風と、海と、太陽と。 ~ Feel the Wind ~

清野 星弥

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第6章 ― 風と、海と、太陽と。ー

第3話 突然の訪問者~再来

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 今から約2時間前、愛は事前に連絡もせずに
美奈の自宅のドアを叩いていた。

 「どうしたの?こんな時間に」

 美奈は既に入浴も済ませ、白いパジャマに
厚目のピンクのカーディガンを羽織り、
まだ乾ききっていない髪のままドアを開けた。

 「ちょっと話したいことがあって」

 「えっ?今から・・・?ちょっと待っててくれる?
着替えてくるね」

 数分後、美奈はジーンズにダウンコートを着て、
ニット帽をかぶり出てきた。

 「ごめんね。お待たせ」

 あの時と同じ、誰もいない近くの公園で、
二人はブランコに座った。

 「高3の冬休みにもこういうことあったよね・・・。
もしかして昨日、 治希と会ってたこと、バレちゃった?」

 美奈が先に問いかけた。

 「そのことなんだけど、どういうつもりで治希を誘ったの?」

 「久しぶりに駅で治希を見かけて、槙野ちゃんとどうなってるのか、
治希の近況とかも聞きたかったから声を掛けただけだよ」

 「じゃあ、ドライブに誘ったのはどういうこと?」

 「そこまでバレちゃってるんだ・・・。
そっか、じゃあ正直に言うね。
私、治希のことが好きなの・・・っていうか、ずっと好きだった」

 「・・・」

 愛は「やっぱり・・・」と小さくつぶやき、
大きな目を更に丸くして美奈を見た。

 美奈は遠くを見るようにして

 「高校の時、先輩のことが好きになって、治希とは自分から
離れてしまった。治希が嫌いだった訳じゃなかったけど、
これで治希は私を嫌いになると思ってた。
 でも治希はずっと私のことを好きでいてくれたの」

 小さくブランコをこぎながらそう言った。

 「知ってる。昔、治希から聞いたから」

 愛はブランコの鎖を握る手に無意識に少し力が入っていた。

 「高1の冬に治希が縁りを戻そうって最初に手紙をくれた時も、
もう治希とは戻れないと思っていたから、すごく嬉しかった。
でも、私から治希を裏切ってしまったのに、どうしてこんなに
好きでいてくれるんだろうって思った。
 好きになっちゃいけないって思えば思うほど、
つい冷たくしちゃって、そっけない返事をしちゃったの」

 「でも治希は諦めなかったんでしょ?」

 「そう。高2の夏と、高3の冬にも治希は手紙をくれた。
私も治希のことがどうしても嫌いになれなかった。
 だから卒業する時に私から交際を申し込もうと思ってたら、
槙野ちゃんが現れた・・・。
 でも、私は勝てる自信があったの。
治希はまだ私を好きでいてくれるって・・・。
私って自信過剰だよね」

 愛は顔を上げ、しっかりと前を向いてから

 「私は美奈ちゃんに勝てると思ってなかったけど、
治希が短い髪の方が好きだって知った以上、
『やるしかない』って思って覚悟を決めて髪を切ったの」

そう言って、鎖を握る手は更に力が入っていた。


   ― 戦いの火蓋は既に切って落とされている
     あれはとうに承知してるような顔ね 
     火花の向こうに隠れてる
     彼女の一途なまなざしを
     知ってしまったその時から
     高くゴングが響いてる ― 
            『戦いの火蓋』
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