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23話

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 私とハネスは教室に似た場所にいるけど、扉や窓がない別空間のようだ。

 これは悪魔の魔法によるもので、私達は魔力で作られた部屋にいる。
 対面しているマリザが、私を眺めて笑い出した。

「ルニムは魔法の準備に時間をかけすぎだけど、間に合ってよかったわ!」
「人に攻撃できないという契約がなければ、もっと楽だったのですがね」
「貴方は危険過ぎるから仕方ないじゃない。後は貴方が私を強化して、マリザとハネス様を倒し操るだけよ!」

 どうやらルニム先生は今まで力を抑えていたようで、それは部屋に入ってから知ることができた。
 膨大な魔力を感じ取れるほどで、マリザの言う通り危険すぎる。
 レヴァル公爵家との契約で制限がかかっているのは間違いなく、これは予想していたことだ。

 逃げ場のない空間で、ハネスがルニムに話しかける。

「今まで先生として学園に潜み、生徒達に力を与えていたようだな」
「マリザ様の手下を強化するためです。素質のない人間がバレてしまっただけで、バレていない優秀な駒を用意することはできました」

 ルニムが優秀な駒と言った人は、この場には誰もいない。
 恐らく相手がハネス王子ということと、心を操る魔法を隠したかったのでしょう。

「発言的に、ルニム先生は俺達と戦えないのだろう? 先生なら生徒を魔法で攻撃することもない。悪魔として侵入できたということか」
「補助はできますから、これからマリザ様が強化して貴方達を倒し、心を操れば全て解決します」
「魔剣を持っていようと悪魔の協力を得た私に勝てるわけないわ! ハネス様ではどうすることもできないもの!!」

 勝利を確信しているマリザに対して、私は鞘から魔剣を抜く。
 実戦ははじめてだけど、それはマリザも同じはず。

 私が行動する前に、マリザが杖から魔法を繰り出す。
 殺意の込められた魔法攻撃で、全力で繰り出されているのがわかる。
 そんな時――ハネスが、私の前に出て。

「癪だが、カルドの模擬戦で知ることができた。俺はソニアを愛している」

 いきなり想いを伝えられて、それ以上にハネスの行動に驚く。
 新調した杖から繰り出された魔法は、マリザがルニム先生の力を得た魔法より上回っていたからだ。

 カルドは模擬戦で本心を叫び、自分自身を鼓舞することで限界以上の力を引き出せている。
 それと同じようにハネスは本心をこの場で口に出すことで、本来の力を取り戻したようだ。
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