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15話 王子視点
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兄のドルーダが、元婚約者ミレイユを好きだった。
数年前――ミレイユをその気にさせるために言った嘘が本当だったことに、フルディは驚くしかない。
「フルディの悪事に気付き警戒していたからこそ、私はミレイユの行動を知ることができていた」
「あれは切り捨てられることを恐れての行動、保身だ……兄上を守るためではない」
フルディがドルーダを失墜させる行動がバレた場合、ミレイユは切り捨てられる可能性が高いと考えた上での行動だと理解はしていた。
ミレイユは嫉妬による行動と言っているも、今まで関わっていたフルディが駒にする予定の女性を脅すことで正気に戻している。
その行動は全て――もしバレたらどう足掻いても婚約者のミレイユ自身が破滅するから、それを避けるために邪魔をしていたはず。
そう理解していたからこそ、フルディは女生徒を利用することで噂を流し、婚約者をミレイユから妹ミラーナに変えてもおかしくない状況を作っていた。
結果的にそれが首を絞めることになり……フルディは本心を口にするも、ドルーダは頷いて。
「そうだろうな……だが、その健気さに心を打たれたからこそ、私は今まで待っていた」
「……あんな陰気で地味な女のどこがいいのか、兄上の趣味は理解できません」
吐き捨てるようにフルディが発言したと同時に――側頭部に鈍い痛みが走る。
「ごぁっ……」
どうやらドルーダに側頭部を殴られたようで、フルディが激痛に悶えていると、再び腹部に衝撃が走る。
蹴りによる一撃を受けたフルディは声もあげることができず床に叩きつけられ、激痛に苦しみつつも起き上がり。
「どっ、どういう……つもり、ですか……」
「2回だ」
「はっ、はぁっ……」
「貴様は2回、訂正した後も私のことを「兄上」と呼んだ……無礼な男に処罰を与えただけだ」
今まで暴力を振るわれたことがなかったフルディは、今の自分が惨めだと理解している。
ただ睨むことしかできず……反撃に出られないのは、そんなことをすれば更に酷い目に合うと理解しているからだ。
「これは醜い弟を持った醜い兄の、醜い報復だ……1ヵ月猶予をやろう、それまでに消える準備をしておけ!」
「ぐぅぅっっ……」
屈辱と痛みで涙を流していると、廊下を走る足音が聞こえて――駆けつけたミラーナがフルディの前に立つ。
「フルディ様!? 大丈夫ですか!」
「貴様はこうなってもフルディに依存するか……姉と違い自分の意思がない、哀れな女だ」
ミラーナはフルディとドルーダの間に入るも、威圧されたことで全身を震わせている。
そんな2人を、ドルーダは見下しながら告げる。
「当分の間はマルーア家がフルディを家に置き、フルディとミラーナは学園生活を送り1カ月後に国を出ろ。これは命令だ」
勘当と国外追放を命じたのに、1カ月は学園に通えと命令している。
フルディは、これは弟に対する最後の優しさだと考えながらも、ドルーダに対して憎しみの炎を燃やしていた。
実際は違う――ドルーダの報復はここからが本番だということを、これからフルディは身をもって知ることになっていた。
数年前――ミレイユをその気にさせるために言った嘘が本当だったことに、フルディは驚くしかない。
「フルディの悪事に気付き警戒していたからこそ、私はミレイユの行動を知ることができていた」
「あれは切り捨てられることを恐れての行動、保身だ……兄上を守るためではない」
フルディがドルーダを失墜させる行動がバレた場合、ミレイユは切り捨てられる可能性が高いと考えた上での行動だと理解はしていた。
ミレイユは嫉妬による行動と言っているも、今まで関わっていたフルディが駒にする予定の女性を脅すことで正気に戻している。
その行動は全て――もしバレたらどう足掻いても婚約者のミレイユ自身が破滅するから、それを避けるために邪魔をしていたはず。
そう理解していたからこそ、フルディは女生徒を利用することで噂を流し、婚約者をミレイユから妹ミラーナに変えてもおかしくない状況を作っていた。
結果的にそれが首を絞めることになり……フルディは本心を口にするも、ドルーダは頷いて。
「そうだろうな……だが、その健気さに心を打たれたからこそ、私は今まで待っていた」
「……あんな陰気で地味な女のどこがいいのか、兄上の趣味は理解できません」
吐き捨てるようにフルディが発言したと同時に――側頭部に鈍い痛みが走る。
「ごぁっ……」
どうやらドルーダに側頭部を殴られたようで、フルディが激痛に悶えていると、再び腹部に衝撃が走る。
蹴りによる一撃を受けたフルディは声もあげることができず床に叩きつけられ、激痛に苦しみつつも起き上がり。
「どっ、どういう……つもり、ですか……」
「2回だ」
「はっ、はぁっ……」
「貴様は2回、訂正した後も私のことを「兄上」と呼んだ……無礼な男に処罰を与えただけだ」
今まで暴力を振るわれたことがなかったフルディは、今の自分が惨めだと理解している。
ただ睨むことしかできず……反撃に出られないのは、そんなことをすれば更に酷い目に合うと理解しているからだ。
「これは醜い弟を持った醜い兄の、醜い報復だ……1ヵ月猶予をやろう、それまでに消える準備をしておけ!」
「ぐぅぅっっ……」
屈辱と痛みで涙を流していると、廊下を走る足音が聞こえて――駆けつけたミラーナがフルディの前に立つ。
「フルディ様!? 大丈夫ですか!」
「貴様はこうなってもフルディに依存するか……姉と違い自分の意思がない、哀れな女だ」
ミラーナはフルディとドルーダの間に入るも、威圧されたことで全身を震わせている。
そんな2人を、ドルーダは見下しながら告げる。
「当分の間はマルーア家がフルディを家に置き、フルディとミラーナは学園生活を送り1カ月後に国を出ろ。これは命令だ」
勘当と国外追放を命じたのに、1カ月は学園に通えと命令している。
フルディは、これは弟に対する最後の優しさだと考えながらも、ドルーダに対して憎しみの炎を燃やしていた。
実際は違う――ドルーダの報復はここからが本番だということを、これからフルディは身をもって知ることになっていた。
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