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2章

82話

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 体内に侵入した邪神の魂が私に干渉してくるけど、私の魔力なら抵抗できる。
 どうやらロウデスの目的は私自身ではなく、私の闇魔法に対する適性のようだ。

『これは――私のこの力だけが、目当てだったの!?』

 思わず声に出してしまうけど、喋ることができていないと自覚する。
 夢の世界にいるような、奇妙な感覚だった。
 頭の中で思わず叫ぶけど、私の体内に宿った邪神は返答してこない。
 それでも――私も邪神に干渉したことで、この行動の意味を知った。

 邪神は私が持つ闇魔法の適性を利用することで復活の準備をしたようで、邪心は意志で追い出すと消えていく。
 その後は邪神教が用意した依代の女性の元へ向かい、その女性を生贄にして復活する。
 グリムラ魔法学園の魔力領域を経由して――魂だけとなっている邪神ロウデスだけど、復活できるこの時だけは肉体なしで魔力領域内を移動できるようだ。
 復活した後に魔法で倒せば邪神の魂を消せるようだけど、それがわかるのは邪神に干渉したからだと推測できる。
 そこまで考えた私は意識が戻ろうとしているけど――その一瞬の間に、さっきの出来事を思い返す。

 私はシーマの自爆に意識が向いてしまい、不意打ちに気付けなかった。
 一瞬で迫ったラギルが触れ、私に魔力……邪神の魂を流し込む。
 どうやら私を洗脳するとかではなく、私の力の一部が欲しくて干渉したようだ。
 邪神を経由してラギル経由で邪神の魂と魔力が同調したことで――ロウデス教の計画を全て理解していた。

   ◇◆◇

 ――目が覚めると、皆の姿があった。
 レックス殿下が私を抱きしめ、カレンとロイが杖を呻いているラギルに向けている。
 私は現状を理解できていない皆に話したいけど……時間がない。
 とにかく私は、ラギルに尋ねる。

「ラギル。貴方は知らない間に、邪神を体内に宿していたのですね」

 ロイは邪神を体内に封印していたと言ったけど、実際は少し違う。
 封印を解くことはできたけど魂だけで、ロウデス教はそれをラギルの体内に入れることに成功した。
 復活していない状態だけど意思に干渉することはできて、復活する絶好のタイミングの今日は、完全に操ることを可能としていたようだ。

「そのようです。私もいつ体内に宿したのか、まったく記憶にありません……」

 邪神に魔力を全て吸収されたラギルは戦力にならないけど、話は聞いておきたい。
 意識を朦朧としながら、ラギルが頷いて応えてくれる。

「……偶然にしては、魔法学園に入れて運がよすぎるとは思っていました」

 ラギルの体内に入った邪神は、時々ラギルの意識を乗っ取っていたようだ。
 私達に悟られないよう誘導する程度だったみたいで、ほどんとラギルの意思による行動と知ることはできている。
 冒険者の頃に……偶然魔法学園のエドガーを助けて仲良くなり、グリムラ魔法学園に推薦された。
 恐らくロウデス教が根回しをしていて、体内に宿した邪神ロウデスが学園に潜入するためだ。

 ルートの時に協力しなかったのは、全てこの時の為の準備だった。
 ラギルの記憶と邪神の目的を理解するけど……ラギルは、私の記憶に干渉しようとはしない。

「申し訳ありません……ぼくが、世界を滅ぼすかもしれない……」

 命を絶ちたいと本心から考えているけど、ラギルはただ利用されていただけ。
 邪神について何も知らないからこそ、ロウデス教と関わっていないか調べても無意味だった。 

「悪いのは邪神です。私が、必ず止めてみせます!」

「リリアン様。ありがとうございます」

 ラギルのエドガーに対する忠誠心は本物で、ただの魔法学園に憧れていた冒険者の平民だった。
 魔力と魔法が優れていたから、私と関わらせるために利用されただけで……ラギルは何も悪くない。

「何が起きたのか話す前に――今から飛行魔法を使い、邪神の元へ向かいます」

 そう言って、私はレックス殿下、ロイ、カレンを飛行魔法で宙に浮かし、魔法披露会の会場へ向かう。

「ルート様、この場はお願いします」

 グリムラ魔法学園の先生が来るまで、無力になっているダドリックとラギルが危険だ。
 誰か守る人が必要で、ルートが一番だと考えていた。

「ルートよ。頼んだぞ」

「かしこまりました。この場はお任せください」

 そして――私達四人は、飛行魔法で邪神が復活した魔法を披露する会場のコロシアムへ向かう。
 復活した邪神ロウデスは、今この時に倒さなければならない。

 私と同調したことで――ロウデスは、私やカレンの正体を知ってしまった。
 もし逃がせば私やカレンの知識を使い、とんでもないことを仕出かしてもおかしくはない。
 逃がしても終わりだと理解しているから、今日ここで決着をつける必要があった。
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