バロッコ

〈十五〉

「や、ぁっ、ん、違、うの……きもち、いいの、駄目ぇ……」

　止まらない。
　珠緒は不格好に腰をかくかくと前後に震わせた。今にも弾けそうに漲みなぎりぴくぴくと跳はねる肉棒でクリトリスがもみくちゃになる。

「ん」

　乳首をしゃぶりながら大助が珠緒を見上げた。いとしげに潤んだ目が珠緒を見つめ、そしてゆっくりと悟のほうへ向く。
　珠緒も腰をすりつけながら悟を見た。
　いやいやと、緩慢に顔を横に振っている。

「やだ、なかがいい、なかで、きもち、いく、……なりたい、んっ、たま、お、たま、っんぁ、ぁ……っ」

　絞り出すような呻きとともに悟の肉棒がひくつき、避妊具の中に白濁を吐き出した。


「疲れただろうけど、もう一回だけ……」

　手足の拘束を解かれた悟がベッドから降りのろのろと射精の後始末をするのにかまわず、大助は横たわった珠緒を後ろから抱き、新しい避妊具をつけた肉棒を秘所へ挿入れた。

「……ん」

　やはり大きい。けれど、一度目よりいくぶんなめらかに珠緒は大助を迎え入れた。

「痛くない？」
「ん、いたく、ない……」

　浅い場所を解すように抜き差しされる。
　内側から押し広げられる苦しさが強かったはずなのに、後ろから大助に包まれるように抱かれていると刻まれた快楽が緩やかに戻ってきた。

「ゆっくり、して」
「そうしよう。気持ちいいよ」
「私も……」

　少しずつ、内側を広げながら太く硬く、熱いものが奥を目指す。じゅぶじゅぶと蜜を垂らしながら粘膜が怒張に縋りまとわりついた。
　ぞくり。
　快感がこみあげてくる。背後に密着する大助も

「ああ……」

　溜め息をつく。
　掴んだティッシュペーパーで股間をごそごそ拭う悟の背中を眺めながら珠緒はつぶやいた。

「さっき……」
「ん？」
「欲しいって、いった」

　好きだと、なんとしても欲しいと、悟の上で勝手に快楽に耽ふける珠緒に大助はいった。珠緒の快楽を煽りながらそういった。

「怒ってる？」
「怒って、ない」
「よかった。きみが気持ちよくなってくれればそれで、俺は満足だけどできればいつか――ここが」

　大助が耳もとに口づけながらゆるりと腰を揺する。

「俺のかたちになればいいって、思ってる。好きだ。ひと目で好きになった」
「だったらなんで、あんなこと……」
「きみはこれでおしまいにするつもり、だろう？」
「…………、っ」

　張りつめかちかちになった亀頭が最奥にたどりついた。

「もっと強く、しても平気」
「しないよ。いっただろ、ゆっくりするって。それに――」

　ぐりり、と凶悪な気配が最奥で膨れあがる。しかしすぐにやさしい愛撫に戻った。

「俺は今日を最後にするつもりはない。きみのことだ、あいつと俺の仲をこじらせたくないとかなんとか、気にしているんだろ？」
「私のことなんて、知りもしないくせに……っ」
「知らない」

　濡れる粘膜を
　にゅくく、にゅくく。
　ゆっくりと肉棒が前後する。あたたかな手に導かれて珠緒は振り返った。潤んだ視界に大助の精悍な顔が映る。情欲にまみれ喘ぎをこらえる男の雄々しい顔は歪み、それなのに美しかった。
　求められるまま口づけに応える。

「……知らなくても、分かる。俺と悟が今まで大事にしてきた関係を壊したくないと思ってるんだろ？　きみはそういうひとだ」

　俺にしろ、俺を選べ、俺だけの女になれといわれたらきっと、どんなに熱く口説かれても関係を続けられないだろう。悟と出会う前ならともかく、――いや、悟を介在させずにふたりの関係が成り立つとも思えない。
　拗れているのは悟と大助の関係だけではない。出会ったばかりなのに、大助との関係も捻ねじれ歪んでいる。

「さっき俺としている間もきみは悟を気にしていた」
「ごめ、んなさ……い」
「いいんだ。きれいだった。後ろの、見えない悟を気にして――悟に視られて感じるきみはすごくきれいだった」

　肉棒が力強く最奥を抉えぐった。

「……ん、ぁっ」
「好きだ。でも好きになったきみは、俺だけのものになってくれないきみなんだ」

　頬に唇に熱い口づけが降る。
　大助の手が珠緒の片足を上げた。悟がベッドにあがり、珠緒の足の付け根に顔を寄せる。

「おい大助、やさしくしろよ。切れたら痛くなっちゃうだろ」
「努力、する」

　息を乱す大助の唇から解放され顔の向きを戻すと、目の前に悟の股間があった。射精直後で刺激を与えられていないはずなのに勃起している。何度も睦み合って見慣れた肉棒を珠緒は新鮮な気持ちでしげしげと眺めた。

「さと、る、……やめて」

　大助に貫かれている場所に乱れた吐息があたる。

「悪かった。お願いだから、許して。もうあんなことしない。だから許して。――ああ、すごい。すごいよ、珠緒」
「あ、んっ、や、……や、視ないで、ぇ」

　秘所を貫く太く硬いものに押し出されてクリトリスが剥き出しになっていた。
　吐息に擽くすぐられクリトリスが灼けるように疼く。そして強い快楽に啼く珠緒の唇に
　むにゅ。
　弾けんばかりに勃起した肉棒が押しつけられた。

「視たい」

　忍耐強く最奥をこねながら大助が囁いた。手が乳房を掬すくい、くりくりと乳首をなぶる。

「きみがどうやってあいつを愛するのか、視たい」
「だいすけ、さ、ん……」

　視られている。
　分かっているのに、珠緒は唇に押しつけられた肉棒に
　ちゅ。
　口づけた。

「あ、ぁっ、あっ、た、まお！　う、っああ」
「あ！　んんんっ」

　珠緒が亀頭を頬張るのと同時に、悟も大助に貫かれた秘所にむしゃぶりついた。最奥を力強く突かれ、クリトリスが唇で食はまれ舌で嬲られる。
　体中が快楽に灼やかれている。
　夢中で互いを貪り合ううちに
　きゅううう。
　搾り取るように粘膜が大助の肉棒を抱き締める。

「――――ッ」

　つながったまま三人はそれぞれに昇りつめた。