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第一章 『誰が為の異世界』
06 『意味なき言葉の意味』
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この短い時間で何度驚けば良いのか。
「…………」
驚きのあまり言葉が出ないというのはこういう状態のことを指すのだろう。
おばあちゃんとの約束を守ることを改めて誓ったその後。
僕はおばあちゃんの『誕生日の贈り物を部屋に用意した』という言葉に促されるままに、自分の部屋に戻った。
そこで僕が見た物は――
「一、十……何十冊ぐらいあるんだろう?」
部屋の半分位以上を占拠する、今までに見た事の無い程の大量の本の山だった。
僕がこの新居に最初に足を踏み入れた時には、こんなの影も形も無かったのに……。
おそらく僕が挨拶回りをしている間に用意したのだろうけど、それにしても多い。
うず高く積み重なる本の山は、床はおろか寝台の上にまでその範囲を広げていた。
とりあえず僕は落ち着いて本が読めそうな、床の表面がかろうじて露出している場所にゆっくりと移動する。
あまりにも非現実的過ぎたその光景はまるでこの部屋だけ僕が馴染みのない別世界のようだった。
そんな感慨を抱いている内に目的地に到着した僕は、目の前にごろごろと転がっている本をいくつか手に取る。
「えーと、『モームの生態』、『浮遊島の謎』、『アーク大陸進化論』……凄いや、おばあちゃんがこんなに本を持っていたなんて……」
確かに安楽椅子に腰かけるおばあちゃんはいつも膝に本を置いて生活していた。
それでもその本が全て違う種類の本だったとは夢にも思わなかったのだ。
表紙に絵が描かれているものや、いつの時代に作成されたか分からないような古めかしい本といったようなものも散見している。
大きさも大小様々であり、僕にはそれらがまるで宝の山のように映り込んだ。
「どれを読もうかな……」
これだけの数の本があるとなると、正直言ってどれから手を付けて良いのか大いに悩む。
生まれて初めて自分の意思で読む本だ。
ここは慎重に決めていきたい。
「『アーク大陸七不思議』、これなんか面白そうだなぁ……うん?」
本の山に背を向けて胡坐をかいて座っていた僕を覆い隠している大きな影にふと違和感を覚えた。
結晶核が灯す明かりで生まれたその影は、執拗以上に大きく揺らめき始める。
何事かと振り向くと、影に呼応するかのように本の山そのものもグラグラと揺れていた。
もしやこれは……危ないんじゃあ……
身の危険を感じすぐさまこの場から離れようと立ち上がるが、遅かった。
「うわあああああ!!」
山は勢いよく崩落した。
どうやら僕が手に取った『アーク大陸七不思議』は山脈の中腹を支える役割を果たしていたようで、それを取っ払ってしまったことで土砂崩れが発生してしまったようだ……。
物量に押しつぶされた状態からなんとか這い出ることに成功する。
だけど、辺り一面に本が散らばりもはや収拾がつかない状況だ。
元凶の『アーク大陸七不思議』もその影響を多分に受け埋もれてしまったのは残念と言わざるをえない。
「それにしても本当に凄い量の本だ……」
一つ一つはたとえ小さくても、それが束となればこうも攻撃力を秘めた武器になるのだと思い知らされた。
これはどんなことにも通じることなのかもしれない……。
頭をさすりながらそんなどうでもいいことを考えていると、
「……うん? これは……」
偶然にも本の山が崩れてしまったことで露わになった一冊の本に目が留まる。
一見すると茶色い背表紙で覆われたただの普通の本だ。
だけど表紙に書かれている文字に僕は見覚えがあった。忘れるはずがない。
「これってアパン語じゃないか……」
『僕の人生にとって大きな意味となる』
あれだけ使い道のない無価値な言語と決めつけていたそれとのご対面は。
僕が最初に読む本をこれにしようと決定するには勿体ないぐらいの動機であり。
