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2章 罪
04 神様
しおりを挟むさて……。
そろそろこいつの縁を絶ち切るか、ま…楓ともこれで会えなくなるが、
どこかで生きていてくれればそれでいい。
ああ、その前に。
「なあ川上よ、最後に言い残すことはあるか……」
と、訊いてみる。すると……。
「いや、もうなにもないよ」
「いや……あんたの後ろの子供はなんだ。さっきからずっと後ろに居るけど??」
前言撤回、こいつには強い霊感がある。私の本体が見えていたなんて……。
私は五百年以上も前に殺されて、その時に願った「死にたくない…」と。
その場にいたのがこの小梅(こうめ)だ。
小梅は私が幼いころから見えていた。私の住んでいた梅咲き山の神木の下に……。
晴れの日も、雨の日も、雪の日も、いつもいた。
そんなことだから小梅が人ではないということも数年で分かった。
数年も気づかなかった……。
まあ、小梅や私の過去は後々話すとして、こいつの霊感は想像以上だ。
私はきょとんとして「おまえ、小梅が見えているのか」
と訊くと「あんたを殺した直後から」と答えた。
こりゃ驚きだ。
とりあえず末期の言葉だ、答えてやるか。
「これは小梅と云う、本物の神様だよ。
童みたいな見かけは最初に私がそう認識したからだ。
そして私は現人神(あらひとがみ)。分かりやすくいえば小梅の憑代(よりしろ)だ。
にしても川上よ、お主なかなか霊感が強いな、なにか生まれが特殊なのか?」
「いいや、べつに……。しいて云うなら実家が神社だ。
まあ、昔から霊感みたいなものはあったよ。
墓にいけば靄(もや)のような影をたまに見たことがある程度に、
人に云っても信じてもらえんがね。
それでも、あんたを人じゃないと思った瞬間からその子供が見えるようになった……。
それでますますあんたを神だと信じたわけさ」
なんとも物分かりがいいと思ったら、それでか。
「で…そんな事でいいのか、最後の言葉だぞ?」
そう云われて、川上はしばし考え込んだ。
「んー、そうだなー本当になにも無いのだが……。
あえて云うなら、あんたともう一度会いたいな、それは可能か?」
云われて私は「ほぼ無理だ」と答えた。
「無理」と云われて川上は初めて人らしい落胆の表情をみせた。
それでも「そっか、仕方ないな」と一言。
そして……。
「それじゃやってくれ。最後に殺したのが、あんたみたいな最高の女でよかった」
「まったく……」
これが末期の言葉、いかにも殺人鬼らしい末期の言葉。
私は改めて月を確認する。今夜は満月。薄紅色の大きい月の夜。
私の通力がもっとも高まる夜だ。両の掌に気をこめるとキラキラと輝きだす。
この掌を合わせれば川上の縁は切れて消失する。
すまんな…私につきあわせてしまって……。
「お主の罪すべて私が背負おう―――」
云って、掌を勢いよく合わせた。
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