死神見習いと過ごす最後の一年

小泉洸

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夏休みスタート

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 試験期間が終わり、部活動が再開された。

暑い。

梅雨がまだ明けずじめじめとした暑さの中、準備運動をする。

サリーがちょこちょこと寄ってきて俺に言った。

「勇気、ちょっと見てて!」

 低いポジションから素晴らしいスタートを切り、ぐんぐんと加速して駆けていく少女の姿が目に入る。

ゴール。

凄い!

タイムを測っていた上級生も目を丸くして驚いている。

「県の記録まではいかないけど、インターハイには出られたかも」

凄いね、サリー、肩を叩かれて、少女は照れくさそうにこちらをみやる。

どう、すごいでしょ。

予選会から出られてたらねぇ

と、上級生が残念そうに言った。でも秋の大会が楽しみだね。


 帰り道に、少女は俺を見上げてぽつんと言った。

「勇気が頑張っているから、私も頑張んなくっちゃって」

ちなみにサリーも学年総合5位という好成績だった。数学さえなければトップだったろうが、

その数学も平均点は行ったようだ。

結果を見せてはくれなかったが、ニコニコ顔で礼を言われた。

「勇気のおかげで、数学も人並みだったよ。ありがと!」


 今日も朝から太陽が本気出してるな。

目が覚めてカーテンを開けた途端にギラギラと差し込んできた陽の光に、

思わず手のひらをかざして目を覆いながら俺は思った。

夏休み1日目。

さて、起きようか。


朝食を用意していると、背後からサリーの元気の良い挨拶がした。

「おはよう!いい天気だね!!」

スクランブルエッグを皿によそいながら、挨拶を返す。

おはよう、サリー。

え?なんで制服なんだ?夏休みだぞ。

「女子陸上部は今日から合宿なんだよ。聞いてなかったの?」

知らん。聞いてない。いつまでで、どこ行くんだよ?

「群馬って聞いた。たぶん今日から3泊4日」

おい、ザックリしてるな。泊まるところだけ後で教えといてくれ。

トーストにバターをたっぷり塗って頬張りながらサリーは答える。

「わかった」

ものを食べながら話すんじゃない、行儀悪いぞ。

少女はしかめっ面をして俺に答える。

「なんだか口うるさいお兄ちゃんみたいだね」

やれやれ、死神の兄貴とは光栄だ。

「ところで、集合時間とか大丈夫なのか?」

サリーは、はっと時計を振り返って見て、ガタンと立ち上がり、慌てて玄関に向かった。

「遅刻する!バスが出ちゃうよぅ!!」

サリーは半泣きで靴を履こうとする。俺はサリーに声を掛ける。

「おい、集合場所はどこで、あと何分だ?」

サリーは靴ひもが絡んで大苦戦中。なにやってんだか。

「学校の校門で、あと10分!」

分かった。

俺はピンク色のスーツケースを掴んでドアを開ける。そして自転車のところにサリーを連れて行く。

「後ろに乗れ、自転車なら間に合う」

涙目の少女を乗せて、俺は全速力でペダルを漕ぐ。

サリーは俺に細い腕でかじりつく。もう一方の腕にはピンク色の小さなスーツケース。

 バスがまさに校門を出ようとするところで到着。

開いた窓から上級生がサリーに手を振って早く乗ってと、叫ぶ。

やれやれ、本当にギリギリセーフだ。

ドアが閉じて、ピンク色のスーツケースが見えなくなった。

間に合った、良かった。

遠ざかるバスの後ろ側の窓が開き、サリーが身を乗り出して、全力でこちらに手を振る姿が見えた。
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