かみさまコネクト

3章 沖田畷の戦い

09 開戦

　翌日、そろそろ卯の刻(午前五時頃)になろうとしたとき
龍造寺軍が霧の中から現れた。
隆信は、輿(こし)に乗ったまま高台へ行き戦場を見渡す。

　本陣がかろうじて見えたが兵の数は分からず、
ただあまりに少ないので伏兵は在ると確信した。
それでも隆信は一番隊、二番隊を編成し中央突破を、
鍋島直茂を山側へ配置した。兵士総数六万以上、
一気に突撃し蹂躙(じゅうりん)すれば勝利は確実と隆信は確信していた。

　直茂は隆信に無理な突撃は避け、
自分と合流するまで本陣は止まるようにと諫めたが
辰の刻ごろ隆信は一番隊、二番隊を家久の本陣へ突撃させその後ろから悠々と
輿に乗って進軍を開始する。
其れを見た直茂は山側に攻めかかり、止むを得ず戦端をひらいた―――。

　山側では、足場もよく士気が高かった為ジワジワと島津勢を後退させてゆく、
中腹まで攻め上がれば、
斜面を駆け下り隆信本陣と合流ができるのだが……。

　山側から隆信の陣を見ると上手く進軍出来ず漸く一里といったところで、
大軍が固まっていた。直茂も無謀に突撃しては退路を断たれ討ち取られてしまう。
かといって、先程から伏兵のものと思われる矢玉が四方から飛んできて負傷者が増えている。
麓に多くの伏兵が居るのは確かなこと。

「このままでは不味いな……此では殿が横から討たれてしまう、
　合流を急がねば――」

　直茂は多少の損害を覚悟して部隊を足軽と騎馬に分け、
足軽隊は元来た道を戻り隆信と合流を目指した。
残る騎馬隊は山の斜面を駆け下り麓の伏兵に当たらせた。
しかし、山の斜面には竹槍が突き立ててあり騎馬隊は壊滅的損害を受けてしまう。

　一方の直茂隊は矢玉の飛んでこない所まで後退したが、
　まだ隆信隊とは随分と離れていた。