17 / 21
地区予選決勝
しおりを挟む
梅雨の晴れ間となった日曜日、地区予選の決勝に俺は駒を進めた。
100m走。
200mと400mリレーは残念ながら予選落ちだったが。
第三レーン。調子は良し。風が少し強い、向かい風だ。
これはタイムは出にくいな。
女子決勝には、サリーも進出が決定していた。
100mだけエントリーしていて、男子100m決勝の直前だった。
華奢なユニフォーム姿に鉢巻きが可愛らしい。
俺はサリーに近づき一声掛けた。表情が硬いぞ、大丈夫か?
「緊張するなぁ」
おい、神様が緊張するのか?俺は少女をからかう。
「あたりまえでしょ」
少女は頬をぷうっと膨らませて言う。
「人間の姿なんだから、神様の力を使えるわけでは無いし、実力勝負よ」
そうか、頑張れよ。背中をポンと叩くと、少女は力なく微笑んだ。ホントに緊張してるな。
それじゃあ、応援してやるか。
アナウンスが会場に響く。
「女子100m決勝戦、出場選手は集合場所に集まってください」
ウィンドブレーカーを着た各高校の選手が集まっていく。
フィールドではやり投げの決勝が始まっている。ときおり歓声が起こる。
サリーの小さな背中が見える。ウィンドブレーカーを脱いでストレッチを始めている。
次々に選手の名前が呼ばれていく。
「第三レーン、天本紗理奈選手。南大宮高校2年」
サリーが片手を挙げる。観客席から小さな拍手。
俺は大きく深呼吸してから、大声で少女に声を掛けた。
「サリー、ファイト!」
少女はびくっとしてから、こちらを向いて恥ずかしそうに小さく笑って、
手を振ってからスターティングブロックの方に近づいていった。
「位置について」
一瞬の間。風がやんだ。
「用意」
ピストルの乾いた音とともに、低くサリーが飛び出す。いいスタートだ。
グングン加速する。隣の第2レーンの子も早い。
サリーは1mくらい先攻されている。
第2レーンの子は優勝候補だって言ってたな。
サリー頑張れ。
70m付近で追いつく、そしてゴール。
「一着、天本紗理奈選手、南大宮高校。タイムは」
観客席からどよめき。
やったぞ!サリーがんばったなぁ。
「なお埼玉県高校新記録です!」
再びどよめき。
サリーの笑顔が弾ける。
ぴょんぴょん飛び跳ねて、両手を俺の方にブンブンと振り回して喜んでいる。
上級生が笑顔でサリー近づいていって頭をぽんぽん叩いている。
よし次は俺の番だな。
俺はサリーに向かって小さく手を振った。
「男子100m決勝、出場選手は集合場所に集まってください」
アナウンスが聞こえる。ゆっくりと俺はスターティングブロックの後ろに歩いて行った。
俺は結構頑張ってきた。2着までに入って、県大会出場の権利は取りたい、出場できないとしても。
「位置について」「用意」
ピストルの乾いた音が響く。スタートは少し遅れた、でもほんの少しだ。
加速に入る。身体は軽い。先行する選手に追いつく。行けるか?
三人の選手がほぼ同時にゴールラインになだれこんだ。
「一着、江藤勇気選手、南大宮高校。タイムは」
観客席がどよめく。サリーが涙を流しながら、俺に飛びついてきた。
「勇気、すごい、やったね、やったね、私達がんばったね」
よし、俺も陸上部でも、やれるだけやったな。やり切った。
「サリーもおめでとう、凄いタイムじゃないか」
俺はサリーの華奢な身体を抱きしめる。笑顔で見つめ合う、二人とも泣き笑いだ。
上級生が近づいてきた。
「おい、江藤、やったな、おめでとう!」
俺は答えた。
「ありがとうございます」
上級生は、少し困ったような顔をして俺に言った。
「あのさ、お前らいつまで抱きついてるんだ?まだ試合中だぞ」
あ。
「いちゃついてるのかって誤解されるぞ」
誤解?俺は気がついた。いや、ずっと前から気づいていた。
俺はサリーを愛している、心の底から。
100m走。
200mと400mリレーは残念ながら予選落ちだったが。
第三レーン。調子は良し。風が少し強い、向かい風だ。
これはタイムは出にくいな。
女子決勝には、サリーも進出が決定していた。
100mだけエントリーしていて、男子100m決勝の直前だった。
華奢なユニフォーム姿に鉢巻きが可愛らしい。
俺はサリーに近づき一声掛けた。表情が硬いぞ、大丈夫か?
