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2章
21 歓談
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店員 「いらっしゃいませ~、ご注文をどうぞ~♪」
紫苑 「どうしようかしら・・ダブルパウンダーバーガーを3つと、ミルクと・・あとチキンナゲットと・・」
教子 「めっちゃ食べますね・・」
紫苑 「肉が少ないからよ・・なんでパンで挟むのかしら?肉を肉で挟めばいいのに」
教子 「ハンバーガーの定義を逸脱しないでください。さっきの"いちびりステーキ"のほうが良かったんじゃ?」
カオル「会長は猫舌だから・・アツアツの鉄板肉は食べられないの」
教子 「えぇー・・」
教子たちは、誰もが知る世界的ハンバーガーチェーン、"ムクダナルズ"に来ていた。
店員 「お次のお客様~、こちらのレジへどうぞ~♪」
カオル「フィッシュフライバーガーをシーザーサラダのセットで。飲み物はウーロン茶でお願いします」
教子 「うーん、バランスが良い」
店員 「お次のお客様~、どうぞ~♪」
教子 「あ、あ、えーと・・この期間限定の照り焼きトマトバーガーを・・」
---------------
あの後・・・
男 「あ、あひ、ひ、ひあ、ひ・・・・」
カオルに、自宅・勤め先・恋人・家族関係の詳細と今までの経歴の一切、盗撮したデータを販売しているサイト、ウェブ上のすべてのIDとパスワード、上司への悪口を投稿しまくってるSNSのアカウントなど、ありとあらゆる赤裸々な個人情報を根掘り葉掘り訊きだされた男は、もはや真っ白な抜け殻となっていた。
カオル「すべて、記憶させて頂きました・・これらの情報は、今夜中にすべてネット上に流出するかもしれませんし、しないかもしれません・・それでは御機嫌よう」
カオルは男に向かって優雅に一礼すると、もう要件は済んだ、とばかりに振り向いた。
カオルがその気になれば、いつでもこの男を社会的に抹殺できる。
教子 「ご愁傷さまでした・・」
ナムアミダブツ、と教子が手を合わせる。
もし、自分がここまでの恥ずかしい情報を他人に握られたら・・・もはや自らの手で命を断つ以外にケジメのつけ方はないだろう。
もうこの男には、この先安眠できる日など訪れない。
時効のない指名手配犯のような人生を送っていくのだ・・・死ぬまで。
教子 「でも、これはちょっち、やりすぎじゃあ・・」
紫苑 「私はね・・ケンカを売られたら、潰すの。徹底的に。完膚なきまでに」
紫苑 「二度と刃向かう気が起きないように。いや、生まれてきた事を後悔するくらいに・・」
教子 「マジすか・・」
紫苑 「容赦はしないわ。それが掟よ・・・私に課せられた、ね」
野生の掟・・・。
群れのすべてを預かった、ボスとしての掟。
仲間を守るためなら、どんなに汚いことでもする。徹底的にする。
群れを脅かす外敵が現れたら、一切の禍根を断つように、潰す。
すり潰す。
それが・・・群れの仲間の命を預かる、長としての義務。使命。
教子は、紫苑のその姿に、仲間を守る誇り高きボスの姿を見た。
そうか・・。
紫苑にとって、生きることは、常に狩るか狩られるかなのだ。
いや、自分だけならまだしも、仲間の命まで背負っている。
その責任と重圧を、常に感じながら生きている。
自らの生存、そして、群れの存続を賭けた戦いの毎日。
教子は、目の前にいる紫苑のこの攻撃的な美貌の出処の一端を垣間見た気がした。
確かに、紫苑の顔立ちは完璧と言っていいほど美しい。
でも、それだけじゃない。
紫苑の持つ、研ぎ澄まされた日本刀のような、引き絞った弓の弦のような、鋭く、かつ危険な美しさ。
・・・・野生のトラは、ただ生きているだけで、美しい。
ギリギリの、極限状態で、常に戦っているからだ。
仲間を狙う敵と、そして恐らくは、己が抱える恐怖や不安、そしてその根源となる暗い過去と・・・。
教子 「紫苑会長・・・」
自然と、"会長"と口にしていた。
ココロの内側から溢れてくる、紫苑への尊敬と思慕の念・・。
我らがリーダーは、常に仲間たちのことを考えて、身を挺して戦ってくれている。
ハチャメチャな集団なんかじゃなかった。
色々あるけど、生徒会に入ってよかった、と教子は思った。
・・・・本当に、本当に、本当に、色々ありすぎるけども。
まだ入会して2日目なのに。
紫苑 「・・・それじゃ、頂くものを頂いて、さっさとオサラバしましょうか」
教子 「はい!」
教子は、ボスの指示に元気よく頷く。
教子 「・・・・はい?」
紫苑 「最後の仕上げよ・・教子、その男から財布を取り上げて」
教子 「は?」
紫苑 「決まってるでしょ。私に、そんな汚らわしいものを触らせる気?絶対イヤよ」
教子 「あ、いや、そうじゃなくて。財布を取り上げるって・・」
紫苑 「お腹がすいたわ。食事代よ。久しぶりにムックに行きたいわ」
カオル「あ、ムクダナルズ。いいですね」
教子 「い、いやそれはまずいっしょ・・それってKATSUAGEじゃ・・」
紫苑 「迷惑料よ」
紫苑は、こともなげに言い放つ。
カオル「新人として2番目のお仕事、ね」
カオルも、続けてニコっとほほえんだ。
・・・・その顔は、さきほど"ポンキ"で見せていた、母性あふれる優しいカオルお姉さん、の顔だ。
教子 「マジっすか・・?」
気高い野生の掟のはずが、なんだかいきなり、ヤンキーの通過儀礼みたくなってしまった。
紫苑とカオルが、レディースの総長と副ヘッドに見えてくる。
・・・いや、そういえば、獣人は生活費をどうしてるんだろう?
