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激務の疲れかお風呂で寝てしまった私は、目覚めると異世界の子供になっていた。
目覚めた時には全身がずぶ濡れで、何が起きたのかわかっていない。
「リリカお嬢様!? また水魔法は暴走したのですね!」
目の前にはメイドがいて私の体を拭き、意識を取り戻したことに喜んでいるけど、色々と気になることがある。
起きたら豪華な部屋で傍にメイドがいることも驚いたけど、魔法があって当然のような発言だ。
「……水魔法が暴走? どういうことですか?」
「いつもは「そんなこと知らない」と言い張るお嬢様が尋ねるなんて、しっかりと教える時がきましたか!」
メイドの人は最初こそ心配していたのに、今は私の言動に感激している様子だ。
そこから授業をするように長くわかりやすい説明があり、私はリリカ・リドーラという伯爵令嬢に転生したことを知る。
気になったことを質問すると「5歳とは思えないほど立派です」と喜ばれながら教えてくれたけど、前世は22歳なのだから当然のことだった。
どうやら5歳を過ぎるとこの世界では魔力が宿り、魔法が扱えるらしい。
魔力量を多く宿していると無意識に魔法を扱うようで、そこから得意な属性がわかってくるようだ。
そして素質のある人ほど制御できず事故が起こるようで、私は水魔法の素質があると説明を聞き尋ねる。
「全身が濡れているということは、大量の水を無意識に浴びたということでしょうか?」
「そうですね。雨水を受けた体験を、無意識に魔法で再現したのかもしれません」
尋ねるとメイドの人は魔法を使う人、この世界では魔法士と呼ばれている人だから説明してくれた。
ひとまず納得してもらったけど……体感した私だから、何が起きたのかわかる。
プールの中にいるような体験をしたことから、恐らく水の箱を作りその中に私がいた。
その魔法事故がリリカちゃんの死因となって、そこに私の魂が入ってしまう。
現状からそんなことを推測してしまい、元に戻る方法は何もわかっていない。
「……前の人生は死にそうになったから、今度は激務の日々を送らないようにしましょう」
死にそうになったというより、前のは私は過労の後にお風呂で寝て亡くなってしまった気がするわね。
反省とこれからについて呟いてしまうと、聞こえたのかメイドの人は困惑している。
「はい? お嬢様、それはどういう意味ですか?」
「私は長所の水魔法を鍛えまくって、これから平穏に生きてみせるわ!」
「野望の宣言!? 魔法が暴走する人は膨大な魔力で性格が荒ぶるみたいですけど、ここまでとは……平穏に生きるためには、常識を学ぶべきです」
「それもそうね。これからもよろしくお願いしますわ、オホホホホ!」
「お母様の真似はしなくてよいのではないでしょうか」
貴族令嬢のふりをしてみたけど今の私のお母様は高笑いするのか、ぜひとも見てみたい。
前世の知識から水魔法をイメージしてみると、体から力が抜けたような感覚がある。
奇妙な感覚だけど魔力を使ったと確信できたのは、手の平から浮かび上がったように水球を発生させることができたからだ。
「どうしてお嬢様は水魔法の球を発生させていることができているのでしょうか? それは高位の水魔法士が行うトレーニングと聞いたことがあります」
魔法といえば属性に合ったボールの作成と思ったけど、メイドの話を聞くと球を作って飛ばすのは簡単だけど、空中に留まらせるのは至難の技術らしい。
前世の知識のせいなのかもしれないけど、水風船のイメージで簡単に手で持てる水球が作ると異質になってしまうのか。
「なるほど。これは私と貴方だけの秘密にしてください」
「秘密にしても、お嬢様のお母様であるイリス様はすぐ気付くと思いますけど……わかりました」
お母様が私の水魔法の素質に気付いたとしても、前世の知識がある転生者という発想にはならないはず。
子供の頃だと目立ち過ぎたら誘拐とかされるかもしれないし、成長するまでほどほどに生きることにしよう。
◇◆◇
ほどほどに生きて10年が経過し、15歳になり特技は綺麗な高笑いの私リリカは、1年ぐらい前から婚約者がいる。
今日は屋敷に呼び出されたけど、侯爵家の屋敷だからか私の屋敷より豪華な気がした。
部屋で婚約者のラルフと対面しているけど、黒く短い髪と目つきの悪い男だ。
見た目通りのキツい性格をしていて、婚約者の私は妻となるこれからが嫌になっている。
それでも相手の方が立場が上だから、屋敷に招待してくれたことを喜んでおこう。
「オーッホッホ! ラルフ様、今日はどうしましたか?」
「相変わらずの鳴き声だな。今日はリリカに話しておきたいことがある」