「緊張するなぁ」
おい、神様が緊張するのか?俺は少女をからかう。
「あたりまえでしょ」
少女は頬をぷうっと膨らませて言う。
「人間の姿なんだから、神様の力を使えるわけでは無いし、実力勝負よ」
そうか、頑張れよ。背中をポンと叩くと、少女は力なく微笑んだ。ホントに緊張してるな。
それじゃあ、応援してやるか。
アナウンスが会場に響く。
「女子100m決勝戦、出場選手は集合場所に集まってください」
ウィンドブレーカーを着た各高校の選手が集まっていく。
フィールドではやり投げの決勝が始まっている。ときおり歓声が起こる。
サリーの小さな背中が見える。ウィンドブレーカーを脱いでストレッチを始めている。
次々に選手の名前が呼ばれていく。
「第三レーン、天本紗理奈選手。南大宮高校2年」
サリーが片手を挙げる。観客席から小さな拍手。
俺は大きく深呼吸してから、大声で少女に声を掛けた。
「サリー、ファイト!」
少女はびくっとしてから、こちらを向いて恥ずかしそうに小さく笑って、
手を振ってからスターティングブロックの方に近づいていった。
「位置について」
一瞬の間。風がやんだ。
「用意」
ピストルの乾いた音とともに、低くサリーが飛び出す。いいスタートだ。
グングン加速する。隣の第2レーンの子も早い。
サリーは1mくらい先攻されている。
第2レーンの子は優勝候補だって言ってたな。
サリー頑張れ。
70m付近で追いつく、そしてゴール。
「一着、天本紗理奈選手、南大宮高校。タイムは」
観客席からどよめき。
やったぞ!サリーがんばったなぁ。
「なお埼玉県高校新記録です!」
再びどよめき。
サリーの笑顔が弾ける。
ぴょんぴょん飛び跳ねて、両手を俺の方にブンブンと振り回して喜んでいる。
上級生が笑顔でサリー近づいていって頭をぽんぽん叩いている。
よし次は俺の番だな。
俺はサリーに向かって小さく手を振った。
「男子100m決勝、出場選手は集合場所に集まってください」
アナウンスが聞こえる。ゆっくりと俺はスターティングブロックの後ろに歩いて行った。
俺は結構頑張ってきた。2着までに入って、県大会出場の権利は取りたい、出場できないとしても。
「位置について」「用意」
ピストルの乾いた音が響く。スタートは少し遅れた、でもほんの少しだ。
加速に入る。身体は軽い。先行する選手に追いつく。行けるか?
三人の選手がほぼ同時にゴールラインになだれこんだ。
「一着、江藤勇気選手、南大宮高校。タイムは」
観客席がどよめく。サリーが涙を流しながら、俺に飛びついてきた。
「勇気、すごい、やったね、やったね、私達がんばったね」
よし、俺も陸上部でも、やれるだけやったな。やり切った。
「サリーもおめでとう、凄いタイムじゃないか」
俺はサリーの華奢な身体を抱きしめる。笑顔で見つめ合う、二人とも泣き笑いだ。
上級生が近づいてきた。
「おい、江藤、やったな、おめでとう!」
俺は答えた。
「ありがとうございます」
上級生は、少し困ったような顔をして俺に言った。
「あのさ、お前らいつまで抱きついてるんだ?まだ試合中だぞ」
あ。
「いちゃついてるのかって誤解されるぞ」
誤解?俺は気がついた。いや、ずっと前から気づいていた。
俺はサリーを愛している、心の底から。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる