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終章 シーララ門楼
2.
しおりを挟む「館には、慣れたか?」
「ええ」
「不便は」
「ありません。――だいじょうぶですよ、そんなに心配なさらなくても」
「そうか」
明日の結婚式の準備が整い、館――門楼内外は静まり返っている。頬と頬を合わせたまましばし、ふたりは目を閉じた。
攻城戦を想定した武張った設備が搭載された門楼を居館としたのは、ここピネッキ城が対魔界の防衛拠点として堅固さを増したのだと示すだけでない。示威にもさまざまな相がある。いざ魔界からの攻撃を受けたときに、真っ先に矢面に立つのはアウヌラ国の姫エステルであると示す意図もあった。
――人質としての価値なんて、きっとないけど。
どちらかといえば今のエステルは魔人たちから、呪具師としての腕を買われている。魔人たちは自力で大砂龍の呪いを払う術をもっていない。魔界からの診断の要請や注文を引き受けるエステルがいなければ魔人たちは日々の睡眠すらおぼつかないわけで、怪物級ゴーレムの圧倒的武力をもってすれば制圧は可能でも軽々に攻め込むわけにいかない。エステルに何かあれば眠ることができなくなり自分たちが一気に滅亡しかねないからだ。
「戦略と交易まできみとの結婚に持ち込んで、すまない」
「謝らないでください」
十年、二十年だけを考えればニムーブ涸沼をふたりで出た一年前のあの日、ともに姿を隠すことも不可能ではなかった。
――ふたりきりもきっと、悪くない。
ときどき、エステルは想像に耽ることがある。
広大なピネッキ魔境の片隅でルドとふたりきり、隠れ住む。魔界だの教会だの、誰に遠慮する必要もない暮らしは日々厳しく静かで寂しくてもきっと、楽しい。
分かっていてルドは現在を選んだ。
どんなに努力しても百年後、ルドはこの世にいられない。自分の死後の安寧を視野に入れてルドはひとつひとつ、障壁を取り除くために動いている。
「……」
格上の国の貴族だったルドとの身分差は逆転してしまった。王族だといわれてもそれらしい暮らしもしたことなどないのに。
「いつでも、逃げようと思えば逃げられるぞ」
耳もとでルドが囁いた。低く丸く、艶のある声だ。体の奥で燻っていることを忘れていた熾火に似た欲望が熱を帯びる。
は、ふ。
息が上がりそうになるのをこらえ、エステルは小さく首を振った。
「残念だ」
「できも、しないのに」
「まったくもってそのとおりだな」
笑い声が耳をくすぐる。
「ん、っ」
うなじへ降りた唇が後れ毛をかきあげふたたび耳へのぼってきた。
「いけません。そんな、ところ……」
くつろげられたガウンの胸もとからルドの手が忍びこむ。下から乳房を支える両手がリネンのネグリジェ越しに裾野からのぼってきた。
さす。
触れるか触れないか、乳輪の縁をなぞる指が頂きを避けゆるりと乳房の裾野へと戻り、またゆるゆるとのぼっていく。
「ん? どこが駄目?」
「もう」
ふふ。
小さく喉を鳴らす笑い声に耳をなぶられてエステルはぴく、と肩を震わせた。その拍子にルドの指が乳首を掠める。
「あ、……っ」
ガウンをくつろげいいように乳房を愛撫する悪戯な手を止めようとするも、エステルの体はいうことを聞かない。
「痕つけちゃ、駄目」
「気をつける」
熱い唇がもどかしげに首筋から耳もとをなぶる。
ぴく、ぴくり。
まだ触れられてもいない秘所がわななき、エステルは小さく喘いだ。後ろから覆い被さるルドが口づける。
「感じやすくなったな」
エステルを抱き上げると、ルドは寝室へ向かった。力の脱けた体からガウンとネグリジェが剥ぎ取られる。両足をすり寄せ胸を腕で隠すエステルを見つめ、ルドは青い目を細めた。
噛みつくように口づけられる。ルドは獣の唸りに似た呻きを飲み込み
「ステラ……」
溜め息をついた。頬、顎、首すじ、鎖骨と下へ下へ、肌を熱い唇が這う。腰を撫でていた大きな手が
ぐい。
エステルの両足を開いた。
「これは、たまらないな」
目の前で花びらに似た秘唇が蜜をたたえほころびかけている。
「もう、だいじょうぶなのでその、お好きに――」
「ああ、好きにする」
「違っ、あっ」
前戯はじゅうぶんだといおうとしたエステルの秘所にルドは口づけた。唇がぽってりと赤みを帯びた秘唇に
ちゅ、ちゅ。
吸いつく。潤みをたたえる蜜口、その上でふるえる小さなふくらみを避け、ルドは肌に唇を這わせた。
「焦ら、さない、で……っ」
「好きにしていいって、いったじゃないか」
身を捩ろうとするエステルの腰をがっちりと抱き込み、ルドが頭をのぞかせはじめた淫芽を花びらごと
ちゅむ。
唇で包む。
「…………っ!」
エステルの足先がきゅきゅう、と丸まった。
「力を抜いてごらん」
「あ、んっ、や、ぁ」
「どうして」
ルドが顔を上げた。唇から解放された淫芽がじんじんと熱を帯びる。
「好きだろう、ここ」
「違、……っ」
「そうだったか? 確かめてみよう」
ふたたび花びらの合わせめが唇に包まれた。ルドとエステル、どちらのものともつかないぬめりをまとう淫芽が
ちゅくり。ちゅくり。
やわらかく吸われる。やさしく穏やかな愛撫なのに、体はどんどん昂ぶっていく。
「あ、っぁ、……っ」
エステルはかくかくと体を震わせ、のぼりつめた。
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