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第三章:チーズの町、ミルクの風
47、食卓に広がるやさしさの輪(前半)
しおりを挟む夕暮れまでの暑さがやわらぎ、牧場の木陰には涼しい風が吹いていた。
私は奏汰と一緒に、木のテーブルに並べられた手作りの軽食の前に座っていた。
「みんな、お腹すいたでしょう?さあ、どうぞ」
農家の女性・三浦さんがにこやかに差し出してくれたお弁当は、地元の旬の野菜を使った彩り豊かなサラダや、手作りのチーズ入りパン、そして季節のフルーツが並んでいた。
「これはトマトときゅうりのサラダ。オリーブオイルとレモンをかけてさっぱりと仕上げています。パンは地元産の小麦を使って焼いたものよ」
三浦さんが説明してくれる。
私はパンを一口かじった。もちもちしていて、ほんのり甘い。
「おいしい! やさしい味だね」
笑顔で言うと、三浦さんは微笑みながら答えた。
「ありがとう。私たちはいつもこのパンを食べるのはどんな人かなって想像しながら作っているの。作ることは想像力と優しさの積み重ねなんですよ」
奏汰も頷きながら言った。
「なるほど、ただ作るだけじゃなくて、食べる人のことを考えてるんだね」
(このパンやサラダは、ただの食べ物じゃなくて、誰かへの思いやりがこもっているんだ)
そう心の中で感じた。
参加していた他の子どもたちも、和やかに談笑しながら食事を楽しんでいた。
「私のおばあちゃんも昔、こうやって野菜を育てて、家族のためにパンを焼いてたよ」
いぶきが話すと、
隣にいたゆうまが言った。
「うちの地域では、昔は豆腐を使った伝統的なお菓子があったんだ。今度みんなで作ってみたいな」
みんなの話を聞きながら、私は学校で習った郷土料理のことを思い出した。
「そうだ、家庭科の授業で、地元の伝統食について調べたことがあるよ。食べる人の顔を想像しながら、みんなで作るって、昔も今も変わらないんだね」
三浦さんはうなずきながら話した。
「その通り。昔は電気もない中で、手間暇かけて食べ物を作っていた。今もその心は変わらず、味にこだわるのはもちろん、人と人をつなぐ大切な仕事だと思っています」
私はしみじみと思った。
「食べるって、ただお腹を満たすだけじゃないんだね。人の気持ちや文化もつながってるんだ」
奏汰も笑顔で言った。
「これからもっといろんな味を学んで、自分たちもそんなお菓子を作りたいな」
私はノートにこう書き留めた。
〈作る人の想像力と思いやりが、食べる人の笑顔につながる。食べることは人と人を結ぶ魔法なんだ。〉
みんなで食べる時間はあたたかくて、ゆっくりと流れていった。
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