わからせ! もののけ生徒会の調教師1年生

水都 おこめ

文字の大きさ
16 / 24
2章

16 店内

しおりを挟む
教子たち3人は、真宿しんじゅく東口のナンパ街道を駆け抜けて「激安の王道  ポンキ・ホーテ」と、デカデカと原色で書かれた看板のすぐ下まで来た。


教子 「いつみても自信満々の看板ですよね」

紫苑 「いいじゃない。潔くって。私は好きよ」

放課後の時間帯のせいか、店内は教子たちのような学生でゴチャゴチャと混み合っている。

繁盛しているようだ。



教子 「それで、まず何から買うんですか?」

紫苑 「まずは、アレね・・」

教子 「アレってなんですか?」

紫苑 「アレはアレよ・・」

教子 「・・?」



紫苑 「・・・・カオル」

カオル「・・はい」

カオル「まずは文具やトイレタリーなど、生徒会の共有備品です」

教子 「ですよねー」

まあ、カオルさんが仕切らなきゃよね、と教子は思った。

教子 「じゃあ、とりあえず生活用品のフロア・・4階ですね」

エレベーターを探し、乗り込んだ。




------------------------------




4階。生活用品のフロア。

店内には商品が所狭しと、わざと乱雑に陳列されている。

宝探しのような体験型のショッピングができるのが、この『ポンキ』の特長だ。


教子 「あ、このマグカップかわい~♪アケミとお揃いのカップでアフタヌーンチーしたいな・・でへりこ♪」

紫苑 「あのバカ犬には床に置いた水道水でも飲ませときゃいいのよ」

教子 「(イラッ)」

一瞬、この場で紫苑に強烈なクリックを食らわせて前後不覚にしてやろうかと考えたが、教子は思いとどまった。


平常心、平常心。いまは生徒会活動中だもん。

これもアケミとの平和な日々のためだ。

うん。本当に守りたいモノのためには、ちっぽけなことなど考えない。これ大切。





カオル「調しらべさん。カートを持ってきてくれない?」

教子 「はーい!了解でーす!」

教子は雑念を振り払い、タタタッとカートを取って、戻ってくる。


カオル「えーっと、ティッシュペーパーと、消えるボールペンと・・」

カオルがそのカートに高い位置からバスケのシュートを入れていくように、淀みなくポンポンと商品を入れていく。




そして一方・・

紫苑 「ねえ見て!このニワトリ、潰すとグエーッ、って言うわよ!」

紫苑 「ねえ見て!でっかい馬の首が売ってるわ!どこで仕留められたのかしら?日本に野生の馬っているの?」

紫苑 「ねえ見て!この服!フリフリでちょっとかわいいけど、ミニだし生地が薄くて寒そうだわ!ちょっと季節感ないんじゃない?」



手際よく仕事を進めていくカオルと教子に対し、紫苑はウロウロと店内を歩き回り、目についたものに駆けよっては遊んでいる。


教子 「その服は特殊な用途向けですよ・・んしょっ、んしょっ」


教子は、カオルの3ポイントシュートがばしばしと容赦なくカートを揺らしてくるので、中身を整理するのに手いっぱいだ。




こんな感じのゴチャゴチャした店は、遊びたい盛りの紫苑にとってはお宝の山なのだろう。

目を輝かせながら、無邪気にウロつきまわっている。

首が座ってない子供のように、キョロキョロキョロキョロと店内を見まわしては、自分の関心がいったものには即座にシュパッと寄っていく。

ネコの性格そのまんまだ。

まぁ、端から見れば子供っぽい超美人ということで、絵になるのだが・・





紫苑 「ねえ!なにこれ、先っぽから蒸気がシュワシュワ出てくるわよ!毛づくろい用?」

教子 「それは美顔器ですよ・・・」

教子がカートの中を手でかき回しながら、紫苑に気のない返事を返す。


紫苑 「でもこのコードの長さじゃ、下まで届かないんじゃないかしら・・」

紫苑 「・・・よいしょっ」

教子 「あーっ!そんなに引っ張っちゃだめです!断線しちゃう!」

紫苑 「あっ♪これ、あったかぁい・・♥いいわぁ・・♥」