まさかあの生徒会室に住んでるわけじゃないだろうし、家賃も払わなきゃだろうし・・
こんな風に獲物から巻き上げて、日銭を稼いでたりして・・
・・・ヤンキーを通り越して、もはや山賊?
紫苑 「早くして。だんだんお腹がすいてきてイライラしてきちゃった・・」
教子は、それ以上なにも言えなかった。
たぶん、群れの仲間にご飯を食べさせてあげるためなんだろう・・ボスの思いやりなんだ。これは。
と、信じよう。
我らが長を信じよう・・・。
----------------------
教子たちは、ポンキで買った大量の荷物を、近場のコインロッカーに預けると、腹ごしらえのためにハンバーガーショップに向かった。
ロッカー代も食事代も、"軍資金"は潤沢だったから・・・・。
・・・・IT企業の法務部って、高給取りなんだな。
恐らく、ウチのお父さんなんかよりも。
断然。
比べ物になんないくらい。
時刻はもう、夜7時を回っていた。
調家に門限はない。
父母ともに、基本放任主義だし、教子も特に夜遊びをして心配をかけるタイプではなかったから。
ただ、一応、夕飯は外で食べてくることだけは伝えておいた。
ムックで夕食って久しぶりだな・・。
紫苑とカオル・・生徒会のメンバーと一緒に食事ができることが、素直に嬉しい。
----------------------
教子はトレーに乗ったハンバーガーのセットを店員から受け取り、カオルと4人掛けのボックス席に向かい合って座った。
紫苑は、一人だけケタ違いの量の注文をしたため、まだレジで出来上がりを待っている。
イライラして暴れださなきゃいいけど・・。
ま、さすがにそんなことしないか。
カオル「遠慮しないで。先に食べちゃっていいわよ。調さん」
教子 「あ、はい・・」
別に体育会系の部活ではないので、会長より先に食べるのがどうこうとかは、大丈夫だろう。
それよりも・・・
教子が、ちょっと気にしてること。
教子 「あの・・カオルさん・・」
カオル「なに?」
いきなり教子から名前を呼ばれて、カオルが首をかしげる。
教子 「あの、できれば・・ほかの先輩方みたいに"教子"って呼んでほしいかなー・・なんて・・」
新人の不意の小さなお願いに、カオルは一瞬キョトン、とすると
カオル「・・ふふっ、そういえば、そうよね」
カオル「ちょっと他人行儀だったわね。ごめんね・・教子」
と言って、今までで一番優しく、微笑んでくれた。
教子 「あ・・」
それだけで、教子の心がぽわん、と一面のお花畑になる。
いいなぁ・・美人の優しい笑顔・・・
ぐふ♪
教子 「・・・ありがとうございますっ」
カオル「うふふ・・私たち、もう"仲間"じゃない。教子・・さ、食べましょ」
やっぱり、生徒会に入って、よかったなぁ・・
こんなにやさしい美人と、いっしょにご飯が食べれるし。
ハンバーガーはタダだし。
カオル「私、ちょっとお手洗いに行ってくるわね」
教子 「はひ、ろーぞー♪」
もしゃもしゃとハンバーガーを頬張りながら、教子は返事をした。
この期間限定の、けっこうおいしいな・・。
そこに、大量の注文を載せたトレーを持った紫苑がようやくやってきた。
紫苑 「あら、カオルは?」
教子 「カオウはんは、ほへはあいでふ♪」
紫苑 「もうかぶりついてるし」
教子 「おさひにいただいてまふ~♪」
紫苑 「なんか、馬鹿っぽい食べ方ねえ・・」
馬鹿みたいな量の肉を抱えている人に言われたくはない。
紫苑のトレーは、特大のハンバーガー3つと大量のナゲットとLサイズミルクの重みで、少したわんでいる。
そのトレーをテーブルに滑らせながら、ス・・と紫苑が教子の横に座った。
紫苑は外側になり、ちょうど、教子の出口を塞ぐような形だ。
教子は、「あれ?カオルさんの隣じゃないんだ」と思った。
ま、別になんでもいいけど・・
ボックス席で美人に囲まれながらハンバーガー。
ぐふ♪最高♪
教子は、もはやなにも考えずに美女に囲まれたディナーを楽しんだ。
・・・楽しもうとしたのだが。
ガバッ!
