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第6章 ― 風と、海と、太陽と。ー
第4話 優越感と劣等感
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美奈はブランコを止め、愛の顔を見ながら
「きっと、治希は槙野ちゃんのそういう努力を感じてたんだろうね」
と、髪を切った気持ちの違いに、自分に嫌悪感を抱いた。
愛は照れ臭くなってうつむいていた。
美奈は続けて
「私ね、春にアメリカに行くの。シカゴ大学に留学するんだ」
「シカゴ?アメリカのシカゴ?」
「うん。そう・・・。向こうで卒業資格を貰って、
向こうに住もうかなって思ってるの。だから、日本での最後の思い出に、
治希にドライブに連れてってってお願いしたの」
「そうだったんだ・・・。それで、治希は何って言ったの?」
「何も言わずに車を出してくれた。私が海が見たいってお願いしてね。
『いつもここに槙野ちゃんが座ってるんだ』って思うと、
少し申し訳ない気持ちになったけどね。ゴメンね」
「どうして海に行ったの?」
「そうだなぁ・・・。その時は何も考えてなかったのかなぁ。
ただ、誰にも邪魔されずに、治希とゆっくり話せる環境に
いたかったのかもしれない。砂浜に腰掛けて話し始めたんだけど・・・。
治希にフラレちゃった」
「どういうこと?」
予想していなかった「フラれちゃった」という単語に、
愛は少し混乱した。
美奈は少しため息混じりに話を続けた。
「私ね、治希に『やっぱり好き。あの日に戻ってまたやり直したい』って
言ったの・・・」
そう、愛が元々予想していた言葉がここで出て来た。
美奈は続けて
「・・・自分ではかなりイイ雰囲気になったと思ったんだけどなぁ・・・。
でも、治希から『無理だ』ってキッパリ断られたんだ。
『今日は友人として、日本でのいい思い出になってくれたらいい
と思って、ここに来ただけだ。オレは愛が好きだ。
だから美奈と二人だけで会うのはこれが最後だ』
って、はっきり言われちゃった」
愛は不安だらけのまま話しの着地点を想像していたが、
ホッとして美奈に尋ねた。
「それじゃ、治希とは何もなかったの?」
「うん・・・。本当はね、キスしてくれるかなって・・・。
ちょっと期待してたんだけどなぁ。実は、治希とは
一度もキスしたこと無かったんだよね、へへっ」
「え~っ!ホントに?信じられないよ・・・」
愛は全く信じられず、この言葉に最も驚いた。
「ホントだよ。中学の時はお互い受験勉強で大変だったし、
高校に入ってからも部活とかであまり会えなかったからね。
高校でもデートらしいデートはしてなかったなぁ。
治希は高校で初めてバスケ始めたから、みんなに追い付くのに必死だった。
練習が終わっても、一人でシュート練習やってたもん。
デートといえば、時々その練習に付き合ってたくらいかな。
日曜日もお互い練習試合とかあったしね」
愛は初めて美奈をリードした部分があったと、
優越感にも似た感覚に襲われた。
「治希らしいね。真面目というか、真っ直ぐというか。
でもいいな、美奈ちゃん。治希とそういう時間を共有出来てたなんて羨ましい。
なんか、高校の青春ってそんな感じじゃない?」
「何言ってんの?今の治希の彼女は槙野ちゃんでしょ。
私よりたくさんの時間を共有してるじゃない」
「そうだけど・・・私、自信がなくって。
どうしても美奈ちゃんと比較されてる気がして・・・」
愛はそう口にした途端に、先ほど覚えた優越感のような感覚が
あっという間に消失してしまった。
「(そうだった・・・相手は美奈ちゃんだった・・・)」
そんな愛の心の内を見透かしているかのようだった。
「槙野ちゃん。もう少し、治希を信じてあげたら?
