わからせ! もののけ生徒会の調教師1年生

水都 おこめ

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2章

18 路地

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カオルとともに、いかがわしい路地を行く教子。

教子 「ドキドキ・・」

カオル「・・・・」

もしこれが、学園からの帰り道であれば、大人っぽくて優しい美人のお姉さんとのわくわくデート気分なのだが・・


ホスト風の男「(ニヤニヤニヤニヤw)」

ケバいギャル「なにあれ、イメクラ?wそれとも神待ちってやつ?w」

イカツい男 「お前、イジってこいよwウチにスカウトしてやれw」

・・・・完全に招かれざる客だ。



だって、セーラー服なんだもん・・・。

女子高生なんだもん。

はっきり言って浮きまくっている。

プッカプカ。

このまま浮かんで浮かんで空に舞って、紫苑のもとへと飛び立ってしまいたい。


チンピラ1 「おい、あの背の高い方、けっこういいんじゃねえか?」

チンピラ2 「あぁ・・背の高いほうはイケるな・・」


低いほうはダメなのか。

ちきしょう。

すこし歩くだけで、無遠慮な視線どころか、猥雑な声まで聞こえてくる。

やっぱり、入るんじゃなかった・・と、教子は思う。

教子 「(でも・・)」

内心、実はそんなに緊張してはいなかった。


その理由は、隣を歩く存在。


カオル「・・・・」

カオルは、落ち着き払っている。

教子 「・・・・」

そう、大丈夫よ・・・。

こっちには、獣人もののけのカオルさんがいるんだから。

イザとなったら、"そらをとぶ"からの"いあいぎり"でチンピラなんて、真っ二つ。

ふふん、と教子が不敵な笑みを浮かべる。

カオル「?」





おっさん「あの・・すみません」

いきなり、この場にはあまり似つかわしくない、大人しそうなおっさんが話しかけてきた。

教子 「・・・あ、はい?」

その、あまりに"普通"な雰囲気に、普通に返事を返してしまう教子。



おっさん「そっちの眼鏡の子、ホ別5でどう?君は手配師?それとも、2人一緒の抱き合わせ的な?」

教子  「わ、わ、わ、私たち!そ、そ、そ、そういうんじゃないんで!!!」


おっさんの言い出した業界用語の意味はよくわからなかったが、なんだかヤバそうな気がしたので教子は足早に立ち去った。

そして、意味はあまりわからなかったが、ものすごく失礼なことを言われた気がした。

おっさん「なんだよ・・5じゃ不満なのかよ・・」

捨てセリフを吐いておっさんが遠ざかっていく。

くそっ、こっちはこんなに荷物持ってて、そして疲れとるんじゃい・・。




ダメだ。

こんな通りにいたら、身も心もすり切れてしまう。

たった、10分かそこらで、こんなにもココロがささくれ立っている。

教子は、自分は夜の女王になってこの真宿しんじゅくのテッペンをとるなんて絶対無理だな、と感じた。

・・・精神的にね。

決して肉体のポテンシャル的な理由ではない。

と信じていたい。





・・・・しかし、正直・・・

・・・この場にセーラー服でいる自分たちにも非はある。

場違いなこと、この上ない。

それこそ、野生の動物たちがひしめくジャングルに、テクテクとスーツ姿の営業マンがスマホとビジネスバッグをぶら下げて歩いているようなものだ。

ザ・ミスマッチ。

教子は、とにかくこの通りを速く抜けて、紫苑に合流することに集中しよう、と考えた。

カオル「・・・・・」

カオルは、相変わらず無言のままである。



そして、教子とカオルが無言で足早に歩を進めていると、

男  「・・・ちょっと、そこの君たち」

また男が、話しかけてきた。



教子 「・・・私たち、"そういうの"じゃないんで(ギロッ」

また失礼なことを言われると思い、思わず"いかりのまえば"をむき出しにしてしまう教子。


男  「は?いや、どういうのかはわからんけども・・」

男  「大丈夫?道に迷ったんじゃない?」

教子 「え?」

さっきの男に比べて、親切そうな顔をしていた。

・・・・ように、教子には見えた。



男  「こんなところ歩いてたら、危ないよ。しかもセーラー服で・・・」

教子 「あ、はい・・」

いや、これには事情があって・・と教子が言いかけると、

男  「よかったら、ボクが案内しようか?」

教子 「あ、えーと、私たち友達とはぐれちゃって・・」

男  「こんな場所で?もっと大通りに出た方がいいよ。この先はどんどん迷路になってくよ」

本当に?