教子「うぼっっっ!!!」
期間限定の照り焼きトマトバーガーに、夢中でかぶりついていた教子の体が、一気に体勢を崩した。
なに!?
なにかの凄まじい力で、いきなり右側に引っ張られたのだ。
右側・・つまり、紫苑の側に。
なんだか、体の下側、つまり下半身にグイッ!とすごい力が掛かっている。
教子が、その場所を確認すると・・・
・・・紫苑の、細いクセに肉付きの良い真っ白な脚が、教子の膝頭に絡みつくように乗っかっていた。
まるで、関節技に持ち込もうとする格闘家のようだ。
教子 「へ・・・?」
バーガーの中のトマトにかぶりついている最中に、いきなり右に引っ張られたので、教子の顔の左半分は赤く染まって、ピエロのようになってしまっている。
わけがわからず、教子は視線を、自分の下半身(および紫苑の膝小僧)から上にあげると・・
・・・そこにあるのは、もちろん、生徒会長の整った顔。
モデルやアイドル顔負けのタレント顔だ。
その顔が、今は・・・・濃厚な熱気を放っていた。
教子 「か、かいちょお?」
紫苑の目は、ねっ・・・とりと、蕩けている。
紫苑 「ねぇ・・・」
紫苑 「"アレ"・・・してよ・・・もう一回・・・」
紫苑 「どうしようかしら・・ダブルパウンダーバーガーを3つと、ミルクと・・あとチキンナゲットと・・」
教子 「めっちゃ食べますね・・」
紫苑 「肉が少ないからよ・・なんでパンで挟むのかしら?肉を肉で挟めばいいのに」
教子 「ハンバーガーの定義を逸脱しないでください。さっきの"いちびりステーキ"のほうが良かったんじゃ?」
カオル「会長は猫舌だから・・アツアツの鉄板肉は食べられないの」
教子 「えぇー・・」
教子たちは、誰もが知る世界的ハンバーガーチェーン、"ムクダナルズ"に来ていた。
店員 「お次のお客様~、こちらのレジへどうぞ~♪」
カオル「フィッシュフライバーガーをシーザーサラダのセットで。飲み物はウーロン茶でお願いします」
教子 「うーん、バランスが良い」
店員 「お次のお客様~、どうぞ~♪」
教子 「あ、あ、えーと・・この期間限定の照り焼きトマトバーガーを・・」
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あの後・・・
男 「あ、あひ、ひ、ひあ、ひ・・・・」
カオルに、自宅・勤め先・恋人・家族関係の詳細と今までの経歴の一切、盗撮したデータを販売しているサイト、ウェブ上のすべてのIDとパスワード、上司への悪口を投稿しまくってるSNSのアカウントなど、ありとあらゆる赤裸々な個人情報を根掘り葉掘り訊きだされた男は、もはや真っ白な抜け殻となっていた。
カオル「すべて、記憶させて頂きました・・これらの情報は、今夜中にすべてネット上に流出するかもしれませんし、しないかもしれません・・それでは御機嫌よう」
カオルは男に向かって優雅に一礼すると、もう要件は済んだ、とばかりに振り向いた。
カオルがその気になれば、いつでもこの男を社会的に抹殺できる。
教子 「ご愁傷さまでした・・」
ナムアミダブツ、と教子が手を合わせる。
もし、自分がここまでの恥ずかしい情報を他人に握られたら・・・もはや自らの手で命を断つ以外にケジメのつけ方はないだろう。
もうこの男には、この先安眠できる日など訪れない。
時効のない指名手配犯のような人生を送っていくのだ・・・死ぬまで。