治希は私の想像以上に槙野ちゃんのことが好きだよ、きっと」
「ありがとう。・・・わかった。これからは治希のこと信じてみる。
今日は話せてよかった。美奈ちゃんに勇気をもらえた気がする」
「うん。私も。ふたりの間には割って入れないってわかったよ。
あ~ぁ、治希と一回くらいキスしたかったぁ。
ねぇ、治希のキスってどんな感じなの?」
「えぇ~、言えないよそんなこと」
「いいじゃん、教えてよ。どうせ、シカゴに行っちゃうんだからさぁ」
「イヤだよ~」
愛は美奈との時間を治希に大略話した。
「きっと、治希は槙野ちゃんのそういう努力を感じてたんだろうね」
と、髪を切った気持ちの違いに、自分に嫌悪感を抱いた。
愛は照れ臭くなってうつむいていた。
美奈は続けて
「私ね、春にアメリカに行くの。シカゴ大学に留学するんだ」
「シカゴ?アメリカのシカゴ?」
「うん。そう・・・。向こうで卒業資格を貰って、
向こうに住もうかなって思ってるの。だから、日本での最後の思い出に、
治希にドライブに連れてってってお願いしたの」
「そうだったんだ・・・。それで、治希は何って言ったの?」
「何も言わずに車を出してくれた。私が海が見たいってお願いしてね。
『いつもここに槙野ちゃんが座ってるんだ』って思うと、
少し申し訳ない気持ちになったけどね。ゴメンね」
「どうして海に行ったの?」
「そうだなぁ・・・。その時は何も考えてなかったのかなぁ。
ただ、誰にも邪魔されずに、治希とゆっくり話せる環境に
いたかったのかもしれない。砂浜に腰掛けて話し始めたんだけど・・・。
治希にフラレちゃった」
「どういうこと?」
予想していなかった「フラれちゃった」という単語に、
愛は少し混乱した。
美奈は少しため息混じりに話を続けた。
「私ね、治希に『やっぱり好き。あの日に戻ってまたやり直したい』って
言ったの・・・」
そう、愛が元々予想していた言葉がここで出て来た。
美奈は続けて
「・・・自分ではかなりイイ雰囲気になったと思ったんだけどなぁ・・・。
でも、治希から『無理だ』ってキッパリ断られたんだ。
『今日は友人として、日本でのいい思い出になってくれたらいい
と思って、ここに来ただけだ。オレは愛が好きだ。
だから美奈と二人だけで会うのはこれが最後だ』
って、はっきり言われちゃった」
愛は不安だらけのまま話しの着地点を想像していたが、
ホッとして美奈に尋ねた。
「それじゃ、治希とは何もなかったの?」
「うん・・・。本当はね、キスしてくれるかなって・・・。
ちょっと期待してたんだけどなぁ。実は、治希とは
一度もキスしたこと無かったんだよね、へへっ」
「え~っ!ホントに?信じられないよ・・・」
愛は全く信じられず、この言葉に最も驚いた。
「ホントだよ。中学の時はお互い受験勉強で大変だったし、
高校に入ってからも部活とかであまり会えなかったからね。
高校でもデートらしいデートはしてなかったなぁ。
治希は高校で初めてバスケ始めたから、みんなに追い付くのに必死だった。
練習が終わっても、一人でシュート練習やってたもん。
デートといえば、時々その練習に付き合ってたくらいかな。
日曜日もお互い練習試合とかあったしね」
愛は初めて美奈をリードした部分があったと、
優越感にも似た感覚に襲われた。
「治希らしいね。真面目というか、真っ直ぐというか。
でもいいな、美奈ちゃん。治希とそういう時間を共有出来てたなんて羨ましい。
なんか、高校の青春ってそんな感じじゃない?」
「何言ってんの?今の治希の彼女は槙野ちゃんでしょ。
私よりたくさんの時間を共有してるじゃない」
「そうだけど・・・私、自信がなくって。
どうしても美奈ちゃんと比較されてる気がして・・・」
愛はそう口にした途端に、先ほど覚えた優越感のような感覚が
あっという間に消失してしまった。
「(そうだった・・・相手は美奈ちゃんだった・・・)」
そんな愛の心の内を見透かしているかのようだった。
「槙野ちゃん。もう少し、治希を信じてあげたら?
治希は私の想像以上に槙野ちゃんのことが好きだよ、きっと」
「ありがとう。・・・わかった。これからは治希のこと信じてみる。
今日は話せてよかった。美奈ちゃんに勇気をもらえた気がする」
「うん。私も。ふたりの間には割って入れないってわかったよ。
あ~ぁ、治希と一回くらいキスしたかったぁ。
ねぇ、治希のキスってどんな感じなの?」
「えぇ~、言えないよそんなこと」
「いいじゃん、教えてよ。どうせ、シカゴに行っちゃうんだからさぁ」
「イヤだよ~」
愛は美奈との時間を治希に大略話した。
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