婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

63話

　私は屋敷の応接室で急に苦しくなって、意識を失っていた。

　そして目覚めることができて……長い間、眠っていた気がする。

「パトリシア！」

　ベッドで起き上がると、ジャック様が私を抱きしめていた。

「ジャック様……私になにが、起きたのですか？」

　あまりにも唐突に起こった変化に困惑していると、隣に居たお父様が説明してくれる。

「パトリシアは3日も禁魔法の呪いによって眠っていたんだ……ジャック様が即座にポーションを用意して命は助かるが、それでも意識は戻らなかった」

「……えっ？」

　どうやらお父様は何が起きたのかを知っているみたいだけど、禁魔法の呪い？

　困惑していると、お父様の話が続く。

「それからはイレック様が魔法士を呼んできてくれて、一部だが呪いの力を消すことには成功した……まさか、こんなことになるとはね」

　お父様の発言的に、一部だけ力を消して私の意識は戻るようになったけど、呪いを完全に消すことはできていなそうだ。

　そう考えていると、ジャック様がお父様に頭を下げていた。

「ボーレス様……誠に……申しわけありません」

　ジャック様は本当に私を巻き込んだことに負い目を感じているけど、これは私が決めたことだ。

　そう伝えようとすると、お父様が私を眺めて制止してくる。

　私が何を言おうとしたのかを察してくれたようで、お父様がジャック様に呟く。

「僕の方こそ、貴方を危険視していたことを謝ります……パトリシアを助けてくださり、ありがとうございました」

　お父様にお礼を言われたことに、ジャック様が唖然とした表情で顔をあげる。

　糾弾されて当然だと思っていたようだけど、お父様は更に話す。

「パトリシアは「ジャック様の為ならどんな目に合っても構わない」と言っていました……これは娘のパトリシアが決めたこと、ジャック様が謝る必要はありません」

　確かに言ったけど、こうしてお父様経由で伝わってしまうと恥ずかしくなってしまう。

「ボーレス様……ありがとうございます」

「悪いのは全て、パトリシアに呪いをかけた存在だ。見つけ出して呪いを解かないと、パトリシアが消えてしまう……」

　悔しげにしているお父様を眺めながらも、私は理解する。

　この呪いは解けていない……ジャック様の力で意識を取り戻すことはできたけど、後7日もすれば存在を保てず消滅することになる。

　呪いがかかっているからか、そう理解することができて……お父様もジャック様も、かなり焦っている様子だった。