婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

黒木 楓

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39話

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 私はイレック様から、今までジャック様が引き起こした出来事を聞いていた。

 お父様から聞いていたことばかりだけど……あれは誇張ではなくて、実際にあったことに驚いてしまう。

「一番酷いのは魔法の実験だ……大地に宿る魔力を一点に集結させればどれだけの威力になるか、ジャックは試そうとしていた」

「平原の地形が変わったとは聞いていますけど……何もない場所なら、問題はなかったのではありませんか?」

「私が必死に止めたからだよ……あの愚弟、最初は魔力が溢れた森で行おうとしていた」

「そ、それは……」

 ジャック様の実験によって今でも平原に底の見えない大穴が空いていて、ローウォン領でも立ち入り禁止になっているらしい。

 今日案内してもらったけど、平原ではなく魔力に溢れた森で実験していたら……考えるだけでも恐ろしい。 

 愚痴を聞き終えると、イレック様は微笑みながら呟く。

「君の反応を見ると、常識がありそうでなによりだ……ジャックの同類だと思うけど、君は冷静な判断ができそうで安心したよ」

「そ、そうですか?」 

「君ならジャックを抑えてくれそうだ。もし君が女性版ジャックだったら、私は過労で倒れていたに違いない。いや、絶対に倒れていた!」

 これって……ジャック様と同じ行動はしないでくれって、暗に圧力をかけているような気がする。

 考え過ぎかなと思っていると、真剣な眼差しで私を見て。

「冷静な判断ができるからこそ、ジャックの暴走を止めて欲しい……いや、最近はパトリシアさんのお陰で暴走していない。本当にありがとう!」

「そ、そうなんですか……」

「そうなんだよ。まさかあの愚弟が婚約者に迷惑がかかると考え、自制するようになるとは……私はね、とてつもなく感動して感謝しているんだよ!」

 イレック様の瞳が、涙で輝いていた。
 この人は、それほどまでにジャック様によって迷惑を被っているのか。

 唖然としていると――ジャック様が部屋に入ってきて。

「……兄上、私の婚約者と何を話していたのですか?」

「ジャックの婚約者なんて大変だろうって話をしていたんだ……部屋に来たのは、お前に話があったんだよ。パトリシアさんも聞いて欲しい」

「わかりました」

 イレック様はさっきまで感情的だったけど、ジャック様の前だと冷静になっている。

 どうやらジャック様にも話があるようで、私も話を聞くことにしていた。
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