悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓

文字の大きさ
18 / 109
コミカライズ記念番外編

ホーリオ魔法学園の話

しおりを挟む
 ホーリオ魔法学園に入学して1年が経ち、私達は2年生になった。

 ゲームの舞台はこの後に入学するグリムラ魔法学園で、ホーリオ魔法学園のことはゲームでまったく説明されていない。
 現状は平和な日常を送ることができているけど、私はレックス殿下の発言を聞き動揺することとなる。

「2年生になってから、先生達はリリアンを気にしていそうだ」
「そうでしょうか?」

 2年生になって1週間が経った昼休みに、レックス殿下が教室で私達に話す。
 私の他にはロイとルートが話を聞いているけど、ロイは呆れている。

「リリアンさんが気にならないのなら、レックス君の勘違いじゃないかな」
「いえ。2年生になったリリアン様を、先生達が頻繁に眺めていました」
「ルート君がそう言うのなら先生達が気にしていそうだけど……リリアンさんは成績が他の生徒より優秀過ぎるから、気になるとかかな?」
「おい。俺の発言は信じず、ルートが賛同すれば信じるのか」

 ロイの発言に、レックス殿下は不満そうだ。
 私としても、気にしすぎなんじゃないかと思ってしまった。
 それほどまでにいつも傍にいるからだけど、護衛するため普段は私達の近くにいるルートも先生達の行動が気になったらしい。

「リリアンさんは、なにか心当たりはないの?」
「なにもありません。入学した時は目立ってしまいましたけど、最近は普通に過ごせています」
「何回か騒ぎになったけど、リリアンさんの魔法が凄かっただけだもんね」
「うっっ……」
「最近だと、複数の属性魔法を使う授業は目立っていました」

 ロイとルートの発言を聞き、私は1年生最後の授業で使った魔法を思い返す。
 複数の属性を同時に扱うことはかなり難しくて、先生は生徒達に鉄魔法で作った棒に火魔法を纏わせて見せた。

 私も似た魔法を使おうと考えて、魔法で鉄の板を作り火魔法の炎で変形させて文字を刻む。
 その魔法を見た先生が物凄く驚いていたことは覚えているけど、あれが原因なのかもしれない。

「奇妙なマークが刻まれた鉄の板を作っていたけど、あれのせいかな?」
「魔法による鉄の板にすると地味でしたから適当に文字を入れただけなので、何も関係ないと思います」

 転生前に考えていた、私にしか読めない文字を鉄魔法で作った板に火魔法を同時に使い描いただけ。
 その行動は先生からすれば異常だったのかもしれないけど、1ヵ月ぐらい前の出来事だ。
 気にしている理由について推測していると、レックス殿下が言う。

「リリアンは魅力的だから、好きになってしまった先生がいるのかもしれない」
「それはないでしょう」

 レックス殿下としては、先生が私を好きになっているのではないかと警戒しているようだ。
 考え過ぎなのはいつものことだけど、ルートが頷いて賛同する。

「リリアン様は魅了的ですし、ありえますね」
「いや、一応リリアンさんはレックス君の、王子の婚約者だからね」
「一応はいらないだろ」

 発言を聞きながら、私は今後のことを思案する。
 先生達が気にしている理由はわからないけど、私としては平和に過ごしたい。

「……私が何かしたのかもしれませんし、放課後に聞いてみようと思います」

 話していると昼休みが終わり、午後の授業になる。
 放課後までの間、私も先生達を気にしておこう。 

   ◇◆◇

 午後の授業は、広い実習室で行われる魔法を扱う授業だった。
 魔法で壁や床が強化されているようで、生徒の魔法が暴走しても問題ないらしい。
 授業が終わり教室に戻ろうとした時、先生が私に話す。

「リリアン様はここに残ってください。少し話しておきたいことがあります」

 私は先生の元へ向かい、ほとんどの生徒達は教室に戻っていく。
 そして実習室には私とレックス殿下、ロイとルートが残っている。
 先生がなにか言う前に、レックス殿下が尋ねた。

「俺達も、一緒に聞いていいだろうか?」
「はい。構いません」
「先生達は私をよく見ている気がしますけど、それが関係しているのでしょうか?」
「……そうなります」

 私の発言を聞き、先生が緊迫した表情になり驚いてしまう。
 ホーリオ魔法学園はゲームと無関係だから、何も問題ないと考えていた。

 それは推測でしかなくて――もしかしたら、ゲームではこれから、ホーリオ魔法学園で私の身に何か起こるのかもしれない。
 不安になってしまうと、レックス殿下が私の前に出て話す。

「リリアンが魅力的なのはわかるが、俺の婚約者だから諦めて欲しい」
「なにか勘違いをなさっているようですね。リリアン様、授業の時に使った魔法を披露してください」
「わかりました」
 
 先生の発言を聞き、私は普通に風魔法を扱ってみせる。
 完璧に魔力で作った風を操作すると、先生が感激しながら話す。

「素晴らしい……リリアン様は、魔法を使う前に詠唱をしようと思ったことはありませんか?」
「試したことはありますけど、効果がなかったので詠唱はしていません」
「それは自分の魔法が最高の状態で使えていると確信しているからです。それなら、自分だけにしか見えない精霊が見えると思い込んだことはありますか?」
「な、ないですね」

 先生の発言を聞き、私は動揺してしまう。
 レックス殿下やロイとルートはわかっていないようで、先生は詳しく説明した。

「学園に入学した優秀な魔法士は、増長したり意味不明な発言をしたり奇行に走ることが稀にあります」
「注目されたいという欲求による行動ですね。自分が特別な存在だと強く思い込んでしまい、他の生徒達からみれば奇行にしか思えない行動をとってしまうのでしょう」
「リリアン、詳しいな」
「な、なんだかそんな気がしました」

 思わず私が話してしまうと、先生が頷く。

「その通りです! リリアン様は入学した頃と比べて今は冷静ですけど、新入生が入ったことで何かするのではないかと考えてしまいました」
「そ、そうなんですか……」

 賛同しながら、私は内心では焦ってしまう。
 魔法学園に入学したばかりの時は、嬉し過ぎて舞い上がってしまった。
 その後は目立たないようにしようとしたけど、新学年になって再び舞い上がり行動を起こす可能性を先生達は警戒していたようだ。

「あれ程の力を持ちながら冷静なリリアン様は、素晴らしいというしかありません」
「確かに、先生の仰る通りですね」
「先生達はリリアンさんが変な行動を起こしたら1人では止められる気がしないから、皆で気にしてたってことか」
「リリアンは魔法に夢中となればとんでもないことをするが、俺がいるから大丈夫だ!」

 先生が気にしていた理由がわかり、皆が安堵している。
 そんな中で私は、内心焦っていた。

 私がこの学園で、ホーリオ魔法学園に入学してから冷静でいられたのには理由がある。
 転生前の学生の頃に体験済みで、その頃を思い出してしまったからだ。

 あの頃の私は魔法に憧れていたから――そこまで考えて、私は冷静になる。
 転生前のやらかしまで、思い出す必要はなさそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ

ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」 ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。 「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」 何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。 都合のいい女は本日で卒業。 今後は、余暇を楽しむとしましょう。 吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。