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11話

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 翌日になって、一週間の停学となったカルドは教室にいない。
 試験が迫っているからか、今日はマリザが行動を起こすことはなかった。

 放課後ルニム先生に言われて、私は理事長室へ行くことになっている。
 昨日の模擬戦絡みだと思うけど、話したいことがあるようだ。
 そこに婚約者のハネスも同行することとなり、私達は部屋でレイン理事長と対面する。

 レイン理事長は長い銀髪の美青年で、今年赴任されたばかりの人だ。
 魔法学園で最も強いとされているようで、私達を眺める。

「ここ最近カルド様の様子がおかしかったようですが、強化薬を飲んだこと以外にも理由があります」
「そうなんですか?」
「調査してわかりました……貴方達には、話しておきましょう」

 カルドのこととは別に、何か話したいことがあるらしい。
 元凶はマリザと私達は考えているけど、レイン理事長も同じ考えなのだろうか。

「二年ほど前からこの学園には人の姿をした悪魔が侵入しています。ソニア様は特に気をつけてください」
「それはつまり、レヴァル公爵家が契約した悪魔ということですか」

 急に悪魔と言われて驚くけど、隣にいるハネスは冷静に返答する。
 話の流れから、私もそんな気がしてきた。

 優れた魔法士は、魔界に存在する悪魔と呼ばれる存在を呼び出し契約ができる。
 恐ろしい存在とされて見たことは一度もないけど、魔界の存在と契約することは禁止されているからだ。

 学園に侵入していることは誰も知らないことで、レイン理事長が頷く。

「レヴァル公爵家なら、悪魔と契約してもおかしくありません。マリザ様が入学する前に、学園に潜り込ませた可能性が高そうです……証拠がないので、調べることはできませんけどね」

 二年愛で魔法学学園は様々な問題が発生しているようで、魔力が急激に強くなり増長する者もいるらしい。
 どうやらカルドに起きていた出来事は、魔法学園ではここ二年間で何度も起きていることのようだ。

 現状は調査しているけど、誰が人の姿をした悪魔なのかわかっていない。
 それでも今年から入学しているマリザのために、レヴァル公爵家が契約した悪魔を待機させた可能性は高いようだ。

「私が理事長を代わったというのに見つけることができていません。高位の悪魔なのは間違いありませんが、人に危害を加えることができない条件を契約の際につけているはずです」
「契約者だけに限定すると、親しい者を狙う可能性がありますからね。だからこそ、マリザの手下を強化するやり方をとったのでしょう」
「カルド様の行動を聞き、マリサ様が怪しいと考えています。気をつけてください」

 レイン理事長の発言に、私とハネスは頷く。

 その後は理事長室を後にして、フィリスが待っている馬車の元に向かう。
 話を聞いても冷静だったハネスは、学園に侵入した悪魔について知っていたのかもしれない。
 
 歩きながら、私はハネスに尋ねる。

「悪魔について、ハネス様は知っていましたか?」
「現状ソニアの脅威を想定していくと、ありえると考えていた……悪魔を捕らえレヴァル公爵家が契約していると判明すれば、没落してもおかしくない」

 発覚した時のリスクが大きいけど、マリザのためならそこまでしてもおかしくないらしい。
 私に対してあそこまで敵意を向けているから、これからも諦めることはなさそうだ。
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