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2章

44話

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 二学期の授業が終わってすぐ、私は女子寮へ向かっていた。
 平民でも成績が優秀だから、カレンは相部屋ではなく個人で部屋を持つことができている。
 そのお陰で……私は同じ転生者であるカレンと、ゲームの知識を交えて会話をすることができていた。
 
 カレンは私より遙かにゲームについて詳しいから、とても頼りになる。
 部屋に入ると、カレンが真剣な表情で話を始めた。

「来たわね……まさか二学期の初日から、ゲームと全然違うことになるなんて考えないわよ」

 カレンはピンクの短い髪をした可愛い美少女だけど、本来の性格はまあまあ強気だ。
 私が転生者だと話した時は怒られたこともあるけど、今までのやらかしが凄かったから仕方ない。

 今までゲームの主役らしく振舞っていたカレンは、転生して日が浅いからか私と二人の時は素を出している。
 私は七歳の頃から転生していることもあって普段通りのまま、昨日と今日の出来事を話そうとしていた。

「ラギルとエドガーを私は知りません。カレンは何も知らないのですか?」

 ゲームの重要な部分しか覚えていない私と違い、カレンはファンブックを買うほどこのゲームに詳しい。
 頼りきりになってしまうけど、カレンとしてはゲームと違うこの状況が好きみたいだ。
 いつものように頼ると、カレンは首を左右に振るう。

「知らないわ。それでも……平民のラギルをエドガーが推薦して中途入学生として入れたのは、一組と関わらせたかったからとしか思えないわね」

 レックス殿下も言っていたけど、カレンも確信を持っている様子だ。
 そして、呆れた目で私を眺める。

「むしろリリアンが何も知らないのが気になるわよ。今まで、パーティ会場とかでエドガーの顔を見たこととかないの?」

「うっ……あまり、覚えていません」

 ロイが覚えていたのに、私とレックス殿下が覚えていなさそうだったからね。
 レックス殿下は私のことを溺愛しているからか、友達以外の顔をあまり覚えていない。
 いいえ、私に好意を持っている異性のことは覚えているみたいだ。

 私の発言を聞いて、カレンが納得した様子で話す。

「そっか。伯爵家って言ってたし、今日みたいに理由がないと関わらないだろうから仕方ないわね」

 実際は合同授業で顔を見ている気がするけど、エドガーは二組の生徒だ。
 魔法もそこまで凄くないから、私達が覚えていないのも無理はない。

「そうですね」

「平民のあたしがいても今まで一組は問題を起こしていない。二組に入れると問題が起こるかもしれないことを考慮して、学園側は平民のラギルをあたしと同じ一組に入れた気がするわ」

 ゲームだと主役カレンの身に起こるトラブルは、全て平民だから仕方ないと詳しく調査されなかった。
 この世界では主に私が狙われて、それでも対処に成功しているから……平民がクラスにいても問題なく安全だから、平民ラギルも一組に入れたのかもしれない。

「そのラギルですが、何かあると思いますか?」

「そうね……普通に魔力が優秀な平民。もしくはロウデス教絡みね」

 カレンの返答に、私が驚く。

「ロウデス教絡みですか?」

「グリムラ魔法学園は警備が厳重だから、内部に侵入させた方が工作活動しやすそうだもの」

「なるほど……」

 納得している中、カレンが更に気になることを話す。

「あともう一つ。これは一番ないと思うけど、もしかしたら……ダドリックの代わりかもしれない」

「えっ?」

「レックス殿下がラギルに対抗心を燃やしているから……そう推測しただけよ」

 ダドリック――ゲームでの攻略キャラの一人で、一学期にロウデス教に取り込まれた人だ。
 レックス殿下のお陰で対処することに成功したけど、あの暴走はゲームでは一切なかった出来事でもある。

 二学期にダドリックが存在していないのは、ゲーム的にあり得ない。
 それをカバーするために……成績が優秀で二組と関わるだろうラギルが、新入生として入ってきた。
 カレン自身一番ないと言っているしただ推測の一つだと思うけど、警戒はしておこう。

「ラギルは二組主席のエドガーを慕っているけど、私達のグループに入ろうとはしていない。それでも警戒はしておくべきね」

 カレンも同じ気持ちのようで、私は頷く。
 平民で無礼だと思われないようにか、ラギルは自分から私達のグループに入る気はなさそうだ。
 声をかけてきたのは、単純に私の魔法に興味があったからだと思う。

 今の時点で、私とカレンは警戒しすぎなだけかもしれない。
 それでも、ゲームとは違う出来事が発生したから……気をつけるべきだ。
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