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第一部 アリア編
果てしない空の下
しおりを挟む空の彼方から四騎の騎竜が姿を現すと、アリアは自分の竜に抱きつき別れを告げた。グウッと鳴くから「グウ」、ガアッと鳴くから「ガア」と名付けた二頭竜は悲しげに頭を垂れた。
地面に膝をつきうつむくと、ズシンと四度の地揺れとともに四大公たちがそれぞれ騎竜から飛び降りた。
「こたびの働き、大義であった」
「うむ。よくやった」
「おかげで辺境領はすっかりもとの通りだ」
「だがそれとこれとは別問題」
アリアは黙って頷くとその言葉を待った。
「腹に子は宿っておらぬな?」
「……はい」
「では本日、期限満了によって約束を終結する」
「心残りはないか」
「ありません。この子の世話だけしていだければ満足です」
手振りで背後のグウとガアを示すと、四大公たちは厳かに頷いた。
「では立つがよい」
手に魔力をため込んだ四人の前に無防備に立ち上がった。
目を閉じ、あの日見た魔王の笑顔を脳裏に思い浮かべる。
「安らかに眠れ、愚かなる人間よ」
四大公が息の合った動きで一斉に魔力を撃ち奮うと、アリアの意識は消失した──
────いや、するはずだった。
虹色に輝くシールドが突如としてアリアの前に立ちふさがり、四大公の魔法を弾き飛ばした。その衝撃に地面が深くえぐれ、土ぼこりが辺りを覆う。
風によってそれらが霧散し傷ひとつないアリアの姿が現れると、四大公たちは目を剥き口々に罵りの言葉をはいた。
「なんだ今のは!」
「娘! 抵抗する気か!」
狼狽し激昂する四大公にアリアは苦笑した。
「私はなにもしておりません。これは呪いのせいなのです」
「呪いだと?」
「どういうことだ」
そこでアリアは自身にかけられた呪いの説明をした。愛する男のため以外では命を落とすことがないのだと。
「殺せないのでは仕方ない」
「このまま生かしておくというのか!」
「放置はできぬ!」
「では城に戻すか?」
「「「ならぬ!」」」
しばらく四人は議論を交わしていた。
「惚れた相手のために命を落とすというのなら、魔王様に災い在りし時に、身代わり、または捨てゴマとすればよい」
「なるほど」
「ではそれまでどうする?」
「目の前でうろちょろされては目障りだ」
「では封じるとしよう」
一人がそう言うと懐から大粒のエメラルドを取り出した。それをアリアに向けてサッとふる。
するとアリアの体は光の粒子に姿を変え、エメラルドの中に吸い込まれていった。
「これでよい」
「では帰るとしよう」
「それはどうする」
「持ち帰り、装飾品に加工して魔王様に献上する」
「御身に触れされるのか」
「いや、マント留めのブローチかカフスでよいだろう」
四大公はそれぞれの騎竜にのり、アリアの二頭竜をしたがえて魔王城へと帰還した───
第二部 魔王編へ続く
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