教子 「・・・っていうかどこの毛をつくろおうとしてるんですか!うら若き乙女がこんなとこでそんな恰好しちゃらめえええっ!!」


や、ヤバい・・やっぱり会長も近距離パワーこずえさん型だ・・。

教子はこの先起きるであろう、紫苑とこずえと3人で外出した時の悪夢を想像し、一瞬うすら寒くなる。




カオル「会長、ほかのお客さんの迷惑になりますので・・あまり展示品で遊ばないように」

紫苑 「そう?・・まぁカオルがそう言うなら、そうしましょう」

教子 「かっ、カオルせんぱぁい・・・(尊敬のまなざし)」

それでいうとこのカオルさんの落ち着きは本当に頼りになる。

すごい。しびれる。憧れる。



カオル「会長。すみません。このポンキにお目当ての電動爪ヤスリは置いてないそうです」

紫苑 「あら?そうなの?カオルがここにあるって言ってたから、わざわざ真宿しんじゅくまできたのに・・」

赤いクチビルをセクシーに尖らせる紫苑。
  
カオル「はい・・すみません」




紫苑 「やっぱり、カオルは私がついてないとダメねぇ・・」

カオル「・・・申し訳ありません。すべて私の不徳の致すところです」

教子 「カオルさん!なにか言い返して!権力に屈しちゃダメ!」

役員に平謝りする中間管理職のように、一切の反論をせずに、カオルが紫苑に頭を下げる。

・・・ウチのお父さんも職場サーカスではこんな感じなんだろうか。

せめて自分は良い娘でいてあげよう、と教子は固く決意した。







--------------------------------------------







教子とカオルは、カートをガラガラと転がしながら店内を闊歩する。

教子 「えーっと、お次はっと・・」

カートは徐々に満杯に近づいてきている。

といっても中身は、紫苑の暇潰し用のおもちゃだったり、こずえ用のお菓子だったり、あとはティッシュペーパーとか文房具とか大したことないものばかりだが。

教子 「備品とは名ばかりの私物ばっかりだけど、買っちゃっていいのかしら・・」

教子の中で、横領、着服、汚職、・・という言葉が乱舞する。

これ、全部生徒会の活動費で買うのかな?いくらくらいあるんだろう。


私たちの学費がこういうのに使われてるのか・・。

いや、学費とは、生徒つまり教子の家も支払ったお金だという事。

ということは、元はといえばお父さんお母さんのお金。調しらべ家のお金。

ということは、私のお金でもある。うんうん。

だから私とアケミのモノも買っていいわよね・・。

と、政治家のような論法で教子が自分を納得させていると・・






紫苑 「ねぇ!なにこれ!なんかこのボタンを押すとウィンウィン動くわよ!電動猫じゃらし???」

紫苑は、グリングリンとグラインドする極太の動くソーセージのようなモノを見せびらかしながら立っていた。

教子 「ギャー!!だめだめだめ!そこは18歳未満立ち入り禁止のオトナのトイザ●スですよ!我々高校生は退散しましょう!」

紫苑 「なによ、私だってもうオトナよぉ」

教子は紫苑の背中をグイグイ押して、黒地に赤で大きく『×18』と書かれた暖簾の外に押し出す。

紫苑の出現によって、プライベートな癒しの時間を邪魔されて、物凄く居心地悪そうにしている紳士たちに一礼して・・。






教子 「はぁ、はぁ・・もうこれ私たち2人だけでやったほうが早いんじゃ?」

カオル「・・そうかもしれないわね。会長には少し安全な場所で遊んでて貰って、2人で手分けして探しましょう」

もはや幼児扱いである。

しかし、この近所に託児所なんてあるだろうか、と真剣に考えていると、


紫苑「なんか疲れちゃったわね。私はどこかでミルクでも飲みたいわ」

当の本人から意外な助け舟。

自分勝手なところは変わりはないが…。


カオル「わかりました。それじゃ、終わったらスマホでメッセージを入れますね」

教子 「さっきのとこにいっちゃダメですよ。あそこはオトナの紳士の社交場なんですから」

