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4章 コネクト転生
05 病状進行
しおりを挟むその後、八月中旬くらいまでは38度程の発熱を繰り返していたが、
程なく呼吸が苦しくなり胸が熱く感じ、触るとチリチリ熱い。
その頃から私は姉の部屋で過ごすようになる。
まだとても暑い夏休みの午後―――。
「どうだい調子は、食べたい物があったら用意するぞ。
まあ、あれだ――。死後直ぐに蘇ると言っても、
私、小梅、お前に龍成は百パーセント別次元に飛ばされる。
神になれば味覚も変化するし、量も少なくて良いのだ。
それに神気があれば水の一杯も飲めばいい。
だから、味のある物は今のうちに食べとけよ」
「そうは言っても……。私、熱があるし全身の臓器が少し壊れているでしょ?
最近普通の食事をすると体調崩すのよ。
だから、お茶漬けと梅干し、それと水菓子がいいかな。
お姉ちゃんの漬けた梅干しがとても美味しいのよ……」
「そうかい? 私は漬けた覚えが無いけどね。まあ、得意だしあれは私の味だな。
来たときの改竄で私の存在と一緒に現れたのだろう」
「だからお前はこの時代の料理、洋食を覚えておいてほしい。
なーに、カレーやシチュウなど簡単な煮込み料理と適当な肉料理でいいからさ。
それで龍成を喜ばせてあげなさい。でも今日は材料準備するからお茶漬けな―――」
姉はそう言うと市内に買い物へ行った―――。
明日は肉料理にするそうだ。
姉は帰宅するとパソコンで料理の作り方をいそいそと調べていた。
その日の夕飯は、回鍋肉(ほいこうろう)という肉、キャベツ、ピーマンを
甘味噌で炒めた大皿料理と煮物それと味噌汁であった。
私に用意されたのは、お茶漬けと特製の梅干し、デザートは蜜豆(みつまめ)だった。
龍成などは回鍋肉を一口、ご飯を三口、甘辛い煮物で口直し、
そして味噌汁を流し込む。あっという間に電子ジャーのご飯が減っていった。
私もあまりに美味しそうだったので、回鍋肉を一口いただく―――。
とても食欲をそそる味であった。また甘味である蜜豆は姉の得意分野、
爽やかな甘さと冷たさが熱で弱った体を癒やす―――。
だがしかし、食後に居間でくつろいでいると右脇腹の辺りに鈍痛が走る―――。
最近は油で調理した物や肉を食べるとこうだ。私は姉に言って部屋へ向かう。
部屋には小梅様が居て私の異常を感じると、痛む所に手を当ててくれた。
それで今は痛みがひく―――。
翌日は姉がローストビーフを作った。
姉は「初めてだ」と言うが、柔らかくとても美味しい。
噛めば肉汁がジュワっと溢れてくる。私はレモン塩で数枚頂いた。
そして、其れがみんなと食べた最後の日になる―――。
その日の夜中から全身に鈍痛と発熱。私は姉の部屋で寝たきりになった。
九月……。新学期に私は学校へ行けるわけも無く、
高熱と痛みで体力が奪われてゆくのが分かった。
姉と小梅様の手当が無ければ、とっくに死んでいたと思う。
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