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6 討伐大会編
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討伐大会は三日間行われる。
テラの話では長くても短くても良くないそうで、この三日間という日数が最適なんだそうだ。
討伐大会を主催して取り仕切るのは大神殿やテラなので、いろいろな思惑も絡んでいるんだとは思う。とくに金銭面で。
それはさておき。
ラウを筆頭に、今回参加メンバーに選出された竜種は全員、討伐大会への参加経験がある。
概要はもとより、どんなところか、どんな危険があるか、どういった準備が必要かまですべて把握しているという。
なんと!
あのカーネリウスさんまで経験者だというのだから、世の中、侮れない。
いや、絶対、カーネリウスさんはいろいろ把握できてないと思うけどね!
今回の参加メンバーで竜種なのは、ラウ、カーネリウスさん、ドラグゼルンさん、銀竜さんの副官のデルストームさん、この四人。
しかし、経験者は竜種だけではなかった。
「討伐大会の参加回数で言えば、今回の参加メンバーではメランド卿がトップだな」
そう。何を隠そう、メモリアが一番のベテランだったのだ。
メモリア、恐るべし。
こんな凄い人が、ネージュの専属侍女だったなんて、おかしくない?
そもそも、なんで侍女? 専属護衛でよくない?
「メランド卿は、ネージュ様専属の侍女兼護衛だったんですよ。後から聞いた話ですけどね」
と、悔しげに語るジンクレスト。
きっと、ネージュの護衛時代には気が付かなかったんだろうね、メモリアの実力に。
メモリア、普通に素手で壁を壊したりしてたけどね。
そんなジンクレストの顔を見つめるのは、無表情の中にも自慢げな感じが見て取れるメモリア。
二人の間に、なんらかの競争関係があるようだ。
「それで、経験者もいっしょに、討伐大会の説明を聞く必要あるの? 未経験者だけで良いんじゃないの?」
今日は参加メンバーの中でも初参加の初心者のために、テラ、総師団長、第一塔長、第四塔長といった面々が説明をしてくれるという。
そんな理由で、私たちは本部の会議室に集められた。
初参加の初心者のために、と聞いていたはずなのに、ラウを含む竜種四人とメモリアもいっしょ。おかしい。
人見知りが激しいタリオ卿の代理として、なぜか、エルヴェスさんまで参加していた。これもまた、おかしい。
記録班に所属するタリオ卿は今回、記録官として参加する。
所属は特務部隊でも、直属の上司はエルヴェスさんだ。でも、代理なら記録班の班長さんでもいいはずなのに。
エルヴェスさん、絶対におもしろがって来ているんだと思う。
それか単純に討伐大会に興味があるのか、商売につながる何かを嗅ぎつけたのか。
エルヴェスさんはシュタム百貨店のオーナーで、シュタム百貨店は今、レストスブームで大盛況の真っ最中。
師団と百貨店とダブルで忙しい。
忙しさが爆発しているエルヴェスさんが、わざわざ首をつっこむとなると、何か企みでもあるんじゃないかと、ラウも疑っていそうだ。
チラチラと、危険人物を観察するような視線を、エルヴェスさんに飛ばしている。
そんな十人が会議室に入った。
広さ的にはちょうどいいのに、ちょっと窮屈に感じる。それぞれが発する圧がけっこう凄い。
「一番、魔力圧が凄いのはクロエル補佐官だからな」
「え?」
なんていうやり取りも交えつつ、全員が席についた。
ところで。
メモリアは私の専属護衛なので、ついて回るのは当然だとしても、竜種四人は必要なくない?
「何を言ってるんだ、フィア。必要があるに決まってるだろ!」
「だって、初心者向けの説明会でしょ?」
代理のエルヴェスさんも怪しいけど、焦りまくる夫はもっと怪しい。
竜種たちからは怪しい夫を擁護する声があがった。いいタイミングで。
「クロエル補佐官。混沌の樹林は危険なところなんです」
と、カーネリウスさん。
カーネリウスさんは、去年以前の事なんてあまり覚えていなさそうだ。
「経験者といえども、しっかり説明は聞かないとダメなんです」
と、デルストームさん。
デルストームさんが期待しているのは説明ではなく、リアル黒竜録だよね?
「だよな、師団長」
最後にドラグゼルンさんがラウに確認で問いかけを行った。
私の疑いの視線を受けても怯むことなく、普通竜種の三人は真剣な目で訴える。
あー、それほど危険なところなのか。
どうやら、今回の討伐大会は、けっこう本気大会のようだ。私は自分の認識の甘さを後悔する。
メンバーが竜種でがっつり固められているとこらからしても、推測はできたのに。
わざわざテラや第四塔長まで呼んで、説明やら救命講習が行われるというのに。
「竜種が心配するほど、危険だとは思わなかった」
うん、ラウ。疑ってごめん。
「ラウのことだから、私といっしょに説明を聞きたくて押しかけたんだと思ってた」
「当然だろ。ベルンドゥアンやナルフェブルに、フィアと説明を聞く権利を与えるだなんて、許せるわけがない!」
「「……………………………………。」」
ラウの一声に、普通竜種全員が黙り込んだ。
「私情が溢れてた」
「というのは建て前で、本音は俺たちが言ってた方ですから!」
「絶対、逆だ」
「マー、師団長の行動にほわほわちゃん以外の理由なんて、あるわけナイワー」
最後にエルヴェスさんが私の心に止めを刺したところで、総師団長が太い声を響かせる。
「もう、始めて良いよな?」
一瞬で全員が静まり返った。
ばっと上座に座る総師団長を見る。
総師団長の隣にはテラ、両脇には第一塔長と第四塔長が座っていた。
「師匠がさっきからお待ちだ」
塔長の言葉を受け、えへんと胸を張るテラの話から説明が始まった。
テラの話では長くても短くても良くないそうで、この三日間という日数が最適なんだそうだ。
討伐大会を主催して取り仕切るのは大神殿やテラなので、いろいろな思惑も絡んでいるんだとは思う。とくに金銭面で。
それはさておき。
ラウを筆頭に、今回参加メンバーに選出された竜種は全員、討伐大会への参加経験がある。
概要はもとより、どんなところか、どんな危険があるか、どういった準備が必要かまですべて把握しているという。
なんと!
