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2章 罪
02 慚悔
しおりを挟むああ、やっぱり理解されないな……。
ならば、少し今風に視点を変えて話すとするか。
「えーっと、この分野、私はあまり詳しくないのだが、今風に言うとだ、
お前の先祖が消えた時点で別の時間軸に分岐していて、
その未来は複数あるうちの一つらしいのだよ。
これは少し前に知り合った友人に教えてもらったのだがね、こうゆうのをSFって言うらしい。
で、このままだと私は別の時間軸に居ることになってしまう。
だからもう一度お前の先祖の縁を絶った過去に行き、
ほんの少し違うかたちで縁を結び直すのさ。
すると、あら不思議。縁を結び直した後のお前は罪を犯してないのだよ。
って、ことなのだが理解できたか?」
などと一方的に講説したら男はこう言い返してきた。
「あんたそれ、マジでいっているのかい!? 俺はもう……、
裁判に掛けられて刑を受けるしかない、だろ……?
例えば俺が処刑になっても5人の犠牲ですむわけだ。
でも、あんたの話だと数百人以上が消えるんだろ!?
だったら俺が出頭したほうがまだマシじゃないのか?
だいたい、過去にいって俺の先祖の縁を切るって、あんた神様にでもなったつもりかよ!?」
ま、これもいつものこと。だから私はこう返すのだった――。
「いや、だから……私が神様なのだが、信じてもらえないだろうか?
その――、お前がもし私を信じてくれるのならば信仰が生まれる。
さすれば、お前の起源も容易に分かり、後始末が楽なのだが……?
どうだろう駄目か? それともまだ未練が残っているか?」
と、言われて男は神妙な態度で何かを考えている。
しばらくしてボソっと口を開いた。
「なあ、あんた……、あんたは何故俺を救おうとする?
神様だからか……? それとも、俺みたいなヤツにも情けってか?
だったらやめてくれ……俺はもう未練なんてない……。
何もない………。そりゃー、あんたの友人を殺めたのは悪かったと思っているさ。
でも……しかたないだろ、女が事切れるときの顔が幸せそうに見えちまうんだから……」
そんなことが聞きたいんじゃない………。
「いや、なんか違うな―――。んー、私が訊きたいのはそんな事じゃないのだが……」
言われて、「じゃあ、何が訊きたいんだ!!」と、男は声を荒げた。
「だからさ、お前が言ったのは二人目以降を殺害しているときの感情だろ。
私が本当に知りたいのは、一人目を殺した理由さ。
まあ『カッとなって』みたいなありふれたことかもしれないが、
それだって、それに至るまでの理由があるのさ。
まー、抽象的で分かりづらいと思うけど、そこら辺の事情があるのならば訊かせてくれないかね?」
男は黙ってしまった……。
「………。」
「俺がガキのころ、母さんが死んで……」
「それから、親父がおかしくなって……。ろくなことがなかった……」
「それでも、働けばなにかあると思ったんだが……」
「最初の女に金を騙し取られた……。そして、金を返してもらうはずが、
気が付くと其の女は俺の横で死んでいた……。なんか、いい顔をしていたなー」
「まあ、騙された俺が馬鹿なのかもしれないが……。
其の後の俺は女を殺しの対象としか見られなくなっていた。
そんな感じで殺人鬼の出来上がりだよ……。まあこれでも、
二人目以降の子達には可哀想なことをしたなと思っている。
でもまあ、しかたないな………」
罪の告白―――。
清廉(せいれん)の言葉―――。
だから、私はこの男を救う―――。
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