死神見習いと過ごす最後の一年

小泉洸

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「死」と向かい合う

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「最悪、全然意味わかんない。なんの役に立つのこれ?」

なんと早々に音を上げたのは、死神ちゃん、もとい、サリーの方だった。

俺は疑問に思って聞いた。

「お前、神様なんだろ?高校の数学くらいちょろいんじゃないの??」

少女は恨めしそうな顔を俺に向けて答えた。

「神様だって得手不得手というものがあるのよ。私は数学が苦手」

ああ、と少女は机に突っ伏すと頭をかきむしった。

俺は溜息をつきながら、少女に数学を教えることにした。どちらかというと俺は数学は得意だからな。

少女は愚痴る。

「めっちゃ難しい」

俺は言った。

「文句ばっかり言うな」

しばらくして少女は今度は悪態をつき始めた。

「勇気の教え方が悪い」

あのなあ、お前、神様だろうが。悪態とかつくのか?

「教え方とかの問題じゃないぞ、これは定義だから覚えるの」

「あー疲れた」

こら、勉強中にスマホをいじるな。

「でもでもメッセージに答えないと仲間はずれになるかも」

俺は呆れかえって言った。

俺がダンゴムシに転生するのを阻止しに来たんじゃないのか?

それとも俺の勉強の邪魔をしに来たのか?

地上に遊びに来たのか??

少女はこちらを少し睨みながら不承不承に言った。

「勇気が正しい。勉強するよ」

やれやれ。


 怒濤のような一週間が過ぎた。明日は休みだ、あと残り357日か。

夜、一人でベッドの上で落ち着いて考えてみる。

あと一年しないうちに、この世とおさらばか。

無性に腹が立ってきた。

なんで、俺だけこんな若くして死ななきゃならないんだ。

ダンゴムシに転生だと?それを阻止するために早死にするだと?

冗談じゃないな。怒りがこみ上げてくる。

みんなが楽しく過ごす中、俺だけ死ななきゃならないのは不条理だ。

こんなひどい話はない。

 俺は怒りのあまり、ベッドを抜け出し、サリーの眠る妹の部屋へ入って怒鳴った。

「おい、起きろ、サリー。俺は死にたくない。黄泉の国の王様にでもなんでもいいから、そう言ってこい。あとはダンゴムシに転生だろうがなんだろうが、俺は構わん。こんな若くして俺は死にたくない」

ふああい?

気の抜けた声を上げて、少女が目をこすりながら起き上がる。

勇気、もう朝なの?

俺は怒鳴った。

「違う。俺は死にたくないと言ってるんだ」

ああ、そうなの?

少女は寝ぼけ声で答える。

「そうだ、不条理だろ、こんな若くして死ぬのは。だから俺が死ぬのを止めろ」

俺は知らぬ間に涙を流していた。

死にたくない、死にたくない。

 少女は真剣なまなざしでこちらを見て言った。

「一年でお別れなの。だからその間全力で生きて、お願い」

お願いって。こっちがお願いしているんだが。命乞いなんだが。

「私、頑張るから、一生懸命勇気のこと助けるから」

いつの間にか、少女も涙を流しながら俺の手を取って言った。

「運命を変えたいの。だから勇気も一緒に頑張って」

 サリーのベッドに寄りかかったまま、俺は寝てしまったようだ。

散々泣きわめき悪態をつき、疲れてそのまま眠ってしまった。

横にはサリーの寝顔があった。

サリーも泣きはらしたらしくまぶたが腫れぼったい。

手は繋いだままだった。


そっと、手を離して、ずれた蒲団をかけ、サリーの部屋を出る。

みっともなかったな。でも、正直死にたくないな。

当たり前だよな。まだ俺は16歳だぜ?

 俺は静かに自分の部屋に戻って時計を見る。まだ朝の四時か。でも眠れそうにない。

俺は一体、どうしたらいいんだろう。

抜け道はなさそうだし、交渉に神様が応じてくれるとも思えない。

でも、生きながらえる方法は無いのだろうか?


 期末試験前2週間となった。俺は勉強に専念した。

少しでも死について考えないためだ。

集中しろ、畜生め。

死が大きな黒い口を開けてこちらに向かってくる悪夢にうなされながら、

起きている間は、そのことを考えないように勉強のことだけを考えるようにした。

死が恐ろしくなったときにはベッドから起きだして勉強した。

泣き言を言うサリーに数学を教え、逆に英語を教えてもらい、

とにかく死を忘れるべく集中した。

少女は言葉少なだった。
一緒に学校へ行くときも、帰るときも何か考え込んでいる様子だった。

 そして期末試験の結果は、自分史上前代未聞の学年総合3位だった。


佐々木が仰天して俺に言った。

「勇気、お前気でも狂ったか?それともカンニングか??」

死にものぐるいでやっただけだよ、俺はマジレスしてしまった。
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