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4 騎士と破壊のお姫さま編
2-9 騎士は喜ぶ
ネージュ様にお会いできる算段がついた。
王宮に呼ばれた俺たちは、少し待たされた後、広々とした会議室のような場所に通される。
そこには、国王陛下と十歳くらいの年格好をした赤目の少年が待っていた。
イスに座るよう促され、全員が着席したところで、陛下が少年ににこやかな笑顔を向けて話しかけた。
「テラ君、そういうわけで、取りまとめをお願いしたいんだよね」
まるで友達にでも話しかけるような、砕けた言葉遣いで少年にお願いをする陛下。
口調は穏やかでも、王族の威厳を感じる。
「いいよね?」
にこやかな笑顔の陛下に対して、不機嫌な顔の少年。
目の前の菓子に勝手に手を出しては、カリカリと食べている。その手が陛下の言葉で止まった。
「はぁあ? 何が、取りまとめだよ」
「ほらほら。君たちも、テラ君にお願いして」
今日呼び出されたのは、グランフレイム、グランミスト、そしてベルンドゥアン。
グランフレイムはこの場にいない。
グランミストとして総師団長とグランミスト嬢が、ベルンドゥアンとして父、叔父、そして俺が参席している。
しかし、この少年にお願い?
俺もグランミスト嬢も顔を見合わせて、躊躇する。
どう見たって、陛下の前で不遜な態度でお菓子を頬張る、ただの子どもだ。
そんな俺たちに構うことなく、総師団長、父、叔父の三人は立ち上がって深く頭を下げた。
慌てて、俺たち二人もそれに倣う。
少年の声は聞こえない。
チラッと横を見ると、総師団長も父も叔父も、無言で頭を下げたままだ。俺だけ頭を上げる訳にもいかず、そのままの姿勢を保った。
さらにしばらくして、見かねた陛下の声が聞こえてきた。
「君たち。直って、席につきなさい」
陛下の言葉で頭を上げる。
やれやれと言った陛下と、汚いものでも見るような目つきで俺たちを眺める少年が目に映った。
「このままだとキリがないだろう」
「こいつらの自業自得だろ」
「そんな言い方はないんじゃないかな」
陛下が少年を諭すように話しかけた。
それでも少年の態度は変わらない。
そんな少年の態度を見ても、誰も何も注意しない。
いったい、何なんだ、この少年は。
「いいか、国王」
「なんだい、テラ君」
「どっちか片方だけが暴走するなら、どうにかなるけどな」
「ああ」
「二人して暴走したら、この国、滅ぶぞ」
「それをどうにかするのがテラ君だろ」
「けっ」
二人の会話の内容がさっぱり分からない。何の話をしているんだ?
ネージュ様にお会いできるという話で、俺たちは呼び出されたんじゃなかったのか?