紫苑 「じゃあ、3階のペットゾーンで熱帯魚でも見てるわね」

教子 「・・なんかそこも嫌な予感がするんで、1階でたい焼きとミルクにしてください。生身の魚はダメです」






---------------------------






紫苑と、一旦別れた。

教子は、カオルと一緒に買い出しの残りを急ぐ。


カオル「えーっと、次は・・紅茶ね、私と瑞穂は紅茶派なの」

教子 「カオルさんと瑞穂さんは紅茶派と・・(メモメモ」

先輩の好物の把握は大事。お父さんも言ってた。



・・・・・



カオル「えーっと、次は・・アケミが好きなコーヒー。会長は熱いモノ飲めないから」

教子 「ぐふ♪一番高いやつにしちゃお♪」

カオル「買うブランドはいつも決まってます」

教子 「ちぇっ・・」



・・・・・



カオル「えーっと、次は・・こずえが屋上に登って帰ってこない時に、おびき出して捕獲する用のバナナとりもち・・・・ね」

教子 「そ、そんなのも売ってるんですね・・さすが激安アマゾン・・・」

教子はあらためて"ポンキ"の懐の深さを知った。

これは繁盛するわけだ・・。



・・・・・


カオル「えーっと、次は・・・こずえが園芸部の栽培した野菜を勝手に食べないように張り巡らせる電気柵ね」

教子 「こずえさんって一応、獣じゃなくて"ひと"ではあるんですよね?」


・・・・・



カオル「・・よし、こんなものかしら」

教子 「ひぃ・・ひぃ・・」

大量の商品が入った重いカートを引きずり廻していたので、教子の腕はパンパンだ。

アケミにマッサージしてもらいたい。

カオル「じゃあ、あとは会長を探して、1階のレジでお会計しましょう」







教子がカオルと、満杯のカートとともにエレベーターで1階まで降りた瞬間、

「うわー!!!」

と、いう男の野太い絶叫が聞こえてきた。

紫苑 「・・・」

そして、叫び声が聞こえた方角から、紫苑が無言でテクテクとこちらに歩いてくる。




教子 「な、なにかあったんですか?」

カオル「・・・」

なにかあった気しか、しない・・。

とにかく、大事おおごとではない範囲であってくれ。

紫苑 「さぁ?」

教子 「さ、さあ?」

紫苑 「なんかハエがいたようだけど、知らないわ。いちいち払った虫のことなんか覚えてられないから」


紫苑がそう言うと、叫び声の発信源から、

男 「い、いでで・・・」

男が足を引きずりながら、えっちらおっちらと、歩き出てきた。



そのちょっと異様な歩き姿を見た店員が声をかける。

店員「だ、大丈夫ですか?」

男 「大丈夫ですよ、お構いなく!・・・ちょっと転んでしまいまして・・あは、あははは」

男は強がるが、足を引きずっており、けっこう大丈夫ではなさそうである。

しかし、男のほうも大事おおごとにしたくないのか、あくまで自分が転んだことにしておきたいらしい。




紫苑 「大丈夫よ。監視カメラの死角だったから。証拠なんて何も残ってないし。だからこそあの男も近寄ってきたんでしょう」

教子 「・・・」

カオル「・・・」

教子 「なんともないですか・・?会長も。あの男の人も・・」

紫苑 「私は大丈夫。・・あんな人間のことなんてどうでもいいわ。考えを巡らすだけ時間の無駄だから、あなたもやめなさい」

・・・おおかた、ゴチャゴチャした店内の死角で、紫苑会長を痴漢か盗撮かしようとしたんだろう。

そして、投げ飛ばされたか、蹴飛ばされたか・・・。

凹んだアンティークデスクを、また思い出してしまった。




紫苑は、一年365日、四六時中、こういった男達の視線と欲望に晒され続けているのだろう。

・・・・美人ってトクなんだか、損なんだか、わからないな。

教子は単純に、そう思った。

カオル「・・ひとまず、お会計を済ましてしまいましょう」

教子 「そうですね・・」

3人は、レジへと向かう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

処理中です...