婚約者の王子が危険すぎるから、奪おうと目論んでいた妹に譲ります

黒木 楓

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56話

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 あれから閉店時間になって、お客様は帰っていく。

 裏口の扉にあるベルを鳴らして欲しいとは言っていたから、私とラッセルは居間で待機していると。

「ノーチスの話か……魔道具の注文なら断るが、恐らく違うだろう」

「ここ最近、お客様がやけに魔道具を眺めて、購入せず帰っていくことにありそうね」

 今日ラッセルに言われてようやく気付くことができたけど……大半のお客様は、魔道具を凝視していた。

 今まではそれは質のいい魔道具が欲しいのだから当然だと思っていたけど、何かを探っているような気がする。

 考えすぎかもしれないけど、何か怪しまれることがあって、冒険者達に疑われていると考えた方がよさそう。

「もしかして……記憶操作の魔道具が、アイレス商会に気付かれた?」

 捜索隊が失敗したと知り、アイレス商会の魔道具も失ったと報告を聞けば、怪しむのは当然のような気もする。

 そして冒険者に調査の依頼を出している……可能性はありそうだけど、ラッセルは首を左右に振って。

「その可能性はなさそうかな。アイレス商会が気付いている可能性は高いけど、冒険者を雇っても解らないと思う」

 確かに、魔道具を作る人ならともかく、お客様の大半は冒険者だ。

 それに、店にある魔道具をいくら調べたとしても、記憶操作の魔道具を作ったという証拠は出ないはず。

 そう考えていると裏口のベルが鳴って、ノーチスを居間に案内する。

 私はラッセルの隣に座り、テーブル越しにノーチスと対面して。

「話したいこととは、なんだ?」

「……2人なら、ここ最近客の様子がおかしいのは理解できているだろ?」

 私は、ラッセルに言われるまで理解できていなかった。

「どうだろうな。俺とミレイユは2人で必死に働いているから気付けなかった……何かあったのか?」

 ラッセルが明らかに気遣っていて、逆に辛くなってしまう。

 それよりもノーチスは、ここ最近起きた変化の理由を知っている様子で。

「まあな……ここ最近、異種のモンスターがよく発生しているのは知っているか?」

 それは知っているし、私は何度か関わったことがあるから頷く。

「それが疑われていると? 俺とミレイユが来る前から異種のモンスターは多いと聞くが?」

 ラッセルの言う通りだけど、理由がないとあそこまで魔道具を観察したりしないと思う。

 何か理由がありそうな気がすると、ノーチスが口を開いて。

「ここ最近、異種のモンスターが魔道具を扱う異常事態が起きてな……その魔道具が、ここの、トールズ魔道具店の物としか思えないんだ」

「えっ?」

「……なんだと?」

 魔道具は作る人によって見た目が変わるけど……それより、モンスターが魔道具を使う?

 それは今までにないことで――だからこそ、トールズ魔道具店が疑われているのかもしれない。
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