「デュク様に聞いた話さ」
「なら、実話?」
「知ってるか? 役割を終えた破壊の赤種は、最後に自らを壊して世界から消えるんだ」
「え」
「終焉の赤種も似たような末路をたどる」
「本当に?」
「嘘ついてどうするよ」
そう。一番目の話は嘘ではない。
だからオレは四番目が消えないよう、オレが連れていこうと思ったんだ。
四番目はおもしろい存在だ。
壊すくせに直す。
壊したものしか直せない。
そんな四番目がいれば、オレの世界はもっとおもしろくなる。
四番目だって、オレと楽しく暮らしてた方がきっといい。
世界の片隅で見つけた四番目。
中に眠る破壊の種を、時間をかけて育て上げ、ようやく覚醒できたと思ったら。あっという間に、トカゲのやつが奪っていった。
オレが育てた破壊なのに。
「だからデュク様は、いや、デュク様だけでなく僕も二番目も、四番目と五番目をずっと気にかけていたんだ」
お前らだけじゃない。
オレだって気にかけていた。
「なら、コノお話は?」
「だから、デュク様に聞けって」
いくらデュク様の話といえど、竜が四番目を連れて行く話なんておもしろくない。つまらない。
早く話を書き換えないと。
四番目が壊れて消える前に。
その世界には、一匹の竜が住んでいました。
竜は腕力が強く、自然を操る不思議な力を持っていましたが、他の生き物や人間からは怖がられ、嫌われていました。
竜はとても乱暴で、欲深く、自分勝手な振る舞いばかりしていたからです。
他の生き物も人間も、そんな竜を怖がって近寄らなくなり、とうとう竜はひとりぼっちになってしまいました。
「ひとりの方が気楽で自由だ」
竜はそう強がって、自分勝手な振る舞いをやめませんでした。
そうして、みんなから怖がられ逃げられて、誰とも話をすることがない日々が続きました。
終わることのない年月の中で、竜は、誰とも話をすることのない毎日に、だんだんと飽きてきました。
ひとり暮らしに飽きた竜が最初に向かったのは大きな街です。
たくさんの人間が楽しそうに暮らしていましたが、竜を見ると、みんな悲鳴を上げ、街を捨てて逃げていきました。
次に向かったのは緑豊かな森と湖のある場所です。そこにはたくさんの動物が住んでいました。
ところが、竜を見ると、みんな一目散に逃げ惑い隠れてしまいました。
竜は誰とも会えなかったのです。
「待て」
行った先々で声をかけても、みんな、怯えて逃げてしまいました。
そんなことを繰り返しているうちに、竜はひとりでいることが、どんどん寂しくなってきました。
でも、竜に近づく生き物や人間は誰ひとりいません。
ある時、竜は、山の合間にある寂れた森にやってきました。
生き物の姿もなく、死んだような場所に何か不思議な気配を感じた竜は、首を捻ります。
「いったい何があるんだろう」
その森の奥へ奥へと進んでみると、そこにいたのは、紅の瞳を持つかわいらしいお姫さまでした。
「あなたが私の『死』なの?」
お姫さまは竜に向かって、恐がりもせずに問いかけます。
「俺は竜だ」
竜はつい、いつもの調子で答えてしまいました。大きな乱暴な声で。
しまった、怖がられる。
でも、お姫さまは怖がることも逃げることもせずに、紅の瞳で、じっと竜を眺めていました。
「私は『破壊』」
破壊の力を持つお姫さまは、人間たちから恐れられ嫌われて、誰も寄りつかない寂れた森に捨てられたのです。
「生きてても迷惑なんですって。だから、ここで『死』を待ってるの」
破壊のお姫さまは、悲しそうに笑いました。
お姫さまには守ってくれる騎士も、幸せにしてくれる王子さまも、誰もいなかったのです。
「お前は死にたいのか?」
「死にたくない」
竜の問いかけに、お姫さまは首をふるふると横に振り、はっきりと答えました。
「でも、生きる場所も生きる理由も、私には何もないんだもの」
そう言って、悲しそうに下を向くお姫さま。
そんなお姫さまを見て、竜は思いました。そして思ったことが口をついて出てきました。
「俺はお前を探してた」
「私は破壊よ? 破壊を探してたの?」
お姫さまは顔をあげ、不思議そうな表情で竜を見ました。
破壊なんて探して、何になるんだろう。
破壊なんて、嫌われて怖がられるだけなのに。
「いいや。俺は、俺を怖がらず、俺といっしょにいてくれるやつを探してたんだ」
竜は、自分が自分といっしょに生きてくれる人を探していたことに、気がついたのです。
「俺といっしょに行こう」
竜は、お姫さまのキレイな紅の瞳を見つめながら、呼びかけました。
「俺がお前の生きる場所と生きる理由になる。お前は俺といっしょに生きてくれ」
「私は死ななくていいの?」
お姫さまは竜に怖々と尋ねます。
「大丈夫だ。心配するな」
「本当に?」
「あぁ」
「良かった。ひとりは怖かった。ひとりで死ぬのはもっと怖かった」
お姫さまの紅の瞳から、涙がポロポロこぼれました。
「ならば、契約完了だ」
そう言うと、竜は魔法でお姫さまの首に契約の首輪をはめました。
お姫さまがずっとずっと、竜といっしょに生きていられるように。
さらに、魔力の鎖で自分と首輪を結び、お姫さまと二度と離れないようにしてしまったのです。
こうして、破壊のお姫さまといっしょになった竜は、お姫さまを遠くの世界に連れ去りました。
お姫さまを捨てた世界に別れを告げ、竜はお姫さまと仲良く幸せに暮らしたそうです。いつまでも、いつまでも。
「ネー、チビッコ。コノ話って実話、ソレとも作り話?」
けたたましい声をあげて、大女が一番目に話しかけているのが、窓越しに見えた。
オレは窓の隙間からスルリと中に入り、二人の様子を窺う。
「お話はお話だろ。たいていのお話は嘘話なんだよな」
「チビッコのくせに夢がないわねー」
「けっ」
二人は最近流行っている演劇の元ネタについて話をしているようだ。
劇の題名は『荒竜と破壊のお姫さま』。
名前の付け方からして、ありふれ過ぎて、つまらない。
「アタシはテッキリ…………」
「てっきり、なんだよ」
「カンタンに言えば。名もなき混乱と感情の神を破壊して、役目を終えて存在意義を失った赤種の四番目が、荒くれ者の竜に見初められ竜の伴侶となって、竜とともに別の世界に去っていった実話を基にした話かと思ったわー」
まったく。けたたましい。よく喋る大女だ。
「おい、どこが簡単だよ」
「で、ドーなのよ?」
「デュク様に聞いた話さ」
「なら、実話?」
「知ってるか? 役割を終えた破壊の赤種は、最後に自らを壊して世界から消えるんだ」
「え」
「終焉の赤種も似たような末路をたどる」
「本当に?」
「嘘ついてどうするよ」
そう。一番目の話は嘘ではない。
だからオレは四番目が消えないよう、オレが連れていこうと思ったんだ。
四番目はおもしろい存在だ。
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オレが育てた破壊なのに。
「だからデュク様は、いや、デュク様だけでなく僕も二番目も、四番目と五番目をずっと気にかけていたんだ」
お前らだけじゃない。
オレだって気にかけていた。
「なら、コノお話は?」
「だから、デュク様に聞けって」
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