この高笑いは家族には好評なんだけど、婚約者のラルフは私が注目を浴びることが嫌なようだ。
それでもこれから私の家族になる人だから、パーティで高笑いをやめるように言われたらやめている。
私は伯爵家の令嬢でラルフは侯爵家の令息なのだから、従うのが一番いいでしょう。
「話しておきたいことですか?」
「ああ、俺はサーシャのことが好きになった。お前との婚約を破棄する」
従うつもりがいきなり婚約破棄を宣言されたけど、理由がふざけすぎじゃないだろうか。
怪訝そうな顔をしてしまうと、それが気に入らないのかラルフが私を睨む。
「お前は水魔法しか使えないし、婚約破棄されるのは当然のことだ」
「はい? 私が14歳の時に婚約したいと言い出したのは、貴方の両親ですよね?」
「家族は俺が説得した。水魔法しか使えないリリカよりも、優秀で家柄のいいサーシャと婚約するのは当然の判断だ」
「説得できたのって、私が話した特別な水魔法のことをラルフ様が「誰にも見せるな」と命令したからでしょう」
前世の世界では水道から水が出るし、様々な創作で水魔法の強さを知っている。
そのせいか今の私は普通とは違う水魔法を幾つか使えて……1年前の14歳の時に、ラルフと婚約することになる。
あの時は「水魔法が普通より強い令嬢」というだけで、前世の知識を使った水魔法は使っていなかった。
そのことをラルフに伝えたけど「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」と言われてしまう。
その後も何度か言われ続けていたから、私は命じられた通り前世の知識を隠して生きてきた。
侯爵令息の妻になれば、前世の知識による水魔法で活躍するつもりでいた。
相手の方が立場が上だから言うとおりにしてきたけど、婚約を破棄するのなら命令を聞く必要もない。
「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」
今の私は水魔法を鍛え続けて成長しているし、目立ったとしても対処するだけの力がある。
婚約者の命令により前世の知識を使うことはなかったけど、これからは使っていくとしよう。
目覚めた時には全身がずぶ濡れで、何が起きたのかわかっていない。
「リリカお嬢様!? また水魔法は暴走したのですね!」
目の前にはメイドがいて私の体を拭き、意識を取り戻したことに喜んでいるけど、色々と気になることがある。
起きたら豪華な部屋で傍にメイドがいることも驚いたけど、魔法があって当然のような発言だ。
「……水魔法が暴走? どういうことですか?」
「いつもは「そんなこと知らない」と言い張るお嬢様が尋ねるなんて、しっかりと教える時がきましたか!」
メイドの人は最初こそ心配していたのに、今は私の言動に感激している様子だ。
そこから授業をするように長くわかりやすい説明があり、私はリリカ・リドーラという伯爵令嬢に転生したことを知る。
気になったことを質問すると「5歳とは思えないほど立派です」と喜ばれながら教えてくれたけど、前世は22歳なのだから当然のことだった。
どうやら5歳を過ぎるとこの世界では魔力が宿り、魔法が扱えるらしい。
魔力量を多く宿していると無意識に魔法を扱うようで、そこから得意な属性がわかってくるようだ。
そして素質のある人ほど制御できず事故が起こるようで、私は水魔法の素質があると説明を聞き尋ねる。
「全身が濡れているということは、大量の水を無意識に浴びたということでしょうか?」
「そうですね。雨水を受けた体験を、無意識に魔法で再現したのかもしれません」
尋ねるとメイドの人は魔法を使う人、この世界では魔法士と呼ばれている人だから説明してくれた。
ひとまず納得してもらったけど……体感した私だから、何が起きたのかわかる。
プールの中にいるような体験をしたことから、恐らく水の箱を作りその中に私がいた。
その魔法事故がリリカちゃんの死因となって、そこに私の魂が入ってしまう。
現状からそんなことを推測してしまい、元に戻る方法は何もわかっていない。
「……前の人生は死にそうになったから、今度は激務の日々を送らないようにしましょう」
死にそうになったというより、前のは私は過労の後にお風呂で寝て亡くなってしまった気がするわね。
反省とこれからについて呟いてしまうと、聞こえたのかメイドの人は困惑している。
「はい? お嬢様、それはどういう意味ですか?」
「私は長所の水魔法を鍛えまくって、これから平穏に生きてみせるわ!」
「野望の宣言!? 魔法が暴走する人は膨大な魔力で性格が荒ぶるみたいですけど、ここまでとは……平穏に生きるためには、常識を学ぶべきです」
