死神見習いと過ごす最後の一年

小泉洸

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学校へ行こう

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「なんでお前、うちの高校の制服着ているんだよ?」

 朝食の時に制服姿で現れた少女に俺は尋ねる。

「ずうっとサポートするって言ったじゃないですか。学校内でもサポートです」

少女は答えた。そしてトーストにジャムを付けながら、バターは無いのかと俺に尋ねた。

俺は答えた。

「バターは、切らしているんだよ」

少女は少し怒った顔をして、言った。

「そんないい加減な生活だと、ダンゴムシになっちゃいますよ」

俺は呆れて言い返した。

「お前の機嫌を損なうとダンゴムシかよ?」

少女は澄まし顔で答えた。

「ちゃんとした生活があって、初めて良い人生になるのですよ?!」


 「ええと、こちらが本日からこの学校に転校してきた天本紗理奈さんです。皆さん仲良くして上げてください。席は、江藤君の横で」

担任の教師が指示をした。

俺は隣に座ったサリーに小声で尋ねた。

「おい、どういう魔法を使うとこういうことになるんだよ」

少女は悪戯っぽく笑いながら小声で答えた。

「これでも私は神様の端くれですからね。このくらいは朝飯前です」

そして真顔になって言った。

「それよりちゃんと勉強です。でないとダンゴムシです!」


 「紗理奈って呼んでいい?」

休み時間に、人懐っこい高橋さんが早速サリーに絡んできた。

「もちろん紗理奈でいいけど、ずっとサリーってあだ名だったからサリーでいいよぅ」

「わかった、サリーね」

高橋さんは笑顔で答えて、後で学校の中を案内して上げるよ、
とサリーに言った。

何人もの女子がサリーと高橋さんを取り囲んで楽しそうに話し始める。
IDの交換をしている。
おい、なんで死神なのにスマホ持ってラインするんだ?
それに早くもなんだかクラスになじんでるぞ。

 「おい、勇気」

中学の時からの悪友の佐々木が近寄って来て、
俺を小突いて小声で言った。なんだよ。

「お前、あんな可愛い子と隣になれるとは、ラッキーだな」

死神に四六時中監視されるのがラッキーと言えるだろうか。

それに俺は一年後に死ぬんだぞ、実感は全く無いけど。

もちろんそんなことは言えず、俺は肩をすくめるだけだった。
先が思いやられる。


 「放課後は部活ですよね?」

サリーが俺に聞いてきた。ああ、そうだけど?主に帰宅部だけど今日は出ようかな。

「私も行きます!」

「え?お前、陸上やるの??」

少女は自慢げに胸をそらして言った。

「これでも足は速いほうなんですよ」

はあ、まあ神様だからなんでもありだわな。しかたない。

「じゃあ、部室まで案内するよ、今日は見学な。入部するなら届けを出さないと」

少女はニコニコしながら手にした紙をひらひらさせて言った。

「もう入部届書いてきましたぁ!部長に出せば良いんですよね?」

手回しのいいこった。わかった、一緒に部室へ行こう。

「サリー、もう部活始めるの?」

高橋さんがサリーに声を掛ける。少女は快活に答える。

「うん、今日は小手調べ!」

高橋さんが少しまじめな声をして俺に言う。

「江藤君、ちゃんとサポートしてあげなよ」

わかった、わかった。じゃあ行こうか。


 「お前、もしかしたらポンコツじゃないか?」

サーキットトレーニングとインターバル走の後、

ぜえぜえと荒い呼吸をしながら、膝に手をついてへばる少女に俺は小声で言った。

「久しぶりに、地上で、走ったから、しんどい」

少女はなおも目を白黒させながら答えた。

「空気が薄い」

あのな、俺は説教した。高地トレーニングじゃないんだから空気は普通だ、

お前さんがしょぼいだけだ。

「あのね、勇気」

少女が顔を少し上げて小声で言った。なんだ名前を呼び捨てかよ。

「地上の生活に慣れるまで、ちょっと時間が掛かるかも」

はいはい、わかりました、サリーちゃん。


帰り道で少女が言った。

「今日の晩御飯は私の当番ね!」

当番制なのか。助かるけど、なんで?

「ほら、部屋貸してもらってるし、ただじゃ悪いじゃない?」

俺は言った。

「一人飯でも二人飯でも大して作る手間は変わらないから気にしなくていいぞ」

少女はぷるぷると首を横に振って、俺を見上げて言った。

「私が作りたいから作るのよ」

わかった、任せた。


俺はサリーの作った料理を食べながら驚嘆した。これは旨い。

「美味しいよ。サリー、お前、料理上手なんだな」

へへへ、と少女は照れ笑いをしながら、だから任せて安心よ、これでも神様なんだからと答えた。

「でも運動は、ポンコツと」

俺がからかうと、ぷうっと頬を膨らませて少女は言った。

「身体が慣れれば、私凄いんだから。見てらっしゃい」

はいはい、わかりました。それと、ごちそうさまでした。本当に美味しかったよ、ありがとう。

少女はニコニコしながら言った。

「気に入ってもらって良かったぁ。ほら味の好みってあるじゃない?!」

それから、まじめな顔になって、俺に言った。

「片付けの後は勉強ね。今日の復習と明日の予習!」

はあ?今、なんて言った?

「勉強するの。今日の復習と明日の予習」

そして少女は付け加えて言った。

「全力出さないと、次はダンゴムシだよ?!」

なんとなくダンゴムシに失礼な気もしたが、黙って俺は従うことにした。

そのうちこの娘も飽きるだろう。


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