「おい、オッサン」
急に、少年がこちらに顔を向け、乱暴な言葉使いで話しかけてきた。
総師団長がビクッとしたところをみると、総師団長に対してだったようだ。
総師団長をオッサンなんて呼び方をするこの少年の正体を、俺は考えあぐねていた。
「警告したはずだぞ。どの面下げて四番目に会うつもりだ」
「ぐっ」
同時にもの凄い圧を受ける。
まともに圧を受けている総師団長は、顔色を青くして呻いた。
そばにいる俺も胸を圧されるような、息が詰まりそうな感触を受ける。
「ほらほら、テラ君。苛めない苛めない」
陛下の言葉がして、パッと圧が消えた。
いつの間にか額に汗がにじんでいる。
めまいがして頭がふらつくが、なんとか耐えた。
目の前の二人は会話を続けている。
「菓子はあるんだろうな」
「レクシルドに持たせるよ」
「ちっ。国の代表者は舎弟か。なら、仕方ないな」
どうやら少年の協力、らしきものは得られたらしい。
「そういうわけで、君たちもいいね」
「ありがとうございます」
総師団長が着席したまま、深々と頭を下げる。
その姿を見て、少年が嫌なものを見るような顔をした。
「早い方がいいだろうから、三日後に大神殿で行いなさい。テラ君、頼んだよ」
「けっ」
少年は変わらず不機嫌そうな顔のまま、陛下と俺たちを代わる代わる見た。
そして、すくっとイスから立ち上がる。
「菓子、忘れんなよ」
少年の足元に朱赤色の魔法陣が広がったかと思うと、グニャリと空間が歪んで、少年が消えた。
あまりの光景に俺は息を飲む。
転移魔法だ。
そういえば、少年の目の色は赤くなかったか。朱色に近いような赤い色。つまり、あの少年は、そういうことか。
「どうなることかと思ったけど、なんとか、テラ君の協力が得られて良かったよ」
ホッとした顔で話し始めた陛下に、総師団長が感謝の言葉を伝える。
「ご高配を賜り、ありがたく思います」
総師団長の言葉に合わせて、俺たちも深く頭を下げた。
ともあれ、これでネージュ様に会える。
会って、ネージュ様と話ができる。
浮き立つ俺の心を現実に引き戻すかのように、陛下がポツリと言葉を漏らした。
「グランフレイム卿は引き下がったよ」
陛下は目を伏せて言葉を続ける。
「娘はあの世で幸せに暮らしているから、と言ってね」
陛下の言葉が静かに耳に入ってくる。
「君たちは、グランフレイム卿のようにはできないようだから。お会いしてくるといい」
グランフレイム卿はネージュ様だと分かっていて会わないということか。
ネージュ様だと分かっていてなお、ネージュ様の死を肯定するなんて。
グランフレイム卿のことも、グランフレイム卿を評価する陛下のことも、俺には理解できなかった。
「話ができるかは向こう次第だ。あくまでも、会う機会が与えられただけ、と思った方がいいよ」
陛下はそう言って念を押す。
「分かったね」
これで陛下との謁見は終了となった。
会う機会が与えられただけ。
それでもいい。ネージュ様に会える。
死んだと思っていたネージュ様に、また会うことができるんだ。
そしてあわよくば、ネージュ様の記憶が戻るかもしれない。そしてまた…………。
そんな期待も抱いていた。
王宮に呼ばれた俺たちは、少し待たされた後、広々とした会議室のような場所に通される。
そこには、国王陛下と十歳くらいの年格好をした赤目の少年が待っていた。
イスに座るよう促され、全員が着席したところで、陛下が少年ににこやかな笑顔を向けて話しかけた。
「テラ君、そういうわけで、取りまとめをお願いしたいんだよね」
まるで友達にでも話しかけるような、砕けた言葉遣いで少年にお願いをする陛下。
口調は穏やかでも、王族の威厳を感じる。
「いいよね?」
にこやかな笑顔の陛下に対して、不機嫌な顔の少年。
目の前の菓子に勝手に手を出しては、カリカリと食べている。その手が陛下の言葉で止まった。
「はぁあ? 何が、取りまとめだよ」
「ほらほら。君たちも、テラ君にお願いして」
今日呼び出されたのは、グランフレイム、グランミスト、そしてベルンドゥアン。
グランフレイムはこの場にいない。
グランミストとして総師団長とグランミスト嬢が、ベルンドゥアンとして父、叔父、そして俺が参席している。
しかし、この少年にお願い?
