悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓

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2章

43話

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 二学期がはじまった翌日――放課後になって、私は後悔するしかない。
 私はレックス殿下、ロイ、ルート、カレンと集まって話をしていた。

「はじまって早々に、私はやらかしてしまいました……」

「ラギル君の魔法が凄かったけど、リリアンさんがもっと凄い魔法を使うとは思わなかったよ」

 ロイが楽しそうに言うけど、今まで魔力を抑えていたからでしょう。
 それでもグリムラ魔法学園でトップの成績だけど、更に目立ってしまった。
 新入生ラギルの魔法の腕はとてつもなく、夏休みに強くなったカレンよりも上だ。
 体内に宿す魔力の量は私より多く、魔法の技術は私の方が上だけど……同年代でここまで魔力を持つ人は、はじめてだった。

「リリアンの魔法の凄さは皆理解しているはず、そこまで気にすることはないだろう」

 レックス殿下が励ましてくれる。
 確かに一学期の中間試験で魔獣を対処した時、学園の人達は察していそうだ。
 成績がトップだから、全力を出す必要がないとグリムラ魔法学園の先生や生徒は考えていてもおかしくない。
 今回はラギルの魔法が凄すぎたから、それより上だと証明しただけだと思いそう。

「レックス殿下の言うとおりです。ラギル様が凄く、それ以上にリリアン様が負けず嫌いで凄かっただけです」
 
 カレンも励ましてくれて、私は頷く。
 負けず嫌いと言われてしまったけど、確かに魔法に関して誰にも負けたくないと思ってしまうようだ。

「それもそうですね……皆様、ありがとうございます」

 ラギルはゲームには登場していない人……それなのに、とてつもない存在感を出していた。
 この魔法学園が、例外を用いるほどの魔力と魔法知識を宿した中途入学生のラギル。
 ゲームと違う出来事に警戒しつつも――つい私は、ラギルを上回る魔法を繰り出してしまう。
 私の全力を越えているかもしれないと思うと、つい試したくなってしまった。

 結果として私の方がラギルより魔法の腕はよかったけど……やらかしてしまったと、すぐ後悔していた。
 そして――今日とてつもなく活躍していた新入生ラギルが、私達の元にやって来る。

「ラギルよ。何の用だ?」

 レックス殿下が警戒している様子なのは、今日ラギルは結構な頻度で私を眺めていたからでしょう。
 敵意をむき出しにしながら尋ねると、ラギルは平然とした様子で私を眺める。

「リリアン様の素晴らしい魔法に、ぼくは感動するしかありませんでした」

「そ、そうですか?」

「はい。ぼくは魔力が高く、魔法の腕がよすぎて化物扱いされていましたので……ぼくを遙かに上回るリリアン様に会えて感動しています!」

 今、暗に私は化物扱いされたのではないだろうか?

「リリアンではなく、リリアンの魔法に感動したということだな。まあいいだろう」

 私を褒めたことでレックス殿下が嫉妬しているけど、魔法という点が重要と知り納得しているようだ。
 ラギルは膨大な才能を見せて、レックス殿下を動揺させた。
 この国の王子に敵意を向けられているけど、ラギルは気にせず胸に手を当てて語る。

「人々が争わずに競い合える環境……ぼくはグリムラ魔法学園に入ることを、夢見ていました」

 ラギルは純粋に魔法学校に興味があり、魔法学園に夢中となっている美少年にしか見えない。
 話を聞いていると――扉が開き、一組の生徒ではない人が入ってきた。

 金髪の短い髪、気弱そうに見えるけど背が高く、穏やかな表情を浮かべる少年だ。
 その少年に気付いたのか、ラギルは満面の笑顔を浮かべて近づく。

「紹介致します。ぼくを推薦してくださったエドガー・アミスト様です」

 ラギルの紹介を受けたエドガーが、私達に優美な一礼をする。

「お久しぶりです……本日はラギルが気になり、挨拶に来ました」

 そう言われたけど、エドガーは初対面のはず。
 まったく覚えてないけど、パーティ会場で会ったのだろうか?
 ロイは頷き、レックス殿下が困惑している辺り……多分レックス殿下も覚えていなさそう。

「平民のラギルをスカウトして新入生として入れたのは、俺達と関わりたかったからか?」

 レックス殿下がストレートに聞くけど、理由として思いつくのはそれぐらいだ。
 私達も聞いておきたかったことだから眺めていると、エドガーは首を左右に振るう。

「その下心も確かにありますけど……ラギルの魔法に惹かれたのは本心です」

「ぼくは、エドガー様を心から尊敬しております」

 魔法学園に推薦して望みを叶えることで、優秀な魔法士となる平民を従える。
 エドガーはレックス殿下や公爵令嬢の私、公爵令息のロイと関わりたかったけど、それが一番の理由なのでしょう。
 同じ転生者のカレンを眺めると、私に対して首を軽く左右に振るう。
 エドガーもゲームでは一切会ったことのない人だと伝えてくれて、何がなんだかわかっていない。

「エドガー君はダドリック君が抜けて、二組でトップの成績だったよね」

 私とレックス殿下がエドガーを知らないと察して、ロイが説明してくれた。
 合同授業で二組生徒の魔法は見たけど、覚えていないからあまり凄くない気がする。

「ロイ様に覚えてくださり光栄です……それでも二組なので、一組だと上位に入れる程度でしょう」

 そう言ってルートが動揺したように見えたけど、ルートは真ん中ぐらいだったわね。
 夏休みを経て強くなったのはわかるけど、一学期の成績はエドガーに負けていたのかもしれない。
 とにかく私は、エドガーから新入生のラギルについて尋ねる。

「あの、エドガー様はラギルとどこで出会い、推薦しようと考えたのでしょうか?」

 ラギルは平民だし、カレンと同じように呼び捨てにした方がよさそうだ。
 私が尋ねると、エドガーは嬉しそうに返答してくれる。

「夏休みがはじまって間もなく……冒険者だったラギルと関わる機会がありまして、彼の魔法に私は惹かれました」

「なっ……元冒険者か!?」

「平民ですし冒険者として生活するのは、おかしくないと思います」

 レックス殿下が驚き、ルートが呟く。
 
「ルート君の言う通りだけど、レックス君としては元冒険者なのが気になるんだよね」

 レックス殿下の反応を楽しんでいるのか、ロイが嬉しそうだ。
 私の夢が冒険者だから、ラギルに興味を持たれることを恐れている。
 それを理由にラギルに関わるべきかと思ったけど、レックス殿下が不安になりそうなら止めておきたい。

「私も卒業したら冒険者になるかもしれませんし、興味があります」

「……そうですか。その話は明日以降にでもしてください」

 カレンが興味があると言ったのは、私の不安を察してくれたからなのかもしれない。
 エドガーは平民のカレンには興味がないようで、返答してから私達に一礼する。

「私達はこれで失礼致します。皆様、ラギルのことをどうかよろしくお願い致します」

「あ、ああ……わかった」

「これから、どうかよろしくお願い致します」 

 ラギルも私達に頭を下げて、二人が教室を出て行く。
 エドガーとしては、私やレックス殿下やロイに顔を覚えてもらうだけで十分だと思っていそう。
 とにかく私は、同じ転生者のカレンと二人きりになって――今日の出来事について話をしておきたかった。
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