と、いうような視線で教子は、自分の横にいる超能力を持つナビゲーターカオルを見る。

カオル「・・・・」

なんと、カオルも教子を見返してきた。






そうか・・。

カオルは、紫苑の居場所を"聴き分ける"ことは出来ても、このあたりの路地に関しては、もちろん明るくない。

ましてや、紫苑はトラの脚力でそこら中を徘徊している。

たぶん、私たちよりも速いスピードで。

カオルも、紫苑の居場所はわかっても、たどり着き方の詳細までは、知らないのだ。

ましてや、入り組んでいる繁華街の路地・・・。

抜け道を把握できていなければ、かえって遠回りになるかもしれない。




教子  「(いや、でも・・・)」

見知らぬ人について行っちゃいけない。

教子が6歳の時、初めてひとりで外に出たときから言われていることだ。

しかも、こんないかがわしい路地で・・・。

まぁ自分たちから入ったのだけど・・。






カオル「・・・・行きましょうか」

教子 「えっ!?」

思いもよらないカオルからの提案。



カオル「・・・この人たちから、邪気を感じないの」

カオル「正確には、この人たちの声音と、心拍数と、あと色々・・から」

教子 「あ・・・」

梟の"超"聴力。そして、"超"知覚。

ある種の第六感シックスセンスに通ずるほどの感覚。

教子 「なるほど・・じゃ、安心ですね」

カオル「ええ・・・恐らくは」

教子は、男たちよりも、カオルの知覚を信じることに決めた。

男  「荷物重そうだね、ちょっと手伝うよ」

教子 「あ・・すみませ・・」

教子が返事するより早く、男は教子の荷物をスッ、と軽そうに持ち上げる。

その動作は、とてもさりげなく、自然だった。

男  「こっちだよ・・・大丈夫。そんなに歩かないから」

教子たちは、見知らぬ男についていく。





? 「・・・・・」







------------------



男はズンズンと進んでいく・・。


教子 「まだ歩きますかね・・?」

カオル「・・・」

男  「大丈夫。そろそろだよ」

教子 「はぁ・・」


教子たちは、男に導かれるままの道を、行く。



------------------



男は、さらにズンズンと進んでいく・・。

教子 「えーっと・・そろそろ・・?」

カオル「・・・・」

男  「・・・・」

教子が(けっこう、歩いたぞ‥?)と訝しんでいると、

ピタッ

急に、男が不意に歩を止めた。

男  「・・・はい、到着」

教子 「えっ?」

教子 「いや、到着って・・・ここ、まだメチャメチャ路地の中・・」

教子が、言い終わるや否や。


男2 「・・・」

男3 「・・・」


不意に、路地の隅から男がさらに2人、浮かび上がるように、出てきた。


教子 「あー・・これは・・」

カオル「あ・・」

マジか・・・。

こんな展開になるとは。

いや、予想は少ししてたけど。

男  「・・・そういうことなんだよね」

男2 「・・・」

男3 「・・・」

男の目が、先ほどとは違う、暗い色を見せていた。






あちゃー・・。

数分前までの自分を叱ってやりたい。

しかし、教子は動揺していない。

秘密兵器があるからだ。

いや、いるからだ。

教子の隣に。

カオル「・・・・」


ふふん、こっちには獣人もののけのカオルさんがいるのよ。

あんた達なんざ、カオルさんのエアカッターで真っ二つ・・。


教子 「(さぁ、カオルの姉貴!やっちゃってください・・・!)」


と、心中で叫びながら、教子が振り向き、カオルの顔を見ると・・

カオル「あ・・あ・・」


その顔に浮かんでいたのは、数瞬前の教子と同じ恐怖の色だった。






・・あれ?

・・・・・カオルさん?

カオル「どうしよう・・会長・・」

カオルの顔には、以前に人間にやられた仕打ちを・・トラウマを思い出しているような、恐怖の色。

・・・え?

なんで?




事ここに至って、ようやく教子は一つの考えにたどり着く。

・・・そうなのか。

獣人もののけといっても、みんながみんな、人外の身体能力を備えているわけではないのだ・・。

いや、カオルも持っている、超知覚を。

しかし・・恐らく、こんな状況では役に立たない。

戦闘能力は、教子と同じというわけだ。





これは、私が『クリック』で闘うしか・・

・・・・どうやって?

『クリッカー』を用いての『クリック』は、人間にはもちろん、効果なんて、ない。

つまり、この状況は、見ての通り・・

男達に路地裏で囲まれた、かよわい女子高生2人。

ただのそれだけ。





やばい。

どうしよう。

絶体絶命。

カオルは、膝を震えさせている。

顔は、同じ危機的な状況に置かれている教子でさえも、心配したくなるような、恐怖そのもの。

いったい、以前どんな仕打ちを受けたのだろうか?

教子よりも、怖がっている。

整った顔立ちが、青ざめて・・ただでさえ白い肌は、血の気のまるでない陶器のようだ。

本当に怖い時に、声なんて、出ない。

私たち、どうなるの?

・・・売り飛ばされる?

いや、その前に、なにを、されるのだろう。

売り飛ばされる(?)その前に。

男  「さて・・と」

男たちは、教子たちを脅すような声さえ発しない。

それが、この男達の場数の多さを物語っていた。





教子が、唯一すがれる存在のカオルは恐怖に染まっている。

男達が、近づいてくる。

その無表情だった顔に、喜悦の色がさした。

明らかに、これからの"お楽しみ"の時間を想像しているのだ。

この世の汚らしさをまとめて、顔の形に固めて焼き上げたような、ゲスい色。

なんて、醜いんだろう。

教子は、純粋にそう思った。

アケミのあの純粋な真っ白な笑顔。それとは、似ても似つかない。

同じ成分タンパク質で、出来てるハズなのに。

教子 「人間って・・・」

教子 「人間ってなんて・・・」

教子 「なんて・・・醜いんだろ・・」

思わず、声にも出していた。



しかし、声に出したからと言って、何かが変わるわけでもない。



ふと、カオルのほうをみてしまう。

もし、なにか非道ひどいことをされるにしても、せめて自分の目に映る視界だけはキレイなものだけにしておきたい。

そう思ったからだ。

やはり、美しいカオルの横顔。

かなり青ざめていたが。




男たちがさらに近づいてくる。

もうすぐそこだ。

男が汚らしい顔が、汚らしい笑みのせいで、さらに汚らしくなる。

そして、その汚らしい腕をカオルと教子に伸ばそうとしたとき。


教子の目に映るカオルの顔が恐怖から、絶望に変わり・・

・・・・・そして、驚愕に変わった。



教子 「・・・え?」

教子も振り向いた。

カオルの視線の行く先に。



その視線の先。

立っていた。

来てくれてたんだ。

私たちの近くまで。






紫苑 「やっぱり、カオルは私がついてないとダメねぇ・・」


かれこれ30分以上、ずっと探し求めてた人。

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