俺もグランミスト嬢も顔を見合わせて、躊躇する。
どう見たって、陛下の前で不遜な態度でお菓子を頬張る、ただの子どもだ。
そんな俺たちに構うことなく、総師団長、父、叔父の三人は立ち上がって深く頭を下げた。
慌てて、俺たち二人もそれに倣う。
少年の声は聞こえない。
チラッと横を見ると、総師団長も父も叔父も、無言で頭を下げたままだ。俺だけ頭を上げる訳にもいかず、そのままの姿勢を保った。
さらにしばらくして、見かねた陛下の声が聞こえてきた。
「君たち。直って、席につきなさい」
陛下の言葉で頭を上げる。
やれやれと言った陛下と、汚いものでも見るような目つきで俺たちを眺める少年が目に映った。
「このままだとキリがないだろう」
「こいつらの自業自得だろ」
「そんな言い方はないんじゃないかな」
陛下が少年を諭すように話しかけた。
それでも少年の態度は変わらない。
そんな少年の態度を見ても、誰も何も注意しない。
いったい、何なんだ、この少年は。
「いいか、国王」
「なんだい、テラ君」
「どっちか片方だけが暴走するなら、どうにかなるけどな」
「ああ」
「二人して暴走したら、この国、滅ぶぞ」
「それをどうにかするのがテラ君だろ」
「けっ」
二人の会話の内容がさっぱり分からない。何の話をしているんだ?
ネージュ様にお会いできるという話で、俺たちは呼び出されたんじゃなかったのか?
「おい、オッサン」
急に、少年がこちらに顔を向け、乱暴な言葉使いで話しかけてきた。
総師団長がビクッとしたところをみると、総師団長に対してだったようだ。
総師団長をオッサンなんて呼び方をするこの少年の正体を、俺は考えあぐねていた。
「警告したはずだぞ。どの面下げて四番目に会うつもりだ」
「ぐっ」
同時にもの凄い圧を受ける。
まともに圧を受けている総師団長は、顔色を青くして呻いた。
そばにいる俺も胸を圧されるような、息が詰まりそうな感触を受ける。
「ほらほら、テラ君。苛めない苛めない」
陛下の言葉がして、パッと圧が消えた。
いつの間にか額に汗がにじんでいる。
めまいがして頭がふらつくが、なんとか耐えた。
目の前の二人は会話を続けている。
「菓子はあるんだろうな」
「レクシルドに持たせるよ」
「ちっ。国の代表者は舎弟か。なら、仕方ないな」
どうやら少年の協力、らしきものは得られたらしい。
「そういうわけで、君たちもいいね」
「ありがとうございます」
総師団長が着席したまま、深々と頭を下げる。
その姿を見て、少年が嫌なものを見るような顔をした。
「早い方がいいだろうから、三日後に大神殿で行いなさい。テラ君、頼んだよ」
「けっ」
少年は変わらず不機嫌そうな顔のまま、陛下と俺たちを代わる代わる見た。
そして、すくっとイスから立ち上がる。
「菓子、忘れんなよ」
少年の足元に朱赤色の魔法陣が広がったかと思うと、グニャリと空間が歪んで、少年が消えた。
あまりの光景に俺は息を飲む。
転移魔法だ。
そういえば、少年の目の色は赤くなかったか。朱色に近いような赤い色。つまり、あの少年は、そういうことか。
「どうなることかと思ったけど、なんとか、テラ君の協力が得られて良かったよ」
ホッとした顔で話し始めた陛下に、総師団長が感謝の言葉を伝える。
「ご高配を賜り、ありがたく思います」
総師団長の言葉に合わせて、俺たちも深く頭を下げた。
ともあれ、これでネージュ様に会える。
会って、ネージュ様と話ができる。
浮き立つ俺の心を現実に引き戻すかのように、陛下がポツリと言葉を漏らした。
「グランフレイム卿は引き下がったよ」
陛下は目を伏せて言葉を続ける。
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「君たちは、グランフレイム卿のようにはできないようだから。お会いしてくるといい」
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グランフレイム卿のことも、グランフレイム卿を評価する陛下のことも、俺には理解できなかった。
「話ができるかは向こう次第だ。あくまでも、会う機会が与えられただけ、と思った方がいいよ」
陛下はそう言って念を押す。
「分かったね」
これで陛下との謁見は終了となった。
会う機会が与えられただけ。
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