甘責めがつ子の惑溺愛へのナローパス

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がつ子、はしゃぎ過ぎの代償を払う

1.

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――ちょっと、はしゃぎ過ぎた。

 月曜朝、満員電車の中で樹子は背中を丸めた。
 結局押し切られて前夜遅い時刻まで広居主任宅で過ごした。ただ流連いつづけしただけではない。時間を惜しみ互いを貪り合った。

――困ったな。じんじんする。

 はしゃぎ過ぎの代償が乳首にきている。
 恋人との夜ではしゃぐとなれば、見えそうで見えなそうなしかし見え見えの場所に熱い接吻の痕を残してしまったり腰ががくがくしてしまったりするものだが、週末の樹子と広居主任の場合は違う。まず俯きバナナ問題が解消されていないため腰ががくがくになる類いの行為とは無縁であるし、相手が年上で大人だからか、見え見えの場所に鬱血痕を残して興じるようなこともない。樹子は熱い接吻の痕をつけられるのでなくつけるほうがぐっとくるがしかし色白マッチョの美しい肌を傷つけるのがはばかられてやめた。
 そもそも広居主任は恋人ではない。
 なのに延々と互いを貪り合うなど、どうかしている。

――でもすごく、楽しかった。

 思い出すと頬が緩む。広居主任を絶頂に導いた達成感と満足感だけでなく乳首もたいそうよかった。乳首そのものの色と形状もさることながら素晴らしかったのは感度だ。未開発だったのが嘘のようなポテンシャルの高さには驚く。あまりにかわいい乱れぶりに、ついつい樹子も求めに応じて乳首の愛撫を許してしまった。挙げ句、羞じらいながら樹子の乳首をしゃぶり甘えるという明後日方面からの攻撃があろうとは思いも寄らない。かわいい。かわいすぎる。見た目はオラオラ系美ゴリラのくせに。

「どうかしたか」

 頭の上から気遣わしげな声がする。俯いて緩む顔を隠そうとする樹子の前に立ちはだかる紺のネクタイに白のシャツをまとった壁、でなく広居主任だ。同じ路線を利用する樹子の乗車位置を覚えた主任はいっしょに通勤するようになった。女、しかも若い女となると満員電車に乗るのにそこそこの苦労がある。突き出される心太ところてんのように次々とやってくる電車の乗車タイミングまでは合わせられず毎朝とはいかないが顔見知りといっしょだと心強い。寄らば大樹の蔭とはよくいったものだ。広居主任のような強そうな巨漢同伴だとそれだけでかなり楽になるのには驚いた。

「いいえ、問題ありません」

 きりりと表情を取り繕い車両の壁にもたれ、樹子は目の前の上司を見上げた。
 視線を落としふたたび物思いに耽る。
 驚きといえば、上司の乳首は位置からして元カレと違った。華奢だった元カレの乳首は胸のぺったりなだらかに薄い盛り上がりの中心近くにあったと記憶している。しかし広居主任のぱっつんぱつんにみっちりしたふくらみの中央に乳首はない。雄っぱいのどちらかというと下、ほんの少し外向きの位置に縮こまっていて、ちんまりしたサイズも相俟あいまって愛らしかった。

――そう、ちょうどここ。かわいいんだよね。いじってるうちにぷっくりしてきて。

 視線の先、スーツの上着を脱いだ上司のシャツに包まれたぱつんぱつんの胸板にぽっちりと突起が浮き上がっている。

――ん? んん?

 なぜに突起? 透け乳首?

――まさか、主任も?

 樹子は狼狽うろたえた。はしゃぎ過ぎの代償が乳首にきているのは自分だけではなかった。――そんなに撫でちゃった? いやいや、撫でただけではない。舐めた。吸った。しゃぶりまくった。しまった。はしゃぎ過ぎた。

「痛みます?」

 壁に手を突き満員電車の圧から守ってくれている広居主任に樹子は唇の動きだけで話しかけた。ここ、と場所を示そうと指先でシャツに浮いた突起をそっと撫でる。

「……っ」

 両手を車両の壁に当てたままの巨体がびくり、と震えた。驚いて見上げると広居主任がぽ、と上気した顔を左右に振っている。

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