「それもそうね。これからもよろしくお願いしますわ、オホホホホ!」
「お母様の真似はしなくてよいのではないでしょうか」
貴族令嬢のふりをしてみたけど今の私のお母様は高笑いするのか、ぜひとも見てみたい。
前世の知識から水魔法をイメージしてみると、体から力が抜けたような感覚がある。
奇妙な感覚だけど魔力を使ったと確信できたのは、手の平から浮かび上がったように水球を発生させることができたからだ。
「どうしてお嬢様は水魔法の球を発生させていることができているのでしょうか? それは高位の水魔法士が行うトレーニングと聞いたことがあります」
魔法といえば属性に合ったボールの作成と思ったけど、メイドの話を聞くと球を作って飛ばすのは簡単だけど、空中に留まらせるのは至難の技術らしい。
前世の知識のせいなのかもしれないけど、水風船のイメージで簡単に手で持てる水球が作ると異質になってしまうのか。
「なるほど。これは私と貴方だけの秘密にしてください」
「秘密にしても、お嬢様のお母様であるイリス様はすぐ気付くと思いますけど……わかりました」
お母様が私の水魔法の素質に気付いたとしても、前世の知識がある転生者という発想にはならないはず。
子供の頃だと目立ち過ぎたら誘拐とかされるかもしれないし、成長するまでほどほどに生きることにしよう。
◇◆◇
ほどほどに生きて10年が経過し、15歳になり特技は綺麗な高笑いの私リリカは、1年ぐらい前から婚約者がいる。
今日は屋敷に呼び出されたけど、侯爵家の屋敷だからか私の屋敷より豪華な気がした。
部屋で婚約者のラルフと対面しているけど、黒く短い髪と目つきの悪い男だ。
見た目通りのキツい性格をしていて、婚約者の私は妻となるこれからが嫌になっている。
それでも相手の方が立場が上だから、屋敷に招待してくれたことを喜んでおこう。
「オーッホッホ! ラルフ様、今日はどうしましたか?」
「相変わらずの鳴き声だな。今日はリリカに話しておきたいことがある」
この高笑いは家族には好評なんだけど、婚約者のラルフは私が注目を浴びることが嫌なようだ。
それでもこれから私の家族になる人だから、パーティで高笑いをやめるように言われたらやめている。
私は伯爵家の令嬢でラルフは侯爵家の令息なのだから、従うのが一番いいでしょう。
「話しておきたいことですか?」
「ああ、俺はサーシャのことが好きになった。お前との婚約を破棄する」
従うつもりがいきなり婚約破棄を宣言されたけど、理由がふざけすぎじゃないだろうか。
怪訝そうな顔をしてしまうと、それが気に入らないのかラルフが私を睨む。
「お前は水魔法しか使えないし、婚約破棄されるのは当然のことだ」
「はい? 私が14歳の時に婚約したいと言い出したのは、貴方の両親ですよね?」
「家族は俺が説得した。水魔法しか使えないリリカよりも、優秀で家柄のいいサーシャと婚約するのは当然の判断だ」
「説得できたのって、私が話した特別な水魔法のことをラルフ様が「誰にも見せるな」と命令したからでしょう」
前世の世界では水道から水が出るし、様々な創作で水魔法の強さを知っている。
そのせいか今の私は普通とは違う水魔法を幾つか使えて……1年前の14歳の時に、ラルフと婚約することになる。
あの時は「水魔法が普通より強い令嬢」というだけで、前世の知識を使った水魔法は使っていなかった。
そのことをラルフに伝えたけど「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」と言われてしまう。
その後も何度か言われ続けていたから、私は命じられた通り前世の知識を隠して生きてきた。
侯爵令息の妻になれば、前世の知識による水魔法で活躍するつもりでいた。
相手の方が立場が上だから言うとおりにしてきたけど、婚約を破棄するのなら命令を聞く必要もない。
「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」
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婚約者の命令により前世の知識を使うことはなかったけど、これからは使っていくとしよう。
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※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています
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