気が付けば僕は、緊張して震える指で『アーク大陸冒険起譚』と書かれた表紙を捲っていた――
「…………」
驚きのあまり言葉が出ないというのはこういう状態のことを指すのだろう。
おばあちゃんとの約束を守ることを改めて誓ったその後。
僕はおばあちゃんの『誕生日の贈り物を部屋に用意した』という言葉に促されるままに、自分の部屋に戻った。
そこで僕が見た物は――
「一、十……何十冊ぐらいあるんだろう?」
部屋の半分位以上を占拠する、今までに見た事の無い程の大量の本の山だった。
僕がこの新居に最初に足を踏み入れた時には、こんなの影も形も無かったのに……。
おそらく僕が挨拶回りをしている間に用意したのだろうけど、それにしても多い。
うず高く積み重なる本の山は、床はおろか寝台の上にまでその範囲を広げていた。
とりあえず僕は落ち着いて本が読めそうな、床の表面がかろうじて露出している場所にゆっくりと移動する。
あまりにも非現実的過ぎたその光景はまるでこの部屋だけ僕が馴染みのない別世界のようだった。
そんな感慨を抱いている内に目的地に到着した僕は、目の前にごろごろと転がっている本をいくつか手に取る。
「えーと、『モームの生態』、『浮遊島の謎』、『アーク大陸進化論』……凄いや、おばあちゃんがこんなに本を持っていたなんて……」
確かに安楽椅子に腰かけるおばあちゃんはいつも膝に本を置いて生活していた。
それでもその本が全て違う種類の本だったとは夢にも思わなかったのだ。
表紙に絵が描かれているものや、いつの時代に作成されたか分からないような古めかしい本といったようなものも散見している。
大きさも大小様々であり、僕にはそれらがまるで宝の山のように映り込んだ。
「どれを読もうかな……」
これだけの数の本があるとなると、正直言ってどれから手を付けて良いのか大いに悩む。
生まれて初めて自分の意思で読む本だ。
ここは慎重に決めていきたい。
「『アーク大陸七不思議』、これなんか面白そうだなぁ……うん?」
本の山に背を向けて胡坐をかいて座っていた僕を覆い隠している大きな影にふと違和感を覚えた。
結晶核が灯す明かりで生まれたその影は、執拗以上に大きく揺らめき始める。
何事かと振り向くと、影に呼応するかのように本の山そのものもグラグラと揺れていた。
もしやこれは……危ないんじゃあ……
身の危険を感じすぐさまこの場から離れようと立ち上がるが、遅かった。
「うわあああああ!!」
山は勢いよく崩落した。
どうやら僕が手に取った『アーク大陸七不思議』は山脈の中腹を支える役割を果たしていたようで、それを取っ払ってしまったことで土砂崩れが発生してしまったようだ……。
物量に押しつぶされた状態からなんとか這い出ることに成功する。
だけど、辺り一面に本が散らばりもはや収拾がつかない状況だ。
元凶の『アーク大陸七不思議』もその影響を多分に受け埋もれてしまったのは残念と言わざるをえない。
「それにしても本当に凄い量の本だ……」
一つ一つはたとえ小さくても、それが束となればこうも攻撃力を秘めた武器になるのだと思い知らされた。
これはどんなことにも通じることなのかもしれない……。
頭をさすりながらそんなどうでもいいことを考えていると、
「……うん? これは……」
偶然にも本の山が崩れてしまったことで露わになった一冊の本に目が留まる。
一見すると茶色い背表紙で覆われたただの普通の本だ。
だけど表紙に書かれている文字に僕は見覚えがあった。忘れるはずがない。
「これってアパン語じゃないか……」
『僕の人生にとって大きな意味となる』
あれだけ使い道のない無価値な言語と決めつけていたそれとのご対面は。
僕が最初に読む本をこれにしようと決定するには勿体ないぐらいの動機であり。
気が付けば僕は、緊張して震える指で『アーク大陸冒険起譚』と書かれた表紙を捲っていた――
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