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26話 セローナ視点

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 セローナは聖魔力を使うことで、姉シャロンの力の凄さを理解していた。

 無能な姉シャロンがあそこまでの聖魔力を持っていたのなら、少し頑張ればシャロンと同じになれると考えているも、現実は違う。

 どれだけ努力をしてもシャロンと同じになれる気がしない……聖魔力が扱える時点で才能はあるも、幼い頃から怠惰な日々を送ったことで手遅れになっている。

 それを自覚して……現実を受け入れたくなかったセローナは、鉄魔法で短いもナイフの刃を作り、首に刺そうとしていた。

 命を絶った方がマシ――それほどまでに追い詰められているも、ナイフを持った腕が首元で止まる。

 首に近づけようとしても動けず、セローナは恐怖していた。

「ど、どう、して……」

 自分の体なのに、自分の意思で動かせない。
 脱走しないようにと着けられた首輪は……生きることから逃げることも封じることができていた。

 歯を軋ませながら、セローナは叫ぶ。

「このっ……お姉様が城から出たから! 首輪を着ける命令に反対できなかったのよ!!」

 実際は脅しに屈した形になるも、いつも通り姉に対して逆恨みをするしかない。

 この日常からは逃れられないと考えて、このまま奴隷のような日々を送ることとなる。

 セローナは泣き叫びながら絶望していると……セローナしか居ないはずの自室で、声が響く。

「自傷すら許されないとは……可哀想に」

「だ、誰ですか!?」

 同情する声を耳にして、セローナは慌てた様子で声の方を見る。

 そこに居たのは背が高く、長い黒髪が目立つ美青年で……長い前髪が目元まで伸びていた。

 いきなり部屋に現れた謎の青年は、セローナに一礼して告げる。

「僕はカーラ。聖女様なら聞いたことがあると思いますが、魔将衆の1人です……貴方を救いに来ました」

 魔将衆――聖女候補の時に学んだ、幾つもの国を消し飛ばした凶悪な集団。

 それが国を守る聖女の元に現れたことに、セローナは恐怖するしかなかった。
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