教子 「でも、これはちょっち、やりすぎじゃあ・・」
紫苑 「私はね・・ケンカを売られたら、潰すの。徹底的に。完膚なきまでに」
紫苑 「二度と刃向かう気が起きないように。いや、生まれてきた事を後悔するくらいに・・」
教子 「マジすか・・」
紫苑 「容赦はしないわ。それが掟よ・・・私に課せられた、ね」
野生の掟・・・。
群れのすべてを預かった、ボスとしての掟。
仲間を守るためなら、どんなに汚いことでもする。徹底的にする。
群れを脅かす外敵が現れたら、一切の禍根を断つように、潰す。
すり潰す。
それが・・・群れの仲間の命を預かる、長としての義務。使命。
教子は、紫苑のその姿に、仲間を守る誇り高きボスの姿を見た。
そうか・・。
紫苑にとって、生きることは、常に狩るか狩られるかなのだ。
いや、自分だけならまだしも、仲間の命まで背負っている。
その責任と重圧を、常に感じながら生きている。
自らの生存、そして、群れの存続を賭けた戦いの毎日。
教子は、目の前にいる紫苑のこの攻撃的な美貌の出処の一端を垣間見た気がした。
確かに、紫苑の顔立ちは完璧と言っていいほど美しい。
でも、それだけじゃない。
紫苑の持つ、研ぎ澄まされた日本刀のような、引き絞った弓の弦のような、鋭く、かつ危険な美しさ。
・・・・野生のトラは、ただ生きているだけで、美しい。
ギリギリの、極限状態で、常に戦っているからだ。
仲間を狙う敵と、そして恐らくは、己が抱える恐怖や不安、そしてその根源となる暗い過去と・・・。
教子 「紫苑会長・・・」
自然と、"会長"と口にしていた。
ココロの内側から溢れてくる、紫苑への尊敬と思慕の念・・。
我らがリーダーは、常に仲間たちのことを考えて、身を挺して戦ってくれている。
ハチャメチャな集団なんかじゃなかった。
色々あるけど、生徒会に入ってよかった、と教子は思った。
・・・・本当に、本当に、本当に、色々ありすぎるけども。
まだ入会して2日目なのに。
紫苑 「・・・それじゃ、頂くものを頂いて、さっさとオサラバしましょうか」
教子 「はい!」
教子は、ボスの指示に元気よく頷く。
教子 「・・・・はい?」
紫苑 「最後の仕上げよ・・教子、その男から財布を取り上げて」
教子 「は?」
紫苑 「決まってるでしょ。私に、そんな汚らわしいものを触らせる気?絶対イヤよ」
教子 「あ、いや、そうじゃなくて。財布を取り上げるって・・」
紫苑 「お腹がすいたわ。食事代よ。久しぶりにムックに行きたいわ」
カオル「あ、ムクダナルズ。いいですね」
教子 「い、いやそれはまずいっしょ・・それってKATSUAGEじゃ・・」
紫苑 「迷惑料よ」
紫苑は、こともなげに言い放つ。
カオル「新人として2番目のお仕事、ね」
カオルも、続けてニコっとほほえんだ。
・・・・その顔は、さきほど"ポンキ"で見せていた、母性あふれる優しいカオルお姉さん、の顔だ。
教子 「マジっすか・・?」
気高い野生の掟のはずが、なんだかいきなり、ヤンキーの通過儀礼みたくなってしまった。
紫苑とカオルが、レディースの総長と副ヘッドに見えてくる。
・・・いや、そういえば、獣人は生活費をどうしてるんだろう?
まさかあの生徒会室に住んでるわけじゃないだろうし、家賃も払わなきゃだろうし・・
こんな風に獲物から巻き上げて、日銭を稼いでたりして・・
・・・ヤンキーを通り越して、もはや山賊?
紫苑 「早くして。だんだんお腹がすいてきてイライラしてきちゃった・・」
教子は、それ以上なにも言えなかった。
たぶん、群れの仲間にご飯を食べさせてあげるためなんだろう・・ボスの思いやりなんだ。これは。
と、信じよう。
我らが長を信じよう・・・。
----------------------
教子たちは、ポンキで買った大量の荷物を、近場のコインロッカーに預けると、腹ごしらえのためにハンバーガーショップに向かった。
ロッカー代も食事代も、"軍資金"は潤沢だったから・・・・。
・・・・IT企業の法務部って、高給取りなんだな。
恐らく、ウチのお父さんなんかよりも。
断然。
比べ物になんないくらい。
時刻はもう、夜7時を回っていた。
調家に門限はない。
父母ともに、基本放任主義だし、教子も特に夜遊びをして心配をかけるタイプではなかったから。
ただ、一応、夕飯は外で食べてくることだけは伝えておいた。
ムックで夕食って久しぶりだな・・。
紫苑とカオル・・生徒会のメンバーと一緒に食事ができることが、素直に嬉しい。
----------------------
教子はトレーに乗ったハンバーガーのセットを店員から受け取り、カオルと4人掛けのボックス席に向かい合って座った。
紫苑は、一人だけケタ違いの量の注文をしたため、まだレジで出来上がりを待っている。
イライラして暴れださなきゃいいけど・・。
ま、さすがにそんなことしないか。
カオル「遠慮しないで。先に食べちゃっていいわよ。調さん」
教子 「あ、はい・・」
別に体育会系の部活ではないので、会長より先に食べるのがどうこうとかは、大丈夫だろう。
それよりも・・・
教子が、ちょっと気にしてること。
教子 「あの・・カオルさん・・」
カオル「なに?」
いきなり教子から名前を呼ばれて、カオルが首をかしげる。
教子 「あの、できれば・・ほかの先輩方みたいに"教子"って呼んでほしいかなー・・なんて・・」
新人の不意の小さなお願いに、カオルは一瞬キョトン、とすると
カオル「・・ふふっ、そういえば、そうよね」
カオル「ちょっと他人行儀だったわね。ごめんね・・教子」
と言って、今までで一番優しく、微笑んでくれた。
教子 「あ・・」
それだけで、教子の心がぽわん、と一面のお花畑になる。
いいなぁ・・美人の優しい笑顔・・・
ぐふ♪
教子 「・・・ありがとうございますっ」
カオル「うふふ・・私たち、もう"仲間"じゃない。教子・・さ、食べましょ」
やっぱり、生徒会に入って、よかったなぁ・・
こんなにやさしい美人と、いっしょにご飯が食べれるし。
ハンバーガーはタダだし。
カオル「私、ちょっとお手洗いに行ってくるわね」
教子 「はひ、ろーぞー♪」
もしゃもしゃとハンバーガーを頬張りながら、教子は返事をした。
この期間限定の、けっこうおいしいな・・。
そこに、大量の注文を載せたトレーを持った紫苑がようやくやってきた。
紫苑 「あら、カオルは?」
教子 「カオウはんは、ほへはあいでふ♪」
紫苑 「もうかぶりついてるし」
教子 「おさひにいただいてまふ~♪」
紫苑 「なんか、馬鹿っぽい食べ方ねえ・・」
馬鹿みたいな量の肉を抱えている人に言われたくはない。
紫苑のトレーは、特大のハンバーガー3つと大量のナゲットとLサイズミルクの重みで、少したわんでいる。
そのトレーをテーブルに滑らせながら、ス・・と紫苑が教子の横に座った。
紫苑は外側になり、ちょうど、教子の出口を塞ぐような形だ。
教子は、「あれ?カオルさんの隣じゃないんだ」と思った。
ま、別になんでもいいけど・・
ボックス席で美人に囲まれながらハンバーガー。
ぐふ♪最高♪
教子は、もはやなにも考えずに美女に囲まれたディナーを楽しんだ。
・・・楽しもうとしたのだが。
ガバッ!
教子「うぼっっっ!!!」
期間限定の照り焼きトマトバーガーに、夢中でかぶりついていた教子の体が、一気に体勢を崩した。
なに!?
なにかの凄まじい力で、いきなり右側に引っ張られたのだ。
右側・・つまり、紫苑の側に。
なんだか、体の下側、つまり下半身にグイッ!とすごい力が掛かっている。
教子が、その場所を確認すると・・・
・・・紫苑の、細いクセに肉付きの良い真っ白な脚が、教子の膝頭に絡みつくように乗っかっていた。
まるで、関節技に持ち込もうとする格闘家のようだ。
教子 「へ・・・?」
バーガーの中のトマトにかぶりついている最中に、いきなり右に引っ張られたので、教子の顔の左半分は赤く染まって、ピエロのようになってしまっている。
わけがわからず、教子は視線を、自分の下半身(および紫苑の膝小僧)から上にあげると・・
・・・そこにあるのは、もちろん、生徒会長の整った顔。
モデルやアイドル顔負けのタレント顔だ。
その顔が、今は・・・・濃厚な熱気を放っていた。
教子 「か、かいちょお?」
紫苑の目は、ねっ・・・とりと、蕩けている。
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