あのカーネリウスさんまで経験者だというのだから、世の中、侮れない。
いや、絶対、カーネリウスさんはいろいろ把握できてないと思うけどね!
今回の参加メンバーで竜種なのは、ラウ、カーネリウスさん、ドラグゼルンさん、銀竜さんの副官のデルストームさん、この四人。
しかし、経験者は竜種だけではなかった。
「討伐大会の参加回数で言えば、今回の参加メンバーではメランド卿がトップだな」
そう。何を隠そう、メモリアが一番のベテランだったのだ。
メモリア、恐るべし。
こんな凄い人が、ネージュの専属侍女だったなんて、おかしくない?
そもそも、なんで侍女? 専属護衛でよくない?
「メランド卿は、ネージュ様専属の侍女兼護衛だったんですよ。後から聞いた話ですけどね」
と、悔しげに語るジンクレスト。
きっと、ネージュの護衛時代には気が付かなかったんだろうね、メモリアの実力に。
メモリア、普通に素手で壁を壊したりしてたけどね。
そんなジンクレストの顔を見つめるのは、無表情の中にも自慢げな感じが見て取れるメモリア。
二人の間に、なんらかの競争関係があるようだ。
「それで、経験者もいっしょに、討伐大会の説明を聞く必要あるの? 未経験者だけで良いんじゃないの?」
今日は参加メンバーの中でも初参加の初心者のために、テラ、総師団長、第一塔長、第四塔長といった面々が説明をしてくれるという。
そんな理由で、私たちは本部の会議室に集められた。
初参加の初心者のために、と聞いていたはずなのに、ラウを含む竜種四人とメモリアもいっしょ。おかしい。
人見知りが激しいタリオ卿の代理として、なぜか、エルヴェスさんまで参加していた。これもまた、おかしい。
記録班に所属するタリオ卿は今回、記録官として参加する。
所属は特務部隊でも、直属の上司はエルヴェスさんだ。でも、代理なら記録班の班長さんでもいいはずなのに。
エルヴェスさん、絶対におもしろがって来ているんだと思う。
それか単純に討伐大会に興味があるのか、商売につながる何かを嗅ぎつけたのか。
エルヴェスさんはシュタム百貨店のオーナーで、シュタム百貨店は今、レストスブームで大盛況の真っ最中。
師団と百貨店とダブルで忙しい。
忙しさが爆発しているエルヴェスさんが、わざわざ首をつっこむとなると、何か企みでもあるんじゃないかと、ラウも疑っていそうだ。
チラチラと、危険人物を観察するような視線を、エルヴェスさんに飛ばしている。
そんな十人が会議室に入った。
広さ的にはちょうどいいのに、ちょっと窮屈に感じる。それぞれが発する圧がけっこう凄い。
「一番、魔力圧が凄いのはクロエル補佐官だからな」
「え?」
なんていうやり取りも交えつつ、全員が席についた。
ところで。
メモリアは私の専属護衛なので、ついて回るのは当然だとしても、竜種四人は必要なくない?
「何を言ってるんだ、フィア。必要があるに決まってるだろ!」
「だって、初心者向けの説明会でしょ?」
代理のエルヴェスさんも怪しいけど、焦りまくる夫はもっと怪しい。
竜種たちからは怪しい夫を擁護する声があがった。いいタイミングで。
「クロエル補佐官。混沌の樹林は危険なところなんです」
と、カーネリウスさん。
カーネリウスさんは、去年以前の事なんてあまり覚えていなさそうだ。
「経験者といえども、しっかり説明は聞かないとダメなんです」
と、デルストームさん。
デルストームさんが期待しているのは説明ではなく、リアル黒竜録だよね?
「だよな、師団長」
最後にドラグゼルンさんがラウに確認で問いかけを行った。
私の疑いの視線を受けても怯むことなく、普通竜種の三人は真剣な目で訴える。
あー、それほど危険なところなのか。
どうやら、今回の討伐大会は、けっこう本気大会のようだ。私は自分の認識の甘さを後悔する。
メンバーが竜種でがっつり固められているとこらからしても、推測はできたのに。
わざわざテラや第四塔長まで呼んで、説明やら救命講習が行われるというのに。
「竜種が心配するほど、危険だとは思わなかった」
うん、ラウ。疑ってごめん。
「ラウのことだから、私といっしょに説明を聞きたくて押しかけたんだと思ってた」
「当然だろ。ベルンドゥアンやナルフェブルに、フィアと説明を聞く権利を与えるだなんて、許せるわけがない!」
「「……………………………………。」」
ラウの一声に、普通竜種全員が黙り込んだ。
「私情が溢れてた」
「というのは建て前で、本音は俺たちが言ってた方ですから!」
「絶対、逆だ」
「マー、師団長の行動にほわほわちゃん以外の理由なんて、あるわけナイワー」
最後にエルヴェスさんが私の心に止めを刺したところで、総師団長が太い声を響かせる。
「もう、始めて良いよな?」
一瞬で全員が静まり返った。
ばっと上座に座る総師団長を見る。
総師団長の隣にはテラ、両脇には第一塔長と第四塔長が座っていた。
「師匠がさっきからお待ちだ」
塔長の言葉を受け、えへんと胸を張るテラの話から説明が始まった。
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